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『脚の血管に動脈硬化が起こったらどうなる?』【#在宅医療研究会 オンライン|9月度開催レポート】

本日は「足の血管に動脈硬化が起こったらどうなるの?」というタイトルで、東京医科歯科大学血管外科教授の工藤敏文先生にご講演いただきます。
 
工藤先生は、1993年に東京医科歯科大学をご卒業された後、一貫して血管外科の分野でお仕事をしてこられています。アメリカのUCLAにも留学しておられ、現在は東京医科歯科大学の心臓血管外科の教授をされています。血管外科のスペシャリストの先生ですので、本日は最新の動向も踏まえて、非常に興味深いお話しをお伺いすることができると思います。
それでは工藤先生よろしくお願いいたします。
 
ただいまご紹介に預かりました。東京医科歯科大学血管外科の工藤です。本日はお話しさせて頂く機会をいただき、ありがとうございます。
 
本日は下肢の動脈硬化をテーマに、前半は基礎編、後半に応用編についてお話しをさせていただきます


1.閉塞性動脈硬化症(基礎編)

最初に導入として、私たちの体の中を巡っている動脈が、体の表面からどこで触れるかについてご説明します。通常、皆さんが脈を取るときは、手首のところで脈を触れるかと思います。これは橈骨動脈です。同様に、下肢にも体の表面から動脈を触れることができる場所が4カ所あります。鼠蹊部、膝窩部、足背部、そして足首(内顆の後ろ側)です。足の甲で触れることができる足背動脈は、皆さんもご自分の足で触れることができるかと思います。もし患者さんから、「下肢の動脈硬化が心配です」と相談を受けたら、この足背動脈を触ると良いかと思います。もししっかりと拍動を触れることができたら、自信を持って患者さんに下肢の動脈硬化はありません、とお伝えしていただいて構いません。

1)閉塞性動脈硬化症について

下肢の動脈に閉塞をきたす病態はいくつかありますが、四肢末端の末梢動脈が狭窄あるいは閉塞したために、循環障害が起こる病態を末梢動脈閉塞症と呼びます。なかでも最も頻度が多いのが、動脈硬化に由来したもので、閉塞性動脈硬化症と呼ばれます。
 
動脈硬化は、糖尿病や脂質異常症、肥満、高血圧など、いわゆる生活習慣病がベースにあることが一般的です。また動脈硬化は、体の一部の血管に起こるわけではなく、全身のあらゆる動脈に同じように起こっています。したがって、下肢の動脈硬化を認める方は、例えば、脳や首、心臓の動脈など、そのほかの全身の血管にも動脈硬化を起こしています。今日は、下肢の動脈硬化についてお話をしますが、これは下肢だけではなく、全身の動脈硬化症の一部分を見ている、と考えていただけると良いかと思います。

2)閉塞性動脈硬化症の疫学・危険因子について

一般の動脈硬化症と危険因子は同じで、高齢の男性、喫煙、糖尿病や高血圧、肥満、また虚血性心疾患や脳血管障害の既往などが、危険因子としてあります。有病率を調べると、圧倒的に60歳以上の高齢男性に多く見られています。
 
下肢の閉塞性動脈硬化症の患者さんの生存率を調べると、動脈硬化のないコントロールの方々と比べて、下肢の動脈硬化の程度が中程度、重度になるに従って、その生存率が悪くなっていることがわかります。例えば5年後の生存率は、重度の動脈硬化の方は50%切っており、非常に深刻な状態であることがわかります。つまり下肢の動脈硬化は、全身の動脈硬化の一部ですので、下肢だけが悪いわけではなく、下肢の状態が悪いほど、全身の状態も良くないと言えるかと思います。
 
命に関わる病気と言うと、多くの方ががんを思い浮かべるかと思いますが、実は閉塞性動脈硬化症の患者さんの死亡率と様々ながんの死亡率を比較したところ、乳がんや大腸がんよりも、重症動脈硬化の方の方が予後は悪く、死亡率は高くなっていました。つまり繰り返しますが、下肢の動脈硬化は、全身の病気であると認識する必要があります。
 
下肢に動脈硬化のある人が、心臓や脳の動脈硬化をどの程度合併しているのかについて調べた研究もあります。その研究によると、下肢の動脈硬化を認める人の30%が、心臓の動脈硬化である心筋梗塞を有しており、21%の方が脳血管障害を有しておられました。また7%の方が、心臓と脳の両方の動脈の血管障害を有しておられました。
 
また日本特有の問題として、人工透析を慢性的に必要とする患者さんが増えていることもあります。現在では、30万人を超える方が人工透析を必要としておられます。人工透析は、動脈硬化の危険因子のひとつです。日本の腎臓内科の先生方は非常に優秀ですので、人工透析を受けながら、10年、20年と長く生きることができる患者さんが増えています。すると、どうしても動脈硬化を有する患者さんも増えることになります。人工透析を必要とする方が、30万人以上いると言うことは、動脈硬化に由来する問題を発症する方が、今後増え続けることが予想されます。

3)閉塞性動脈硬化症の重症度分類

さて閉塞性動脈硬化症には、Fontaine(フォンテン)分類と呼ばれる重症度の分類があります。Ⅰ度からⅣ度まで、症状の進行具合に応じて分類されています。Ⅰ度は軽い症状で、下肢に冷感やしびれがある程度です。Ⅱ度になると、ある程度の距離を歩くと足が痛くなって歩けなくなりますが、しばらく休むと歩けるようになります。これを間欠性跛行と呼んでいます。Ⅲ度になると、安静にしていても下肢に痛みを感じるようになります。そして最も重症度の高いⅣ度になると、足が壊死し、潰瘍ができます。このⅢ度とⅣ度合わせて重症虚血肢と呼んでおり、適切に対処しなければ足を切断する可能性が高くなります。
 
もしかすると、「間欠性跛行」と言う言葉を初めて聞かれた方もおられるかもしれませんが、できればこの言葉を覚えていただければと思います。間欠性跛行は、安静時に症状はなく、歩行を開始してしばらくすると下肢に痛みやしびれを感じ、歩けなくなる状態です。特にふくらはぎに症状が出ます。歩行を中止してしばらく休んでいると症状が改善し、歩行を再開することができるようになります。歩いては休み、歩いて休むことを繰り返しますので、間欠性跛行と呼ばれています。

4)閉塞性動脈硬化症の診断

私たちが、閉塞性動脈硬化症が疑われる患者さんの診断を進める際、一般の病気と同じように問診から始まり、検査を進めていきます。問診では、いつ頃から、どのくらいの距離を歩くと痛みが出ていたのかなど、症状の進行程度に関する情報は、とても重要です。
 
また、問診に加えて行う簡単な診察や検査があります。
 
間欠性跛行と合わせて、皆様に覚えていただきたいのがABIです。これはAnkle Brachial pressure Indexの略で、足関節の血圧を左右の上腕の血圧の高い方の値で割った数値になります。私たちの体に存在する動脈は、どこでも血圧を測ることができます。血圧測定によく使われるのは上腕ですが、これは上腕動脈の血圧を測定しています。そして末梢に行くほど、血圧が高くなっているのが一般的です。ABIの測定のときには、両上腕の血圧と両足首(ふくらはぎ)の血圧を同時に測定します。通常は、足関節の血圧の方が、上腕の血圧よりも10%ほど高くなります。ところが下肢に動脈硬化のある方は、足関節の血圧の方が、上腕の血圧よりも低くなってしまいます。基準として、足関節の血圧の血圧が、上腕動脈の血圧の90%以下であれば、下肢の動脈に何らかの狭窄あるいは閉塞病変があることが疑われます。この検査は、患者さんへの侵襲も低く、その場ですぐに結果が分かりますので、閉塞性動脈硬化症のスクリーニング検査として行われることがよくあります。最近では、両方の上腕と足関節の血圧を同時に測定できる機械を導入して、患者さんの検査をしてから紹介してくださる開業医の先生が増えておられます。
 
このほかにも、血管のエコーを行い、血管内の血流の様子を調べることもできます。これによって血管内の血流の様子や血管の閉塞状況が分かります。また簡単に自己診断できる方法もあります。下肢挙上下垂試験と呼ばれるものです。まず仰向けに寝て、両下肢を上げ、足首の回転運動をします。その際、足の裏が白くなれば要注意です。さらに、下肢を下げて、片方の足が赤くなれば、その下肢は閉塞性動脈硬化症の可能性があります。もし足に痛みを感じる方がおられたら、まずお試しください。
 
ここでこれまでのまとめをします。閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化による動脈の狭窄や閉塞で、下肢に好発し、症状には間欠性跛行があります。糖尿病や脂質異常症、喫煙などが関与しています。さらに進行すると足への血流が悪くなり、足の色が悪くなったり、フォンテン分類Ⅳ度になると、足の壊死を起こしたりします。閉塞性動脈硬化症を放置すると、最悪、手足の壊死を起こし、四肢の切断が必要となります。その結果、活動性が低下し、車椅子が必要になり、寝たきりになることもあります。そして、最終的に誤嚥性肺炎を起こし、死に至ることがあります。患者さんがご自身の足で歩けることが、その方の全身の健康を維持するために、とても重要ですので、閉塞性動脈硬化症が疑われるときは、診断の上、適切な治療を行うことが必要です。
 
次に閉塞性動脈硬化症の画像診断についてお話しします。いくつか検査法がありますが、最近ではエコー検査がとても重要になっています。例えば頸動脈をエコーで検査しますが、検査機器が年々改良されており、とても良い機械が使えるようになっています。エコーは患者さんへの負担がとても少なく、しかもリアルタイムに血管の状態を評価することができますので、とても重宝しています。それから、CT検査を使うこともあります。CT検査は、特に動脈の石灰化病変を見つける、あるいは評価するときに役立ちます。動脈硬化が進行すると、血管に石灰化が起こりますが、CTを用いると広い範囲の石灰化を見つけることが容易になります。そのほか、精密検査として血管造影を行うこともあります。

5)閉塞性動脈硬化症の治療

続いて治療について説明します。
閉塞性動脈硬化症の治療方針は、大きく3つに分けられます。まずは下肢の循環障害への対応、次に、脳、心臓、腎臓など、全身の主要臓器への対応、そして動脈硬化のリスクファクター(喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、運動不足、ストレス等)への対応があります。
 
まずリスクファクターの改善についてですが、これは何よりもまず禁煙が大切です。なかなか禁煙は難しいのですが、喫煙を続ける限り、動脈硬化は進行していきますので、なんとしても禁煙していただくことが大切になります。脂質異常症や高血圧、また糖尿病のコントロールも重要になります。
 
間欠性跛行に対する直接的治療としては、運動療法が重要になります。特に初期の治療として、常に考慮すべき治療法になります。患者さんが歩けば歩くほど、足の側副血行路が発達し、下肢の血流が確保されることにつながります。すると歩ける距離が長くなりますので、間欠性跛行の初期は、家でじっとしているよりは、どんどん外に出て、歩いていただくことをお勧めしています。
 
また薬物療法としては、抗血小板薬であるシロスタゾールが、間欠性跛行の改善に対して、科学的根拠のあることが証明されています。抗血小板薬は、その他にもいろいろありますが、下肢の動脈閉塞に対しては、シロスタゾールが第一選択となっています。
 
閉塞性動脈硬化症に対する外科治療には、バイパス、手術、血管内膜切除術、血管形成術などがあります。私は外科医ですので、これらの手術を専門に行っています。
 
バイパス手術は、血管が詰まっているところをまたいで(飛び越えて)、自分の血管や人工血管を用いて新しい血液の流れを作る手術です。手術の方法はいろいろありますが、例えば、左の鼠蹊部(太もものつけ根)から右の鼠蹊部に人工血管をつなぐ、バイパスをすることもあります。
 
また血管内膜切除術とは、実際に血管を開いて、血管のなかの狭くなった、動脈硬化の部分を取り除く、血管のなかを掃除するような手術です。
 
外科手術を行うと、血流が著しく改善するので、患者さんの症状もよく改善します。しかし、外科手術ですので、例えば体に負担がかかる、様々な合併症を起こすことがある、また長期の入院が必要になるなどの問題点があります。
 
そこで最近では、これらの外科手術に伴う問題点を克服する、血管内治療、カテーテル治療が主流となってきています。具体的には、血管の中にカテーテルを通し、狭窄している部分でバルーンを膨らませ、血管を広げる治療を行います。また、そのままでは再び狭窄してきますので、バルーンで広げた場所に、ステントと呼ばれる筒を留置することを行います。

2.閉塞性動脈硬化症(応用編)

これまでは基礎編として説明をしましたが、続けて応用編についてお話をします。
 
まず重症閉塞性動脈硬化症で、下肢に壊死を起こしてしまった下肢について、以前は重症虚血肢(Critical Limb Ischemia: CLI)と呼んでいましたが、最近ヨーロッパのガイドラインが改定され、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia: CLTI)と呼ぶようになっています。

1)  静脈を用いたバイパス術

閉塞性動脈硬化症の異常に進行した患者さんに対して手術を行う場合、とても長い距離をバイパスする必要が生じることがあります。そのような時に人工血管を用いるのではなく、ご自身の静脈を用いて、非常に長い距離のバイパスを行うことがあります。このような長い距離のバイパス手術を、私たちは30年前から行ってきています。

2)  末梢血管カテーテル治療(Endovascular Treatment: EVT)とハイブリッド手術

また最近ではEVTと呼ばれる末梢血管カテーテル治療を積極的に行っています。私は今から20年ほど前に、UCLAに3年間留学をさせていただきました。当時まだ日本ではカテーテル治療は主流ではありませんでしたので、アメリカでカテーテル治療について勉強をさせていただきました。その後医科歯科大学に戻って、カテーテルよる治療を開始し、その後EVTの症例がどんどん増えています。このカテーテル治療は、総腸骨動脈、浅大腿動脈などの動脈の狭窄した病変を、元通りの状態にまで改善させることができます。その他にも、膝や足首の動脈にもカテーテル治療を行い、閉塞を改善することができています。
 
また、外科手術とカテーテル治療を同日に組み合わせて行う、ハイブリット手術をすることもあります。例えば、足が真っ黒になって壊死し、以前は切断しかないと思われた患者さんに対しても、外科手術とカテーテル治療を行うことにより、その後時間はかかりますが、ご自身で歩くことができるまで回復するような症例を経験しています。
 
カテーテル治療の分野はまさに日進月歩で、毎年のように新しいデバイスが開発されています。将来的にはロボット手術もできるのではないかと思われる分野です。テクノロジーの進歩に伴い、患者さんに提供できる医療も、年々安全でより効果の高い治療が生まれてきています。
 
私たちは、外科治療とカテーテル治療を、患者さんの状態に合わせて組み合わせて行っています。特に足に壊疽のある患者さんは、全身的に弱っている方が多いです。したがって、できるだけ全身に負荷がかからない方法で、足への血流を改善させてあげることが重要になってきます。そのようなこともあり、年々カテーテル治療が占める割合が増えてきているのではないかと考えています。

3)  包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)に対する集学的治療

私たちは血管外科医ですので、血管に対する手術やカテーテル治療だけ行っていると思われるかもしれませんが、実際には傷をしっかりと治すために様々な治療法を組み合わせています。
下肢の潰瘍や壊死に対する治療には、壊死した部分を切除するデブリードマン、高血圧や血糖の管理、感染管理などが含まれます。
 
全身の管理、血管に対する治療と合わせて、傷の管理、局所の治療も重要です。例えば、血行再建によって足への血液の巡りは良くなったのですが、それだけでは不十分です。壊死になっている悪い組織を取り除き、そこに陰圧吸引療法を加えることがあります。陰圧吸引療法は、傷を湿潤状態に保ちながら持続的に吸引することで、過剰な浸出液や汚染物質を除去し、局所の微小循環の改善を促す治療法です。そしてその後植皮を行い、最終的に治癒まで至ります。
 
また患者さんによってはマゴット療法、蛆虫を使った治療を行うことがあります。これは、医療用の蛆虫虫が、壊死した傷の汚いところを食べてくれる、それによって傷の治癒を促進させる治療法です。マゴット療法によって傷がきれいになります。その後にきれいになった傷に植皮を行い、治癒に至ります。
 
このように創傷治癒を促すために創面管理を行うことをWound Bed Preparation(WBP)と呼んでいます。WBPとして、壊死した病変を切除するデブリードメント、感染制御、湿潤環境を保持することが、傷の治癒を促進させることができます。そのために陰圧吸引療法やマゴット療法は、非常に効果的だと言われています。
また最近は人工真皮を用いることもあります。豚の小腸粘膜下組織由来の人工真皮を用います。潰瘍になったところに人工真皮を貼り付けるだけで、傷が良くなります。例えば、閉塞性動脈硬化症で手術をしようとした患者さんで、足の壊死がひどく、腱が露出するような状態の方に対し、壊死した組織を切除し、細胞外マトリックス(人工真皮)を貼付することで、傷の治癒を得ることができました。
 
また最近は、血管新生療法を保険診療で行うことができるようになっています。遺伝子治療による血管新生を促す治療ですが、コラテジェン®と呼ばれる血管新生を促す作用を有する成分を筋肉注射することで、周辺の血管新生を促し、傷の治癒を促進させます。いくつか適用はありますが、実際に使用している例では、コラテジェン®をふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋)に4週間間隔で2回に分けて筋肉注射します。実際はヒラメ筋をエコーで確認しながら、筋肉注射を8カ所に分けて行います。ブロック麻酔を行いますので、2時間ほど安静が必要ですが、麻酔が切れたら自力で歩くことが可能です。日帰り治療で行いますので、入院は必要ありません。
 
例えば、動脈硬化がひどく、カテーテル治療を行いましたが、足の潰瘍の再発を繰り返した患者さんがおられました。このような方にコラテジェンを使用し、その後潰瘍が良くなったと言う方もおられます。
 
またレオカーナ®と呼ばれる吸着型血液浄化器があります。これは血液透析の機械に組み込んで使用しますが、レオカーナ®を使用することで、血液中のコレステロールやフィブリノーゲンを低下させ、血液粘度を低下させることができます。血液粘度が低下すると、末梢循環を改善させることができます。これにより、足の傷の治癒が促進されます。特に透析患者さんに対する治療では、レオカーナ®も組み合わせて治療を行っていきます。
 
まとめですが、特に重症閉塞性動脈硬化症の患者さんに対しては、個々の患者さんに合わせてバイパス術やカテーテル治療を組み合わせています。また、それだけでは傷は治りませんので、集学的治療として様々な補助療法を組み合わせて治療を行っています。今後は、コラテジェン®等の血管新生療法の効果が期待されています。
 
以上ご清聴ありがとうございました。

3.質疑応答

Q. 極端な貧血、例えばヘモグロビン3くらいで、下肢の深部静脈血栓を作ることはありますか?
A. 一般的に血液の粘稠度が高いほど血栓ができやすくなります。したがって、ヘモグロビンやヘマトクリットが高い方が、血栓ができやすくなります。ヘモグロビンが3と言うことは、ヘマトクリットもかなり低くなりますので、一般論から言いますと、血栓を作りやすくなることはないといえます。

Q. 術後の集学的治療が奏功しない場合はありますか?そのような場合、何かできることはありますか?
A. 足の壊死と一言で言っても、その深刻度は患者さんによってさまざまです。例えば足の指先だけ小さな潰瘍ができている方から、足全体が真っ黒に壊死してるような患者さんまで、状態はさまざまです。やはり初期段階であれば、壊死や潰瘍があっても治ることはありますが、病院に来られた時点でかなり進行している場合は、どうしても術後の集学的治療は効果が低く、膝の下からの切断が必要となる方がおられます。ただ少なくとも、踵が残れば、自力歩行は可能となりますので、私たちとしては足の指先を失ったとしても、踵は残すようにしたいと考えています。

Q. 下肢静脈瘤を放置しておくと、どのようなリスクがありますか?
A. 本日の話は動脈硬化が中心で、下肢静脈瘤の話はしませんでした。下肢静脈瘤は一度できると治ることはありません。そして年々、少しずつ進行する特徴があります。一般的にふくらはぎが重い、だるい、むくむなどの症状があります。立ち仕事が多い方に起こりやすく、症状が進行すると、徐々に立ち仕事が辛くなります。このように、症状がどんどん重くなるというのがひとつの特徴です。また、なかには症状こじらせる方がおられ、皮膚が薄黒くなる色素沈着や潰瘍ができてしまうことがあります。このようにこじらせてしまった方は、治療が必要となります。静脈瘤もカテーテル治療が進んでおり、9割近い方はカテーテルで治療が可能です。大体30分位の日帰り手術で治療が可能ですので、症状が重い方、色素沈着や潰瘍がある方は、できるだけ早く専門医に相談されることをお勧めします。

Q. 本日は新しい技術者治療法をご紹介いただきましたが、このように新しい治療を初めて行うときには、どのようなプロセスを経ておられますか?
A. 非常に重要な点だと思います。医療には安全が大切ですが、確かに新しい技術や新しいデバイスを初めて使うことは起こりえます。例えば最近ジェットストリームと呼ばれる新しいデバイスが、保険で使えるようになりました。これはどのようなデバイスかといいますと、石灰化が進行し、バルーンでは広げることができないような硬くなってしまった動脈硬化の病変に対して使用する、先端が回転するドリルのようなデバイスで、病変を削るというか、破砕するというか、粉々に砕いていくデバイスになります。このような新しいデバイスを初めて使うときは、例えばまず最初は企業が主催するセミナーに出席をします。そして、そのデバイスの使用上の注意等を勉強します。その次に、そのデバイスを使っておられる先生の所へ行って見学をします。そして実際に使っておられる先生から、直接使用上の注意点や、使い方のポイントなどを教わります。そして次は病院の中で設けられている、高度医療技術を認可する委員会に資料を提出して、委員会で承認を受けるようにします。委員会で審議をしてもらい、その技術を用いても良いと言う承認をしてもらいます。その後、実際に初めて患者さんにそのデバイスを使うときは、業者に立ち会ってもらうことやそのデバイスをすでに使用しておられる先生に立ち会ってもらうこともあります。これが新しいデバイスをや技術を使うときのプロセスになります。

今後の予定につきましては下記リンクよりご確認ください。
医療職・介護職・福祉職の方であればどなたでもご参加いただけます。


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