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ぶかぶかヘルメットをかぶり大きなランドセルを抱えて長い橋を渡る。


今回のタイトル。
これは小学校1年生の自分の姿です。


ちょうど小学校入学の年。
父の転勤で1年程、ある地方の小さな町に住むことになりました。小さな町ですが、それなりに周りに人も住んでいますし、一応お店もあります。(こじんまりとした可愛らしいお店です。)

ただ、少子化の影響で小学校が統廃合され、この町からは小学校がなくなり、かなり遠くなってしまいました。(昔は、住んでいた家から10分もかからない近い場所に小学校があったそうです。)


小学校に行くためには、長い橋を渡らなくてはいけません。
わたしは、この橋があまり好きではありませんでした。昔の名残で川幅は大きいのですが、今の川の流れはとても穏やかで水量も少なく浅いです。
でも、なぜだかよく分からないのですが、この川の大きさがとても怖かったのです。

小学校までは一人で歩きます。
ですから橋も一人で渡らなければいけません。
(一応、集団登校?のお姉さんがいましたが、これがまたとってもいじわるなお姉さんで…笑。基本的には一人での登校でした。)


怖くても渡らないと小学校には行けません。
毎日毎日渡る長い橋。
「はぁ…」とため息が出るような嫌な時間でした。

小学校までの道のりが嫌過ぎて、小学校自体も、行きたくない嫌な場所・楽しくない場所になってしまっていました。


***

登校する際には、帽子?のようなヘルメットをかぶります。
1年生ということと、周りよりもとても体が小さかったこともあり、見事なぶかぶかヘルメット。
守る目的だとしたら、前が見えづらくて逆に危険なのでは?と物申したいほど。
当時の写真を見ると…とても笑える姿です。

ピカピカのランドセルとぶかぶかヘルメット。
ランドセルは、コラボする相手を間違ってしまった感満載です。


ちなみにこのヘルメット。
ぼやっとした記憶なのですが、生徒全員が被っていたわけではなかったような気がします。
わたしの場合、遠くから歩いてくるからなのでしょうか。
母に聞いてみると、「全然覚えてないなぁ」とあっさり。ということで、かぶる理由も含めて真相は完全に謎です。笑(ごめんなさい。)


***

長い長い道のりを歩いて、やっと小学校に到着。
教室に入ると、とりあえず椅子に座って休憩。
「元気いっぱい1年生!」とは程遠い姿。
とにかく、朝のホームルームが始まるまでひたすら休んでいた記憶があります。
(クラスの友だちは個々それぞれいろいろ遊んでいたように思います。)


小さな子どもが、遠い町から大きなランドセルを背負って、長い橋を渡って小学校に来る。
そして、小学校に着くと、遊ぶことなく休憩している。


そんなわたしの姿を見て、担任の先生はとても心配してくださっていたそうです。
こまめに家に連絡をしてくださり、わたしの様子を伝えてくれた先生。
いつの間にかその連絡は「今帰りました」のお知らせ電話になったそうです。


***

ちょうど今頃の時期。
その日は金曜日で持ち帰りの荷物がとても多い日でした。

ヘルメット・ランドセル・水筒。
そこに、上着(制服のようなもの)と手提げかばん(上履き等)、給食エプロンの袋等が仲間入り。

今改めて想像してみると…完全に荷物に取り囲まれてしまっていて、「大丈夫…?!?」と声をかけたくなる感じです。


先生も同じように感じたのかもしれません。
いつもの「今帰りました」の連絡の際、「今日はとても荷物が多いので、もし可能なら様子をみて迎えにいってあげてください」と連絡があったそうです。


母は、迎えに行くか…とても悩んだそうです。
様子を見るため、外に出ては戻り、出ては戻り。
でも、母は「待つこと」を選びました。
歩いてくるわたしをじっと待ちます。



***

その頃わたしはというと、荷物が重すぎて…ほとんど歩いていませんでした。

歩いても歩いても前に進まないような感覚。少し歩いては休み、少し歩いては休み・休み・休み。
そんな調子ですから、なかなか家にたどりつきません。


ゆっくりゆっくり。一歩ずつ進んで、やっと橋の入り口まできました。

あともうちょっと。


と言いたいところですが…全然もうちょっとではない。ここからが長いのです。

もう…さすがにうんざり。
でも、歩かないと家に帰れません。歩くしかありません。


それにしてもこの重いランドセルとその他のたくさんの荷物たち。
なんとかならないのか?…いろいろ考えました。
そして思いついたこと。

全てをひとつにまとめる。

(それはさらに大変なことになるよ…と自分に教えてあげたい。)


ランドセルの中に全ての荷物を押し込む。水筒は横のフックに引っ掛ける。

よし!
全てを詰め込んだランドセルを背負います。


……重い。
でももう後に引けません。後ろにひっくり返りそうな勢い。ランドセルのベルトをグッと引っ張り、おんぶするような姿勢で前かがみになって下を向きながら歩きます。

しかし、下を向くとヘルメットが下がります。
でも、上を向くとランドセルに引っ張られます。



…ふぅ。一旦、休憩。
ランドセルを下ろし、新しい作戦を考えます。

よし!抱っこして持っていこう。

(いやいや、それはもっと大変だよ…と全力で教えてあげたい。)



………重い…重すぎる。
でも、もうこのまま行こう!となぜか気合いを入れ直します。少し歩いては休み、歩いては休む。大きなランドセルを抱っこするように抱えて長い橋を進みます。



***

やっとやっとやっとやっと…家に到着。
玄関に入った瞬間倒れ込みました。

母はちょうど先生から再び連絡をいただいていたところでした。

「今、帰ってきました!」


母の大きな声が聞こえたのを覚えています。

ここまでの記憶は自分の中にしっかりと残っていますが、その後の記憶はあまり残っていません。
とりあえず、かなり汗だくなのでシャワーをあびて着替えてお昼寝したそうなのですが。



***

学校に行きたくないなぁ…という気持ちがじわじわと大きくなっていました。
学校に行かない=重いランドセルを背負ってあの道を歩かなくて良い…そういう感じだったと思います。

甘い!と言われるかもしれませんが…ついこの間まで、コンパクトなリュックだけを背負って幼稚園に通っていた新1年生の自分にとっては過酷過ぎました。



ですが、ここでまさかの展開。
冒頭で「1年程」と書きました。

そうなのです。
すぐにまた本社に戻ることになり、1年生の終わりを待って再び引越しすることになったのです。
両親も驚きの本当にまさかの展開です。


2年生からの小学校は、通学時間10分弱のフラットな道のりです。
ランドセルの中身は置いていっても良い。(宿題等は持ち帰る。)ヘルメットもありません。


ランドセルの重さが、こんなにも違うものなのか!?!と、とても驚いた小学校2年生の春。

小学校って楽しいところだったんだなぁ。

最後までお読みくださいましてありがとうございます。 あたたかいお心遣いに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。