高校デビュー

地元の中学から、その高校に進む人はほとんどいなかった。

偏差値が高めで、地元よりも少し遠かったからだ。

いじめられていた過去も、意気地なしの自分も、誰も知らない。

私は産まれ変わった気分だった。

髪型も服装も自由な高校で、

私は「流行りの」おしゃれをして、

万人ウケする「流行りの」話題を持って挑んだ。


学校は思っていたとおり良い雰囲気で、

誰もがニコニコしていた。

すれ違う先生も、上級生も、

「新入生?分からないことがあったら何でも聞いてね」と嬉しそうに声をかけてくれた。

「いいよね、この学校。ここに来て良かった!」

誰もが口々にそう言った。

誰かが、今までならいじめられそうな発言をしても、

「今その話じゃないよー。ウケ狙い?面白いな!」

と、みんなで笑った。


自由な高校にも、制服や校則はあった。

けれども、生徒会で可決されれば、変えられた。

学校に押し付けられることがない、生徒が作る学校。

本当の民主主義が、ここにあった。

制服の改造は禁止だったけれど、シャツでもスカートでも何か一つ身に着けていればよかった。

私達は、私服と制服を合わせて可愛く着こなした。

髪の色は、金髪や派手な色は禁止だったけれど、茶髪は認められた。

めいめいの服装で登校する私達生徒を見て、世間の大人達は言った。

「あの高校は髪も服も、だらしない。不良だらけだ」

何か事件があると、生徒が疑われたけれど、

実際の私達はそういうものとは無縁だった。


私の高校デビューの鎧は、なぜかすぐに見破られた。

「あんた、そんなキャラじゃないでしょ?無理しなくていいよ」

「えっ?」

恥ずかしくて取り繕う私をからかうこともなく、みんなは言った。

「ここでそんなに構えなくても大丈夫だよ。好きなことがしたくてここに来た人がほとんどだと思う。ね、部活もう決めた?一緒に見学に行こうよ!」


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