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【第38話】リーダーが変わると職員が変わる②

それからしばらく順子は、栗田と話をした。栗田と話をしていると、不思議と自分が経験してきたことや気づいたことが、整理されていくように感じた。それはまるで、食べ物が消化され栄養になっていくようであった。

順子は一方的にとめどなく栗田に話をしつつ、どこかこの状況を客観的に眺めている自分がいることを感じていた。

(なぜ栗田は、私のことを私よりもよく理解しているのだろう?そして、まだ二回しか会っていないのに、なぜ栗田に対して自分は正直にありのままを伝えることができているのだろう?これもファシリテーションの為せる技なのだろうか?)

「・・・今後は、職員の力を信じて任せてみようと思っているのですね。わかりました。では、また次回の園内研修の時に、新たに取り組んだことを教えてください。楽しみにしていますね」

栗田は次の予定があるようで、順子との話が終わるとそそくさと帰っていった。



順子は栗田との話し合いの後、リーダーとしてのあり方に少しずつ変化が生じてきた。何か心配なことや不安なことがあると一人で抱え込まず、乳児リーダーの滝本と、幼児リーダーの飛田と相談をするようになった。

変化は油井園長にも起こっていた。油井園長は、外部のリーダーシップやマネジメント研修にも積極的に出るようになった。保育のマネジメントに関する本を読みながら、園長としての自分の役割について考えるようになった。

油井園長の変化に、職員も少しずつ気づくようになった。人手不足で園庭やクラスに入り子どもたちと関わることはあるが、子ども同士の喧嘩や保育の展開など、率先して動くことはせず、状況判断を担当の保育者に任せるようになった。

油井園長が一番意識していたのは、代行せず職員の出番を増やすということである。
最初は「あれ?」と戸惑っていた職員も、油井園長に信頼され任されていると感じられるようになっていった。

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