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#8 「好き」と出会った4歳児

4歳児30名のクラスを担任していたある年のある朝。

初夏のからっとした晴天で、子どもたちは園庭や保育室、廊下など思い思いの場所で過ごし、思い思いの遊びをしたり、何もしなかったり(この時間が大切)。

10時になるとクラスに戻り、「朝のあつまり」が始まる。

ピアノに合わせて歌ったり、感じてることを話したり、友だちや先生の話を聴いたりする対話(言葉を交わすだけの意味ではない)の時間。

私が話していると、RくんとKくんがCちゃんをはさんで、大きな声で互いの思いをぶつけ始めた。

R 「Cちゃんは今日ぼくとあそぶんだよ!」
K 「俺と遊ぶって言ってたよ!」
R 「そんなのダメだよ!!」
K 「なんでだよ!Rは明日あそべばいいじゃん!!!」

その様子をきょとんとした表情で眺めていたCは、

C 「3人で遊んだらいいんじゃない?」

K「Cちゃんはそれでいいのかよ?俺は2人であそびたいんだ!それに先に約束してたのは俺じゃん!」

どうやらKとCが最初に遊ぶ約束をしていたらしい。

C 「ん〜 、じゃあKくんとさいしょにあそんで、そのあとRくんとあそぶのはどう?」

この直後だった。

バン!!

Rは両手で机を思い切りたたくと同時に立ち上がった。

R「もう知らない!」

Rは半分泣きながら、ドアへ向かって歩き出し、廊下へ飛び出していった。

ドラマのワンシーンみたいだ…なんて思う間もなく、私はRを追う。

こんなとき、周囲の子どもたちは落ち着いている。いろんなことが起こるクラスだったのと、対話を大切にしてきたので、Rの姿を受け取る土台があった。

Rの気持ちを受け取る。

Rの話に聞き入る。

とにかく聴ききる。

Rは、Cを好きすぎて、どうしたらいいかわからなかったのだと、自分で振り返っていた。

話を聴いたのは、時間にして2分ほど。

「聞き入る」と、時間は短くても濃さに違いが出ることを感じた。

Rは、自分から保育室に戻る。

Rは、Cちゃんが好きでどうしても一緒に遊びたいことを2人に伝えていた。


K 「RはCちゃんが好きなの?」

R 「うん。」

K 「え、俺もCちゃん好きなんだけど。」

R 「え、そうなの?」

K 「俺たちなかまじゃん!」

R 「なかまだねー!」


RとKは、肩を組んで笑っていた。

どうやら3人で遊ぶことにしたらしい。

この時間は3人だけの話ではなく、クラスの子どもたちはそれぞれ提案したり自分の考えを話していたり、見守っていたりしていた。

クラス全体が「よかったねー!」という雰囲気に包まれていた。

4歳児30名。

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