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#55 「安心」と「信頼」と保育
自分の声を聴きとられた子どもの中には「安心」と「信頼」の感覚が生まれます。
保育では、安心・安心感、信頼・信頼感・信頼関係という言葉がよく使われます。
それだけ大切で、必要だということですよね。
ところで、「安心」とは何か?「信頼」とは何か?と聞かれたらどのように答えるでしょうか?
感覚的には分かっていても、あらためて言葉にしようとすると、どんな表現になるでしょうか?
研修等で問いかけると、「安心」は【ほっとする、心が落ち着く、心地よい感じ】などが挙がります。
信頼の方はより感覚的な概念なようで【信じて頼る】など、あらためて言葉にしようとするとなかなか難しいようです。
保育所保育指針解説「保育の基本原則・保育の方法」では、安心と信頼についてこう記されています。
一人一人の子どもの状況や家庭及び地域社会での生活の実態を把握するとともに、子どもが安心感と信頼感をもって活動できるよう、子どもの主体としての思いや願いを受け止めること。
解説では、子どもは一人の独立した人間であり、保育者が一人ひとりに思いや願いをもって育ちゆく一人の人間として捉え、受け止めることによって、子どもは安心感や信頼感をもって活動できるようになるのだと書かれています。
そしてこう続きます。
身近な人との信頼関係の下で安心して過ごせる場において、子どもは自分の意思を表現し、意欲をもって自ら周囲の環境に関わっていく。
このことを踏まえ、保育に当たっては、一人一人の子どもの主体性を尊重し、子どもの自己肯定感が育まれるよう対応していくことが重要である。
安心だけ、信頼だけ、どちらかだけでは機能しません。安心と信頼の連動が大切になってきます。
今回は、保育の営みにおいて鍵となる「安心」と「信頼」とは何かをみていきたいと思います。
1.「安心」とは、想定外の可能性がほとんどないこと
伊藤亜紗さんの『手の倫理』に書かれている内容から考えていきます。
『手の倫理』のなかで、社会心理学が専門の山岸俊男さんの説明が以下のように紹介されています。
(安心は)想定外のことが起こる可能性がほとんどゼロ。すなわち、「安心」という感情は、状況をコントロールできている想定と関係しています。
他方で、信頼は「社会的不確実性」があるときに生まれると書かれています。
社会的不確実性がある状況とは、「相手が自分の思いとは違う行動をする可能性がある、つまり自分を裏切るかもしれないような状況」のこと。
すなわち信頼とは、「相手の行動いかんによっては自分がひどい目にあってしまう状況で、相手がひどいことをしないだろうと期待すること」
信頼:社会的不確実性が存在しているにもかかわらず、相手の(自分に対する感情までも含めた意味での)人間性のゆえに、相手が自分に対してひどい行動はとらないだろうと考えること
安心:そもそもそのような社会的不確実性が存在していないと感じること
信頼を基盤にした関わりを繰り返すことで、相手への信頼が安心に移り変わっていくこともあります。
安心が阻害されたことで、信頼する力が必要になる場面もあるでしょう。
では、この2つの概念を保育でどう考えて扱うかについて書いていきます。
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保育は人生そのものだ!
私にとっての「保育」という存在にも向き合っていきたい。子どもにとっての「保育」も、保護者や社会にとっての「保育」も考えていきたい。その営み…
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