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『こども基本法』をわかりやすく解説。どんな法律?なぜ必要なの?(前編)
皆さんは『こども基本法』をご存じでしょうか?子育てをしている方や子どもと関わる職業の方は耳にしたこともあるかもしれません。しかし、内容まではよく分からない……という方も多いでしょう。
こども基本法とは?
こども基本法は、日本国憲法および児童の権利に関する条約(※)の精神にのっとり、全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども政策を総合的に推進することを目的としています。同法は、こども施策の基本理念のほか、こども大綱の策定やこども等の意見の反映などについて定めています。
実は日本の子育て環境は、大きく変化しています。その1つが『こども基本法』の制定です。今回は、『こども基本法』がなぜできたのか?どのような法律なのか?を前後編2回にわけて、分かりやすく解説します。
前編ではこども基本法がなぜ必要なのか?について、後編では『こども基本法』の具体的な内容や、こども基本法が成立することで、どのような変化があるのか?について解説していきます。
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園長コマツ
とある私立認可保育所の園長です。 子どもや保護者、職員みんなが活き活きと暮らせる保育園へ向けて悩みながら改革中。 自分の取り組みや学びをNoteを通して発信します。 プライベートでは二児の父。 好物はハンバーグ。
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なぜ「こども基本法」ができるの?
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まず大前提として、日本にはこれまでこどもの権利を包括的に認める法律はありませんでした。例えば、障害者には障害者基本法、女性には男女共同参画社会基本法…などそれぞれ権利を尊重する法律が存在します。
こうした法律があることで、国や地方公共団体にちゃんと権利を守るよう責任が発生したり、権利が守られるようにしっかりと計画を立てられたり、様々な取り組みがおこなわれます。
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しかし、これまで、こどもにはそれがありませんでした。
こどもに関連する法律は、児童福祉法や教育基本法、成育基本法…など様々な種類のものがあります。
児童福祉法は福祉分野の法律、教育基本法は教育分野の法律、成育基本法は医療分野の法律…など、それぞれの分野の中での法律の位置づけとなっています。
こどもの権利を包括的に認める法律がなかったため、こどもへの政策が後回しになってしまったり、権利侵害が起こりやすい環境になってしまったりしているのが課題でした。
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基本法は認知度を高める役割もあるそうです。たしかに、障害者基本法や男女共同参画社会基本法…なんかは聞き覚えがありますよね。
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こども基本法成立の背景
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こども基本法をより理解するためには、成立した背景を知っておくことが大切です。こども基本法が成立した背景として、4つのポイントがあります。
①国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。
②2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記されたこと。
③新型コロナウイルス感染拡大によりこどもの権利が侵害された可能性があったこと。
④児童虐待やいじめ問題など、こどもに関する問題が増加したこと。
それぞれ、見ていきましょう。
①国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。
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こども基本法が成立したきっかけは「児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約)」を日本が批准したからと言えます。こどもの権利条約に批准した国はこどもの権利を守るような法整備や環境を整えなければなりません。
児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)とは?
1989年子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。
前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。(引用:ユニセフ『こどもの権利条約』より)
日本は1994年にこどもの権利条約を批准しました。(実は加盟した順番は158か国目とかなり遅い順位です。)本来であれば、こどもの権利条約の内容を国で遵守していかなければいけない立場です。
しかし、そこから約30年、日本はこども基本法を作りませんでした。もともと「こどもは守るもの」という価値観が強かったり、人権意識については薄い風潮があるからです。
そこから国連から何度も勧告を受けたり、国内からの声も受けたりして、少しずつ変化し、ようやく子ども基本法が策定されました。
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この辺りからも、日本はこども政策に対して、腰が重いのが伺えますね…。
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また、諸外国からの勧告に加え、国内で2016年に児童福祉法改正がありました。この改正は、子ども基本法成立に向けて大きな一歩となりました。
②2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記された。
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こどもの権利条約を批准したものの…そこから大きく動きはなかった日本。2016年に児童福祉法が改正され、この中ではじめて「児童の権利」という言葉が明記されました。
こちらは、改正前と改正後の比較の表です。
【改正前】児童福祉法条文
第1条1すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
第1条2すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
第2条国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
【改正後】児童福祉法条文
・第1条1全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されると、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。
・第2条全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
改正前に比べて「こどもの権利条約」「意見表明権」について記載されています。
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文章自体もガラリと変わっていますね!この改正では児童福祉法の「理念」が明確化された改正だったのです。
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この児童福祉法の改正は、こども基本法の成立に向けて大きな一歩となったのでした。
③新型コロナウイルス感染拡大により、こどもの権利が侵害された可能性があった。
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2020年に日本財団が「こども基本法」の制定を提言しました。このことも「こども基本法」への制定に大きな影響を与えました。2020と言えば、新型コロナウイルスが猛威を振るい、外出自粛が叫ばれていた時期です。
2020年2月27日当時の安部晋三首相は全国一斉休校を要請しました。
休校期間は最長で約3か月にも及びました。
オンラインによる授業も現在ほど整備されておらず、その期間こどもが学ぶ機会を保障することも難しかったです。また、何の法的根拠もないままに、公園での固定遊具が使用禁止になる、使用が制限されるなど、こどもへの学習や育ちへの影響の視点がないまま、取り組みがされてきました。
この事態に多くの関係者がこどもを守る法律がない現実を目の当たりにし、子どもを守る法律と行政機関の創設の必要性を意識するようになりました。
④児童虐待に関する問題が増加した。
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近年、子どもの虐待は増加しています。
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2009年(平成21年)の44,211件と比べると2022年(令和4年)は4倍以上の219,170件の虐待相談数があがっています。
虐待を防ぐためには、家庭と行政、地域サービス、社会福祉など様々な連携が必要になってきます。社会が一体となって、虐待を防ぐ仕組みを作っていかなければいけません。
そのためにはこどもの権利を法律上できちんと明記し、専門の省庁によって組織化され、効果的な施策をしていかなければなりません。まさにこども基本法とこども家庭庁の設立は、このような経緯から必要とされてきたのです。
まとめ
こども基本法とは?
こども基本法は、日本国憲法および児童の権利に関する条約(※)の精神にのっとり、全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども政策を総合的に推進することを目的としています。同法は、こども施策の基本理念のほか、こども大綱の策定やこども等の意見の反映などについて定めています。
なぜ、こども基本法が必要なの?
日本にはこどもの権利を包括的に認める法律がなく、基本法があることで、国や地方公共団体にちゃんと権利を守るよう責任が発生したり、権利が守られるようにしっかりと計画を立てられたり、様々な取り組みがおこなわれるようになるから。
こども基本法が必要な背景
①国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。
②2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記されたこと。
③新型コロナウイルス感染拡大によりこどもの権利が侵害された可能性があったこと。
④児童虐待やいじめ問題など、こどもに関する問題が増加したこと。
以上です。後編では『こども基本法』の具体的な内容や、こども基本法が成立することで、どのような変化があるのか?について解説していきます。
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