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柴田 歩兵
2022年10月1日 00:11
すっかり日が暮れた横浜の街を駅までプラプラと歩く。居酒屋、個室ビデオ、キャバクラ、風俗、いつのまにか看板に明々と火が灯っている。昼間の薄汚いだけの街並みと違い、猥雑な雰囲気が徐々に満ち始めて来ている。良くこんな所に高校を建てたものだと生徒ながらに呆れるが、もうすっかり慣れてしまった下校風景である。「本当にこんなんでいいのかなー」橋本の主導によりあっと言う間に決まってしまったメンバーについてで
2022年10月1日 00:18
「バンド名どうすんだよ」「お前それしか言わないな…」スタジオを終え、僕らは横浜駅前のマクドナルドに入った。四人掛けの席に五人の男と三本の楽器がひしめき合って肩を寄せるように座る。あれから時間の許す限り何度も曲をみんなで合わせた。出し尽くした疲労感が心地よく身体に残り、僕の喉はガラガラに枯れていた。高田を無視してポテトを食べながらふと山内の頭髪に目が向いた。「山内、お前髪伸びたな…」
2022年10月1日 00:28
「よし、じゃあ気合い入れて行くか」 高田のカウントで練習が始まった。まずは腕慣らしにアンダートーンズのティーンエイジキックス。 初めてコピーした曲なので僕らは何となく愛着を感じていた。練習を始める時はチューニング代わりにこの曲を演奏するのが習慣となっていた。 静まり返った夜の学校でいざ音を出すのは少し気が引けた。しかし高田は一切の遠慮なく豪快に叩きまくる。そのおかげで僕らも途中から伸び伸