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テクニック記事「背中から花が生える!ウィングショットの撮り方」

背中から翼のように花が生えたり、建物や船などがニョキニョキ生えたり...、そんな幻想的で不思議な多重写真を撮ってみたくないですか?今回は、最近私のお気に入りのフィルム多重テクニックの一つで、ワークショップでも大人気の「ウィングショット」について紹介したいと思います。

女性モデルと花や建物とのウィングショット多重

上の画像は、女性と花やビル群とを組み合わせたフィルム多重写真です。人物の輪郭はくっきりと、そして背中側は花やビルがくっきりと写り、両者が煩雑に混じり合うことなくきれいに融合しています。まるで背中から翼のように花が生えているように見えるので「ウィングショット」と名付けましたが、幻想的でちょっと楽しそうな撮り方ですよね。これは難しそうに思われるかもしれませんが、実は撮り方のポイントを少し気をつければ意外とかんたんに撮れてしまいます。ということで以下で撮り方を説明していきます。
 
【基本設定/必要なもの】
■露出設定…-0.5~-1補正(被写体の明るさ・光の条件による)
■多重露光の方法…セルフフィルムスワップ方式がおすすめ(効率性・成功率アップのため)
■フィルム…基本的になんでもOK。高感度過ぎないものがベター(ISO100~400程度)
■アクセサリー等…人物撮影はストロボ、レフ版、スプリッツァー、各種フィルター等自由に。黒い布(背後を暗くする用)等。
 

【撮り方】

※順番は②の「重ねる被写体(花など)を撮る」が先でもよいです

①人物の撮影
このウィングショットで大事になるのは2回目の撮影よりこちらの人物のほうです。いくつかポイントがあるので順に説明していきます。
 
1. 構図はタテ位置で
人物をタテ構図で撮るのはマストではありませんが、背中から豪快に生えているように見えるためにはタテ位置のほうがおすすめです。顔の輪郭や髪の流れ、体のライン等をよく意識して構図を決めます。

人物撮影の際の構図は縦がおすすめ

2. 画面右半分(背中側)を暗く、左半分(顔側)を明るく
この多重の一番のポイントはここです。イメージとしては、背中側半分(作例では左半分)をなるべく暗く、そして顔側半分(作例では右半分)をなるべく明るくはっきりと分割して撮る、ということです。具体的な撮り方としては、暗いほうは、黒っぽい建物の壁や木の幹などその場のロケーションを生かして、明るいほうは、空や白っぽい壁などを利用して撮ります。もし周囲に何もない場合はスプリッツァー等でレンズ前を暗く覆ってもいいのですが、重ねたとき自然な融合になりにくくなります。もしアシスタントがいれば黒い布などを人物の背後で持ってもらうのも手です。さらにポイントとしては、頭の上に暗い部分と明るい部分の境界が出てしまうのですが、その境界部分はフレーミングでカットしましょう(頭を少し切ってしまうイメージ。下の画像参照)。これは重なった際に明暗の差が上にはっきり現れて人の輪郭、ひいては全体の作品イメージを損ねてしまう可能性があるからです(撮り方によっては切らないでも大丈夫です)。

人物の顔側の背後(右側)は空で明るく、背中側の背後(左側)は木で暗く

3. 光の条件や服装について
撮る際の光線の条件や服装などについてですが、まず光については順光よりは逆光か曇りのような弱めの光のが経験上おすすめです。あまり人物に光が強く当たりすぎているとコントラストが強くなりすぎて、花との重なりが不自然になってしまう場合があります(ただし撮影意図によっては順光でもOKです)。服装は、なるべく暗め(黒系)のほうが重なる被写体がくっきり浮かび上がって見栄えがよいですが、これも撮影意図によっては自由です。
 
② 重ねる被写体(花など)を撮る
次に、花など背中から生える被写体の撮り方についてです。ここでは花を撮る場合で説明します。
 
1. 構図は横位置で
人物とちがいこちらは横位置で撮るほうがうまくいきやすいです(被写体によります)。撮る際は、花の上側が人物の背中側になるようにカメラの持ち手に気をつけてください。
 
2.視点を低くして花びらの輪郭をしっかり浮かび上がらせる
このテクの成功の鍵を握るのは、背中から生えたウィング(翼)をいかに美しく見せるかということです。見栄えのよさのためには花の上側は空などでなるべく明るく抜けていることがまずポイント。花によっては背が低いので上から見下ろして撮ると地面や背後の人工物等が写ってしまい明るいエリアが得られません。なのでなるべく低い姿勢から花を見上げるように撮るとよいでしょう。花の背後に余計なものが写り込まないように、そして花びらがスカスカになりすぎず、かつ過密になりすぎず、それぞれの花の輪郭がしっかり美しく出るベストの構図を決めます。(これが意外と難しい!)

2. 光の条件について
光線の条件としては、日陰や曇天などがやはり向いていて、なるべく下側(地面側)を暗くするのがポイントです。下側は人物の輪郭側と重なる部分になるので、重なったときに人物の顔や輪郭を強い光で損ねてしまわないようにするためです。
 
③ 完成
下の画像が完成イメージです。1枚目の成功例では、人物の輪郭も黄色い花も自然に融合して両者がくっきりと浮かび上がり、背中側は羽が生えたように花がまっすぐ後ろに伸びています。2枚目の失敗例では、花の背後に暗い山と明るい空が混在しているため翼が生えるべき背中側の輪郭を見事に損ねてしまっています。ということで、それぞれの撮影で明るくすべきところはしっかり明るく、そして暗くするべきところはしっかり暗くするということがこのテクの成否の鍵を握ります。 

成功例。花がくっきり背中から生えている
失敗例。背中から山が生えてる…

 以上、ウィングショットの撮り方でした。ちょっと難しそう?私も最初はちょっと難しかったですが慣れるとけっこうかんたんにできますよ。ぜひ皆さんの多重露光テクニックのレパートリーにこのウィングショットを加えてみてください。これまでのポートレート多重写真の表現に新たな魅力が加わることまちがいなしです!
 
最後に、私のウィングショットの作例を解説と共に紹介させていただきますのでぜひご参考に!
Enjoy your multiple-wingshots!! 

"使徒コナミン”

カメラ:Lomo LC-A+
フィルム:Fuji Velvia100(クロス現像)
背中からひまわりが生えている作例。建物内での撮影のため明るい壁と暗い壁の境目を見つけてそこに立ってもらい撮影。ひまわりは横位置で撮影し地面側はなるべく暗めに。 

"街の擬態"

カメラ:Canon EOS7s
フィルム:Fuji Superia100
背中からビルが生えた作例。人物は逆光で撮り背後は暗めの木陰を利用。ビル群は横位置で撮り下側は日陰の暗めの街並みを配置。

"詩城の旅びと"

カメラ:Canon EOS7
フィルム:LomoChrome Purple XR100-400
人物が横構図での作例。背中側は木の枝や葉で暗部を確保。コスモスはタテ構図で見上げて撮りなるべく下側は暗めに。 

"アーヴィング・ペンの花のように"

カメラ:Canon EOS7
フィルム:Lomography Earl Grey B&W100
モノクロでの作例。背中側は公園内の木々で暗くした。ひまわりは横位置で撮影し地面側は暗めになるよう反逆光で。頭の上まで写ってるけど違和感なくうまくいった例。 

"早春のシルエット"

カメラ:Canon EOS7
フィルム:Lomography Color Negative100
人物が横位置での作例。背中側は公園内の木々を利用。梅の花を横位置で撮り弧を描くように背中側に生やした。人物は完全シルエットのため輪郭のみ現れイメージ的に。


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