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悪夢を見ずに済んでいた。
大雨の中、心療内科に向かった。
私は下着まで雨がしみてとても寒かった。
長靴とツーピースのレインコートは買おうと思った。
バスと電車。
乗る自信はなかったけれど。
バス停までで既に濡れ鼠だったけれど…。
よし、乗れた。
頭がボーッとしていたから、景色とかナントカわからない。
ずっと夢の中みたいだった。
ハッキリとした実感のある記憶ではない。
(抑うつがひどく、今回は嫌だけれど抗うつ剤のリバイバルを己に許さねば死もありうると、抗うつ剤の処方をお願いしに行ったのである)
夕方の抗うつ剤。
こんなにチビッとなのに…
なんだか眠くなる。
眠くなるから、睡眠導入剤を飲み忘れて。
朝を通り越して昼が来る。
睡眠導入剤を飲み忘れるようになってから、身体が重い。
悪夢を見るようになった。
高校に入ってすぐ、私は睡眠導入剤を処方されるようになった。
それからはずっと導入剤で眠っていた。
20ウン年。
見るようになった悪夢。
そこにいたのは中学の頃の悪夢に出てきていた「真っ黒プリン男」だった。
寒天のような…コーヒーゼリーのようなプルプルした真っ黒い人形(ヒトガタ)。
中学の頃、毎日私は夢の中で彼(?)に殺害されていた。
刺殺。
銃殺。
絞殺。
扼殺。
問題は今の彼(?)には彩色されている個体もあり、キチンと私がソレを❝オヤ❞と認識できる点である。
襲い掛かってくる彼(?)はもはや「真っ黒プリン男」ではなく「知ってる人」。
私は夢を見ない。
ずっとそう思っていたかった。
わかっていたよ、違うって。
睡眠導入剤の力で夢が見れなかっただけ。
だけど、それで良かったんだ。
立て続けに悪夢を見て思った。
苦しむような悪夢なら見ないほうがマシ!!
しかし…抗うつ剤を抜いて4年か。
4年ぶりだからこんなに眠くなるのか?
目の前の睡眠導入剤を飲み忘れそうで怖い。
めったに夢を見ないということがとても❝楽だった❞と気づいた。
年に数回しか夢を見ないのは…楽だった。
私は笑顔で会話ができていても、
言葉が出てこなかったり、顔がひきつっていても、
うつ状態かどうかを判断するテストのスコアが常に高いまま変わらない。
常に抑うつ状態らしいのだ。
それが当たり前になっていたなんて…
対人恐怖故に鍛えたフィジカルがブッ潰れたメンタルをカバーしまくってきた感がスゴいぞ…。
記憶なくても生きてるんだもん。
たまに自分の悪運と生命力の強さにゾッとする時がある。
まさか、こんな形で20ウン年ぶりに「真っ黒プリン男」と再会するなんて…。
もう、出てくるなよ!!
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