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掌編小説マガジン 『at』

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掌編小説マガジン at(あっと)。 これまで、ななくさつゆりがwebに投稿した掌編小説を紹介していきます。 とりあえず、100本!
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#情景

情景# 06.「住み良しの浜」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景・追録』から「住み良しの浜」です。 実りを得た後の暮らし。 不変と安寧の陽を浴びつつ微睡む自分。 これが正しい。正しいはず……。 なのに。 心の中で舞う澱のような、何かが。 なりたい自分と、今の自分とのギャップ。 求めていたはずの姿と、たどり着いた先で佇む自身のありよう。 坂の上にある一朶の白い雲を求めて必死に駆け上がった……その先で、果たして自分は何をして過ごしているのでしょうか。 この情景は、書き手側である

情景97.「半透明でおぼろげな」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「半透明でおぼろげな」です。 窓ガラスごしに眺める景色。 窓ガラスが反射して映し出すもの。 重なったときに生まれる情景のこと。 ずいぶんと静かな情景です。 雨が降る日にそれを眺めていただけの、それだけの情景を書き出しています。 ただ、個人的にはかなりお気に入りの情景。 この「半透明でおぼろげな」は、雨が街を潤す景色を眺める、というシーンを描いてみたくて書いたものです。 そうして過ごす時間の、静かでゆったりと

情景133.「光の溜まる場所」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「光の溜まる場所」です。 シンプルに、こういう空間が好き。 胸がすくような。 ここに居たいと思ううちに、時を忘れてしまうような。 夏が来ますね。 ななくさつゆりです。 司馬遼太郎のエッセイ集、『以下、無用のことながら』に収録されているエッセイの中で、司馬遼太郎が博多の承天寺を尋ねた時のものがあります。 いきなり余談ですが、博多の承天寺、ご存知ですか? なにやら、うどん発祥の地、らしいのですが。 具体的に

情景32.「記憶のうるおい。放課後のこと」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「記憶のうるおい。放課後のこと」です。 放課後、日が暮れるまで学校で遊んでいた。 アスレチックに乗って、みんなで暮れていく“遠く”を眺めていた。 瑞々しい記憶。 と、あえて言ってしまいたいところ。 自分の中で息づく思い出の中で、妙にうるおいやハリのある記憶って、ありませんか。 私はあります。 まるで昨日のことのような。 風化した記憶の逆を行くのであれば、潤いのある記憶。 記憶の水槽から取り出して、ぷるん

情景222.「待ち合わせ」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「待ち合わせ」です。 最近は“タイパ”なんて言葉をよく聞くようになったでしょう。 これを書いたころはまだなかったと思うんですけどね。 実際、3日前とかに予定を詰めようとすると結構しんどいものがある……のかな。 当日だとなおさら。(イヤではない) 物理的に可能かどうか以上に、「うぉっ」と思って断ってしまうかもしれません。(べつにイヤということではない) 私の場合、飲みの予定ならいつでもいいのですが、ある程度

情景162.「坪庭に降る寂光」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「坪庭に降る寂光」です。 実、落ちれば育つこの風土。 なんて、格好いいことは言えないけれど、そんな風に思えた夕暮れの庭。 世間では、ぼんやりと庭を眺める、という行為自体が最近はレアというか、あんまりやらなくなっているのかもと感じます。 実家に和室(畳の部屋)があって、そこからちっさいちっさい庭をよく眺めているのですが、普段暮らしている福岡市内のマンションには庭なんてありませんし。 ただ、 こういう風に感

情景202.「湯けむりに夜風」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「湯けむりに夜風」です。 お風呂の情景です。 そっと窓を開けるの好き。風がつめたい。 風邪ひかないようにね。 湯ぶねにどっぷりと浸かりたい “どっぷり”とですよ。 湯がちょっとあふれてざざーって音がして、 「ふへぇー」とかだらしない声が出るような。 そんなどっぷりな浸かり方。 落ちついたら、窓をちょっと開けて外の空気に触れてみたり。 湯冷めと隣り合わせな情景。 みなさんは経験ありますか。 記憶とは、あ

情景58.「ふてぶてしい猫」【掌編小説 at カクヨム】

今回ご紹介する掌編小説は、カクヨム投稿の『あなたが見た情景』から「ふてぶてしい猫」です。 寝てる犬や猫って、たまに目が閉じ切れてないときがありますよね。 たぶんこの子(猫)は、いびきくらいかいてるだろう。 じつはこの猫くん、モデルというか、モチーフとなった猫くんがいます。 近所の行きつけだったカフェに居付いていた半野良の猫くんです。 猫くんの御尊顔はこちら。 X(旧Twitter)もぜひフォローしてくださいね✨ ホントこう、奥まったところに居て、目だけがしかとこちらを