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ガリガリ君の当たりの棒はちょっとだけ太い。
「ガリガリ君の当たりの棒はちょっとだけ太い。」
中1の夏だった。部活の中3の先輩が、最近お気に入りのエロ本について熱っぽく語った後にガリガリ君の当たりについて教えてくれて、ぼくは帰り道に、古坂酒店のアイス売り場に確かめにいった。
袋の上から触って確かめてみる。試しに2袋買ってみたけど、どっちもハズレだった。
翌日、先輩にその話をすると、先輩は今日は一緒に行ってくれるという。10袋ほど触った先輩は、こちらを見て微笑んだ後、ガリガリ君を1袋レジに持っていった。それは、見事に当たりだった。
先輩の話は本当だったんだ。
それからぼくは、毎日部活の帰りに古坂酒店に寄って、ガリガリ君を1袋買った。どれが当たりか、だいたい分かるようになった。
中2の夏。
部活帰りに、古坂酒店の前で友達を待っていると、学校とは違う方向から茉里が歩いてくる。
茉里とは、3月までクラスが一緒だった。
電灯に照らされると、茉里が泣いているのがわかった。
こんな時に、どんな風に接したらいいかわからないけど、
ぼくは茉里に話かけた。
「アイス食べない?」
頷いた彼女にちょっと待ってもらい、アイス売り場で、ガリガリ君を物色する。2袋買って、当たりの方を茉里に渡した。
「はい、ガリガリ君。これ食べて」
そのガリガリ君が当たりだと気付いた頃には、茉里の涙も乾きかけていた。
「ねえ、すごい! これ当たりだよ!
当たり棒、持って帰っていい?
お母さんに自慢したい!」
茉里の帰り道の足取りは軽やかだった。
「この当たり棒でもらえるガリガリ君は、お返しにあげるね。だから、今度またここで待ち合わせしよう」
「お返しなら、ガリガリ君じゃなくて、ハーゲンダッツがいいな」
「それだったら、私も最初からハーゲンダッツを貰いたかったよ」
今では当然のように横にいる君を、ぼくに繋いでくれたのはガリガリ君の当たり棒。ガリガリ君の当たりの棒はちょっとだけ太い。
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