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私たちが見たい世界と、私たちがいる世界。

明日死ぬとして、記してもいいかな、

と思ったある記憶で。

20歳の頃、ちょうど20年前。

ジャマイカに行った。

空港に降り立った時の驚きが、たぶん

あの旅の一番の思い出。

だって、

目の前に拡がっていたのは

ボブ・マーリーの顔が描かれた、手書きの旗だったから。


いろんな国に行ったけど、

あんな衝撃は一度もなかった。

ジャマイカに初めて興味を持ったのは

力士の小錦さんが、BSの番組で
ジャマイカの首都であり、ボブの生まれ故郷で
レゲエの聖地でもあるKingstonを訪れて、

ひたすら荒屋を見ながら歩いてた。

その光景が、何故だかやたら心に焼き付いた。

でも、実際に行ってみたら本気で怖かった。

まぁ、ちゃんとしたホテルじゃなくて、適当なアパートメントを選んだのがそもそも悪かったのはわかってるんだけど…

入り口は鉄格子だったし

鉄格子である理由も、十分に理解できた。

お金がなかったら、仕方ない。

私が行ったモンテゴ・ベイは、ボブが生まれた土地ほど危険ではないにしろ。

それでも、女好きの現地人やら、ビーチで等間隔に立つ、ライフル銃を小脇に抱えた警察官やら、

色目を使う小学生やら。

とにかく、いろんなことが前のめりだったから
それは面食らう。

でも、これまで見た中では最上級の夜景と、

道端で売ってる、名物のジャークチキンと

緑色の、ちょっと信じられないくらい美しい
深海と。

なにより、

どこに行っても流れてるレゲエが。

私の今までと、あたりまえを。

一瞬で変えてくれた。


だけどここまでは、おそらくジャマイカに行った人なら誰でも、人前で言うことだろう。

私が本当の意味で忘れられない情景は

ほとんどケアされていない痩せ細った家畜や、
北米やヨーロッパのそれとは、比較にならないほどお粗末な品揃えのスーパーマーケットや。

白人を心から蔑む現地人の目の

あまりにも強い負のエネルギー。

それと、

You're all so polite and nice,
so you're welcome to join us.

言葉じゃなく、態度で

「日本人は好き」

そう伝えてくれる、
毛先がだいたい腐ったドレッドヘアでいる彼らの

恐ろしいほどに優しい瞳だ。

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