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夏休みはやっぱり短い

相変わらず、太陽が皮膚に刺すように暑くて、サウナのように蒸された空気に呼吸が苦しくなる猛暑が続く。

リモートワークでクーラーの効いた部屋からベランダに干しっぱなしの洗濯物を眺めてふと、日が短くなってきたことを実感する。差し込む西日に急かされるのだ。そろそろ取り込まないと日が沈む。そんな合図だった。

それもそのはず、「夏休み」も中盤に差し掛かっている。

ある日の土曜の朝、オールして帰った日のこと。町を歩いてると水筒を持った野球ユニフォーム着姿の少年に遭遇した。時刻は朝6時。既に汗ばむ気温だった。

こんな朝早くから野球少年は、練習か試合か、グラウンドへ向かう。

私はこれから家に帰るというのに。
少年に追い越されないよう、少し足速に歩いた。

浮腫んだ脚、崩れた顔、汗ばむ体。全てが最悪コンディションの中、家に帰ることだけを考えて必死に歩いた。「健康のために歩こう」と、何駅も手前から降りたせいだ。

途中から「どこでもいい(できることならアイスコーヒーが飲める喫茶店)から座りたい」という気持ちに縛られた。

しかし、朝6時から空いてる喫茶店は当然なかった。あの町から私に与えられた選択肢はマクドナルド、富士そば、松屋の3択だった。

「朝マックもありかもしれない…」と思ったが、全く足が向かわなかったし、店に入ろうとすら思わなかった。

今の私にマックは重い。正直なところ、店内のポテトの油の匂いが苦手だ。長居できない。

きっと今の私は蕎麦かもしれない。富士そばの前に立った。しかし、しばらくして「今は違う」と感じて、気づくと躊躇いもなく松屋に入っていた。

あまり松屋に入ったことがないが、以前入った時も朝だった。私は朝の松屋が好きらしい。

そうだ、また"アレ"にしよう。
朝定食に、小鉢の追加だ。

前回は鮭定食(納豆)にミニカレーを追加した。
今回はソーセージエッグW定食(納豆)にミニカレーだ。納豆とカレーは外せない。

前回、ミニカレーを食べた時に「あ、これ好きな味だ」と少し衝撃を受けたからだ。松屋で牛丼以外のメニューが豊富なのも、人気なのも分かった気がした。

イチローを真似てるわけではないが「朝にカレーを食べるとなんか気分がいい」というのもある。

前回利用した時、食券の買い方に手間取り、後ろの人を待たせた記憶がある。今回はスムーズに買えた。これぞ、2回目の余裕だ。

手慣れた手つきで玄米茶を飲む。キンキンに冷たい玄米茶を期待したが、さほど冷たくなかった。まぁ冷たいものばかり飲んでも…と思うことにした。

定食を受け取る頃には店内に人が結構入っていた。多くは、これから仕事をするであろう人たち。あと、スポーツ新聞を持った近所のおじさん。タオルを頭に巻いた職人さんと思わしき男性は、正しい姿勢でスッと立つ背中を見せながら、どんぶりご飯をかきこんでいた。

「腹が減っては戦はできぬ」まさにそのものだ。その姿はとってもかっこよく、姿勢の悪い私は少し背筋を伸ばした。

「これからお仕事頑張って下さい」と、心の中でつぶやいた。

完食した私は戦に向かう人々を残し、先に店を出た。

店を出ると、また日差しは強くなっていた。
家に着く頃にはもう、汗だくだった。

また、迎えてしまった朝の寄り道で、松屋で朝定食を食べよう。

いや、朝定食を食べるため早起きをしよう。

夏休みのラジオ体操には、ほとんど参加したことがなかったけれど。朝はどうしたって苦手だ。
奮起する頃には夏が終わる。


夏休みはやっぱり短い。


それでは聴いてください。
アイドルネッサンスで「夏の決心」
(原曲:大江千里)



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