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2022年に出会った音楽の話

【2022年に出会った音楽について振り返っているだけの雑文】

 年の瀬が近付くと、今年もそろそろやらないとな、と思うことがある。
 大掃除ではない。「今年出会った曲の振り返り」である。

 音楽好きを自覚してから随分経ったが、昔から、広く浅くいろいろ聴くというよりは、気に入ったものだけを偏執的に聴くタイプである。なので、流行りの有名曲をまったく知らないということも少なくない。こんな時代だというのにサブスクのひとつにも加入していないので、私のiTunesライブラリなど覗いてみようものなら、それはもう趣味の煮凝にこごり状態である。15年も続いているのだから秘伝のタレも同然だ。

 そんなわけで、私が今年出会って射抜かれた音楽を5曲、今年も紹介してみようと思う。あくまで私が個人的に「今年出会った」曲なので、リリース日が古いものがあることはご了承いただきたい。動画を開いて聴いていただければ幸いだし、美味しく召し上がっていただけるなら、更に幸甚である。

 ちなみに昨年版はこちらである。

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⑤ペテルギウス/山本義則

 ある音楽イベントで、一目惚れならぬ一聴き惚れをした。タイトルがわからなかったのでYouTubeでアーティスト名を検索し、それらしいものを聴き比べてこの曲に辿り着いた。我ながら既に充分すぎるほど偏執的である。
 とにかくイントロが格好良くて惹きこまれる。サビの「どうなってんだろう? やっぱりどうかしてんだろう?」という歌詞は、つい一緒に口ずさみたくなる中毒性。

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④Zombies are standing out/ポルノグラフィティ

 ほぼデビューの頃から、ポルノグラフィティを聴きつづけている。2022年、久しぶりに出たフルアルバムに収録されていた楽曲である――が、よく見たら2018年に配信シングルとしてリリースされていたようだ。こんな素晴らしい曲をスルーしてしまっていたとは、不覚。
 YouTubeのコメント欄だったか、「歌い出しの『ゾ』だけで飯が食える」という表現を見つけて激しく頷いてしまった。なんのこっちゃと思われるかもしれないが、聴けば解る。聴いていただいて、一緒に良い飯を食っていただきたい。晴一さんお得意の、物語を感じる歌詞が、また良いのである。

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③kaleido proud fiesta/UNISON SQUARE GARDEN

 個人的な印象だが、ユニゾンの楽曲は春を思わせる。明るい季節の始まり、新しい物語の始まり。そんなバンドが「かくしてまたストーリーは始まる」と歌ってくれると、もうそれだけで嬉しくなってしまうのだから人間単純なものである。
 どこかで聞いたことがあるな、というフレーズがところどころに織り込まれているのが心憎い。これまでの楽曲を飛び回るようになぞって、「羽が無くても心が促す飛び立つような感覚」という歌詞通り、明るい空へ旅立っていける。祝祭の名に相応しい楽曲。

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②空白の車窓から/amazarashi

 2022年の春にリリースされた最新フルアルバムより。
 amazarashiのなにが好きかと問われたら、答えは決まっている。「時に死にたくなるほどの不安や憂鬱であっても否定せずに抱え込んで、なお前を向いている力強さ」である。この曲もまた、未来へ進む不安を抱きながら、それでも前へ進んでいこうとする旅路を歌っている。実をいうと初めから大好きだったという曲ではないのだが、ライブで聴いてうっかり号泣してしまった。力強さは、不安に裏打ちされているからこそ胸に響くのだと思う。
 余談だが、このアルバムに収録されている「戸山団地のレインボー」という曲もめちゃくちゃに好きである。動画が無いので紹介が叶わないのだが、騙されたと思ってぜひ聴いていただきたい。

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①蘭/プピリットパロ

 運命のように出会ってしまった楽曲。
 今年の秋、関西在住の私が東北のライブに2日連続で参戦した。この2連戦というのが、プピリットパロの新曲「蘭」のリリースツアーであった。白状すると、私の本命はゲストバンドのほうだったのだが、この曲に出会えたことは思わぬ大収穫であった。
 自分たちの中でいちばん明るい曲を作りました。みんなの背中を押せれば良い――。ステージ上で明るくそう言って始まったのが、この曲である。シンプルで真っ直ぐなメッセージ、真っ直ぐに響く歌声。だからこそ素直に受け止められた、のかもしれない。
 終盤に、「ちゃんと抱き締め合ったり 繰り返し叫んだり」という歌詞がある。ここ数年で遠ざかってしまった景色である。ライブハウスで仲間と抱き締めあうことも、ステージに向かって歓声をあげることも、気軽にできない世の中になってしまった。けれどきっと、事態は良いほうに向かっている。少なくとも、ライブハウスの扉は再び開かれたのだから。
 だから私は信じている。信じて、聴き続けている。

 今年も、そして来年も。

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