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プロテイン2周目の話

【去年のプロテイン生活について振り返っているだけの雑文】

 暖かくなってきたので、プロテイン生活を再開しようとしている。

 プロテイン。たんぱく質のことである。トレーニングやダイエットに励んでいる人、意識の高そうな人が好んで摂取している、主にパウダータイプのサプリメントである。我ながら雑な偏見である。

 ステレオタイプな偏見を携えているとおり、私はトレーニングにもダイエットにも励んでいなければ意識も低い、ただの一般庶民である。そんな庶民である私が、なぜプロテインなどという異世界の習慣に手を出そうと思ったのか。
 簡単である。栄養補給のためである。

 私は痩せている。
 ここ数年のBMIはだいたい18前後をうろついているし、大人になってから20を超えた記憶が無い。物心ついたときからダイエットというものに縁がなく、かといって極端に小食だというわけでもない。肉も揚げ物も甘いものも大好きだ。単に太れない体質なのである。
 羨ましがられることもあるのだが、ものごとには限度がある。とにかく疲れやすいし、似合う服も限られる。
 例えば私は「フリーサイズのボトムス」というやつを信用していない。ベルトで締めるにも限界があるし、余った部分が長すぎるとみっともない。Sサイズでも場合によっては大きい。しかしXSだと骨盤の幅で苦しい。八方塞がりである。結果、ゴムウエストとワンピースばかりが増えていく。

 付き合いの長い友人は「あなたにとっての適正体重なのだろうから気にしすぎなくてもよいのではないか」などと言ってくれるのだが、そうはいっても不安である。なにしろ私の体重は、緩やかに、ひどく緩やかに――減っていたのだから。
 このままだと、80年後にはBMIがゼロになる計算だ。いや、それはもちろん冗談なのだが、計算上は冗談ではない。ただでさえ体重の足りない人間に、下降トレンドは笑えない。

 私はさすがに焦りはじめた。
 なにごとも極端はいけない。痩せすぎは却って健康に悪いというのは現代の常識である。少しでも体重を増やさなければ。
 しかしだからといって、糖と脂をもりもり摂取すれば良いという問題でもない。私はぶくぶく肥え太りたいのではなく、健康的に体重を増やしたいのだ。この違いは重要である。

 思いついたのが、「とりあえずたんぱく質を摂ろう」であった。
 三大栄養素といえば、糖質・脂質・たんぱく質、である。糖質と脂質は恐らく間に合っている。ならばたんぱく質である。現代人は不足しがちだともいうから、積極的に摂取して悪いことはないだろう。

 手始めに、意識して卵を食べることにした。レンジで作れる温泉卵メーカーだの、ひとつだけ作れるゆで卵メーカーだの、オーブントースターに突っ込んだらパンと一緒に目玉焼きが焼けるプレートだの、世の中には便利なものがいろいろある。料理の苦手な私でも、日々の食事に卵をひとつ追加することならできそうだった。

 しかし。
 昨今のあれこれで、卵がとにかく高い。誰だ、卵は物価の優等生だと言っていたのは。
 加えて、卵は生ものである。一人暮らしの私にとって、1パック10個の卵というのは絶妙なラインの数である。こつこつ食べれば難なく消費できるのだが、少し気を抜くと賞味期限を切らしてしまう。週末で旅行に行こうものならあっという間に計算が狂う。ぎりぎりの戦いである。かといって、4個や6個のパックは割高だ。

 そして私は考えた。
 そうだ、プロテインとやらを試してみるか――。
 たんぱく質をダイレクトに摂取しようという作戦である。

 そうと決まれば調べるのみである。
 なんでも、プロテインとひとくちにいっても種類があるらしい。牛乳由来のホエイと、大豆由来のソイ。牛乳由来にはカゼインプロテインというものもあるらしいが、選択肢が多くないので省いて良さそうだ。

 筋肉をつけたいならホエイ、ダイエット目的ならソイがおすすめらしい。それならと、試しにホエイを飲んでみた。私の目的は置き換えダイエットの類ではなく、単純に栄養の摂取なのである。
 何回か飲んでみたのだが、やめてしまった。どうも体質に合わないらしい。なんだか胃にもたれるようで気分が悪くなってしまった。
 諦めても良かったのだが、せっかくなのでソイを試してみることにした。これで駄目ならおとなしく卵を食べつづけるのみである。

 結論から言うと、ソイプロテイン、なかなか良かった。胃もたれもしないし、飲みやすいし、適度な満足感がある。

 水で溶かしたり牛乳で溶かしたりといろいろ試してみたのだが、水と牛乳を半々で使うのが飲みやすくて良かった。牛乳の栄養も摂れるなら一石二鳥である。
 プロテインと、水と、牛乳。それから氷を2つほど。しっかりシェイクして、お風呂上がりに飲む。そういうルーティンになった。
 巧くいった。最初に買った1kgの袋を無事に飲みきり、そのあとも何袋かを完食した。毎日必ず飲んでいたというわけではないのだが、逆にその程度のゆるさだったから続けられたともいえる。なにごとも、縛りすぎないほうが巧くいく。そんな気がする。

 肝心の体重はというと、減らなくなった。そして少し増えた。
 結果としては及第点である。

 味を変えながら飲み続けていたのだが、冬の訪れとともに、一度お休みすることにした。単純に、毎晩冷たいものを飲むのは辛いという判断である。健康のためとはいえ、無理してまでやることではない。
 冬の間、普通に過ごした。夏と違って食欲の落ちるような気候ではないので、さすがにがりがりと痩せていくようなことはないだろう。
 鍋を作るときには、心持ち、多めに肉を入れるようにした。雑炊は必ず卵でとじた。それくらいである。

 寒くなり、年が暮れ、年が明け、桜が咲いた。
 春である。

 ――そうだ。プロテイン、再開しよう。

 楽天お買い物マラソンの通知を見て、私は半年ぶりに、プロテインを購入することにした。そろそろ、氷入りの飲み物が苦にならない季節である。
 去年と違う味を試してみることにした。
 冬の間500mLパックしか買わなかった牛乳の、1Lパックを久しぶりに買った。ついでに卵も買った。

 これは、プロテイン生活2周目を始めようとしている私の、挨拶のような記録である。「あとがき」であり「はじめに」である。

 さて、今年もぼちぼちやるとしますか。

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