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スティック掃除機に買い替えた話

【掃除機をキャニスター型からスティック型に買い替えたきっかけを語っているだけの雑文】

 もっとも使う掃除道具は、と問われたら、なんと答えるだろうか。
 私は断然、「クイックルワイパー」である。

 一人暮らしを始めてこのかた、ずっとクイックルワイパーを愛用している。音がしないので深夜早朝問題なし、狭い隙間にもするっと入る、シートを付け替えればいつでも清潔、軽いので扱いやすい、扱いやすいから面倒臭くない。良いことばかりである。
 愛用しすぎて気づいたら本体が12年ものになっていたので、先日ようやく買い替えた。真っ白で清潔感も復活、ますます愛用したくなろうというものである。

 翻って、掃除機である。

 掃除機を持っていないわけではない。だが、我が家に長らく鎮座していたのは、キャニスター掃除機だった。
 キャニスター。本体にキャスターがついていて、ヘッドと本体がホースで繋がっていて、ごろごろ転がして使う、あれである。一人暮らしを始めて最初に暮らした小さな1Kで、私はキャニスター掃除機を使っていた。たぶん、当時はキャニスター掃除機のほうが一般的だったか、そうでなければスティック掃除機が高価だったはずである。

 取り回しやすいクイックルワイパーと、大仰なキャニスター掃除機。
 狭い1Kと、面倒臭がりの私。
 当然ながら、掃除機の出番はほとんどなかった。

 紙パックは数回しか交換した記憶がない。それも、「キッチンにぶちまけてしまったお米の掃除」という大事故のあとだとか、そういうレベルである。紙パックの中で埃だらけになっているお米を目にしたときの罪悪感たるや並大抵ではなかったのだが、それはいま本筋ではない。

 もちろん、掃除機を使わなかったわけではない。ベッド下に収納している季節家電を引っ張り出すときには必ず掃除機を掛けたし、友人が遊びに来るときにも掃除機を掛けた。
 しかし裏を返せば、その程度にしか使わなかった、ともいう。

 さて。
 その小さな1Kから、1LDKに引っ越した。去年の話である。

 床面積が1.5倍以上になり、これで掃除機の出番も増えるかと思われた――が、相変わらず、私はせっせとクイックルワイパーを使いつづけていた。なんなら毎朝クイックルワイパーを掛けるようになり、クイックルワイパーの使用頻度が増えた。なんでやねん。

 加えて、掃除機を積極的に使わない理由ができてしまった。
 キャニスター掃除機には大きな車輪がついており、床をごろごろと動いていく。引っ越したばかりの綺麗な床に傷がついてしまうのではないか、という恐れが、心配性の頭を掠めるようになった。

 そして私は考えた。
 基本的に、モノは壊れるまで使うのがモットーである。だから掃除機も、壊れたときには次こそスティック型に買い替えよう、というくらいに思っていた。我が家の掃除機は壊れる気配も無く元気だし、古くはあるが小綺麗である。というより稼働回数が少ないのだから当然だ。
 が、しかし。かの掃除機は、私にとっては重くて取り回しづらく、おまけに床を傷つけるのが怖くて気軽に使えない、という代物なのである。
 これはもう、逆にもったいないのではないか。使わないのに持っているだけというのは。

 腹を括ることにした。
 小型のスティック掃除機を購入し、長年連れ添ったキャニスター掃除機を手放したのである。

 結論、大正解だった。
 なんと、この私が毎週末に掃除機を掛けるようになった。なんなら布団に掃除機を掛ける頻度まで増えた。快挙である。あのキャニスター氏は、数ヶ月に1度の重労働しか出番がなかったというのに。

 軽くて取り回しやすいというのはやはり大きかった。すいすい掃除ができるし、大きな本体も煩わしいホースも長いコードも無いのでどこへでも持っていける。
 調子に乗って、ベランダの掃除にまで持ち出した。ノズルの先にトイレットペーパーの芯を貼り付けると、外でも気兼ねなく使えてしまうのだ。埃や髪の毛や洗濯物の糸くずなど、ベランダは案外汚れているものである。掃いても良いのだが、巧く取りきれないのが地味にストレスだった。掃除機で吸ってしまえるならそのほうが楽である。

 使うまでのアクションが少なくて済むのも良かった。キャニスター型は、引っ張り出して、ヘッドを伸ばして、ホースをほどいて、コンセントを挿して、という準備が必要なのだが、スティック型であれば、取り上げてスイッチを入れるだけで良い。これである。ズボラに必要なのは、この、クイックルワイパー並みの手軽さだったのである。

 部屋の隅に、クイックルワイパーとスティック掃除機が並んでいる。
 毎朝の掃除は、クイックルワイパーでさっと済ませる。週に一度は、掃除機でしっかり綺麗にする。そういうルーティンが、いつのまにかできあがっていた。キャニスター氏が聞いたら嫉妬間違いなしである。

 弘法大師にはなれないのだから、筆を選ぶに越したことはない。
 私のお掃除能力が上がったかどうかはさておき、自宅の綺麗さは少しだけ上がったと思う。そういうことにしておこう。

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