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緊迫するパレスチナ情勢と西欧への不信とトルコの怒り

津田大介氏が11月14日に配信した、「緊迫するパレスチナ情勢 西欧への不信とトルコの怒り」を視聴した。

中東問題に詳しい同志社大学院教授内藤正典氏による解説でした。これまで、様々な専門家が語っていた視点とは異なるものであった。それは、下記のような点です。

  • テロ組織かテロ組織でないというのは、被害を受けた側から判断する。今回ハマスが音楽フェスティバルを襲撃したり拉致したりという行為は明らかにテロと見なす。

  • と同時に、イスラエルが女性や子どもなどの非戦闘員、病院、救急車の車列を攻撃しているのはテロ行為といえる。戦争と称するには、余りにも規模が違いすぎて非対称である。

  • さらに、戦争時といえども、ジュネーブ条約によって攻撃してはならない所が決められているが、それを守っていないのは、テロ国家だといえる。

  • パレスチナ難民という言葉が、跳びかっているが、ガザ地区にいる人々は、シリヤやミャンマーから他国に逃れた難民とは意味が違う。

  • 自国から他国に逃れた難民の場合は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)という組織によって保護と支援されている。

  • ところが、ガザ地区に逃げ込んだ難民たちは、あくまでパレスチナ内での移動なので、UNHCRの役割外となる仕組みになっている。そのため、国際問題にならずに、無視され続けてきた。

  • イスラエルにとっては、パレスチナ人がガザ地区から離れないのは、女性や子たちの明らかにハマス側ではない人々でも反抗勢力と見なして、攻撃してもかまわないという理屈となる。これを、国際社会は追認してきた。

  • リメンバランスデーという第一次世界大戦の戦没者を追悼する日に、ロンドンで反イスラエル勢力によるデモがあった。

  • 何故、こうした日にデモがあったのかが、ほとんど報じられていなかった。

  • 第一次世界大戦最中の1917年に、イギリス政府は、ユダヤ人にナショナルホーム(国家とは明確に表現していない)を与えるという希望を持たせており、これがリメンバランスデーと関係してくる。

  • 第二次世界大戦後の1947年にパレスチナ人に同意も得ずに、イスラエル国の建国を認めたことが発端となって、現在のハマスーイスラエ戦争に至っている。

  • イスラム教徒は、先行していたユダヤ教に対して、リスペクトこそすれ、怒りや憎しみを抱いていない人々がほとんどである。そこが、キリスト教とは違うと強調している。

  • 湾岸戦争のとき、イラクに向かってミサイル攻撃している場面がテレビでも報じられていた。これは、非戦闘員である女性や子どもたちへも向けられているので、多くのアラブの人々は、これに対して、憤激していた。

  • 今回、欧米や他国で起こっている反イスラエル運動は、反ユダヤではなくて、非戦闘員を攻撃するなという意味あいが強い。だから、ユダヤ教とイスラム教の宗教的な争いや、アラブ人とユダヤ人という民族間の争いだと言うのは間違いだ。

  • イギリスやドイツの政府が、反イスラエルデモを制圧しているのは、このようなアラブ人の怒りの真意を理解していないからである。

  • トルコのエルドアン大統領は、イスラエルに対して、テロ国家とは名づけていないが、国家として形をなしていないと激しく抗議していた。

  • ホロコースト以前から、ヨーロッパ全土でユダヤ人を迫害や殺戮を繰り返してきたというというモチベーションには反ユダヤ主義というのがある。これは、多分、キリスト教信者たちは、ユダヤ人によってイエスが十字架で処刑されたという怨みからくるものだと思われる。福音書には、そう解釈できるものがある。

  • ヨーロッパ人には、こうした深い負い目があるために、イスラエルが、パレスチナ人に対して、いくら残虐な行為をしても、黙認、追認してしまう。これをを改めない限り、いつまでも争いは続く。

津田氏が発言していたように、イスラエルの行為は、南アフリカでもあったアパルトヘイトと認定すれば、国際的にも、ガザ地区に閉じ込められている人々を救う手立てがあるのでは、と考えられうる。

当然ヨーロッパの人々もそれを考えているかも知れないが、何しろどの政府も強行な手段を取るので、反ユダヤ主義だと言われて、逮捕されてしまうという、恐怖心が勝ってしまい、ただただフリージングするしかないのだろう。

日本政府は、そうした負い目もないし、アラブとは石油や天然ガスの供給先であり紛争するネタもない、イスラエルとは防衛設備の監視システムの供給先という関係でもある。だから、仲介役を務める資格は十二分にある。しかしながら。米国ベッタリの日本政府には、それは無理だ。

日本もダメダメだが、西欧も、ロシアーウクライナではウクライナを支持し、ハマスーイスラエルではイスラエルを支持するという具合で、完全なダブルスタンダードとなっていて、倫理的にも破綻しているので、日本のことを嘲笑はできない。

そうした中で、トルコのエルドアン大統領だけが、やたらとマトモな発言していて目立っている。「西欧に対して、あなたたちは負い目があるだろうが、我々には負い目なんかない」と批判している。実際、トルコはカタールと同様にガザ地区の支援している。支援しているのは、世界でもこの2国だけだ。

ハマスの襲撃以前のアラブ諸国はパレスチナについては、及び腰であった。経済的にも豊かになってきたので、西欧やイスラエルに接近していて、どちらかというとパレスチナを無視していた面があった。だが、さすがに、今回の過激すぎるイスラエルの攻撃を目の当たりにしたのでは、パレスチナ擁護せざるをえないのだろう。

トルコは、NATO加盟国でもあり、もしトルコとイスラエルが戦争状態とななれば、西欧のNATO諸国は、トルコ側を応援する側となるというマンガみたいなことになる。終わりの見えない状態ですが、唯一、エルドアン大統領とカタールが仲介をして、とにもかくにも、ハマスーイスラエル双方が停戦に合意するという道筋しかなさそうだ。

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