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量子力学で生命の謎を解く

ニュートンは、リンゴが木から落ちるという現象に不思議さを感じる一方で、そもそもリンゴが作られるというまったく理解不可能な難問には、興味を示さなかったのは、何故だろうか?

その理由かもしれない要因が一つあると、物理学者ジム・アル=カリーリは述べる。

一 七 世紀 には もっぱら、 次 の よう に 考え られ て い た の だ。 生物 を 含め すべて の 物体の物理的な振る舞いは物理法則で説明できるかもしれないが、生物の体内での奇妙な振る舞い(リンゴがどうやって実るか)生命力(エラン・ヴィタール)によって引き起こされており、その力は、神を認めないどんな方程式でも理解できない超自然的な源からあふれ出している。

ジム・アル=カリーリ; ジョンジョー・マクファデン. 量子力学で
生命の謎を解く (p.114). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版.


しかし、その後の生物学、遺伝学、生化学、分子生物学の発展によって生気論は否定された。

2007年4月、MITで量子情報理論というかなり深遠な分野を研究する物理学者と数学者のグループの一人が、植物は「量子コンピュータ」であると、ほのめかした。

現物の量子コンピュータですら、動作環境が厳しいのに、自然環境中の植物が量子コンピュータであるわけがないと、当初は笑いもの扱いされていたが、検証してみた結果、正しいことが分かった。

つまり、植物は、量子コンピュータのような機能によって、光合成しているというのである。

植物のなかでおこなわれている光合成と我々ヒトの細胞のなかでおこなわれている呼吸(食料を燃やすこと)とを比べると、動物と植物は皮をめくればそんなに違わないことが分かる。

根本的な違いは、どこから生命の基本構成部品を調達しているかだ。

どちらも炭素を必要とするが、植物はそれを空気から得ている一方我々はその植物などの有機源から炭素を得ている。

どちらも生体分子を組み立てるには電子が必要だが、我々は有機分子を燃やして電子を取り出しているのに対し、植物は光を使って水を燃やして電子を取り出している。

エネルギーをどちらも必要とするが、我々は、食料から得た高エネルギー電子が呼吸鎖のエネルギーの斜面を下り落ちることでエネルギーを得ているのに対し、植物は太陽光の光子のエネルギーを取り出している。

そしてこのどちらのプロセスにも、量子の法則に支配された素粒子の運動が関係している。生命には量子プロセスを利用することで生き長らえているらしい、と言う。

しかしながら、意識を説明するのに実際に量子力学が必要であるという証拠はまったくない。

生命に欠かせない多くの現象に関係していることが分かっている量子力学の奇妙な性質が、生命のもっとも謎めいた産物である意識にはまったく関係しないなどということが、はたして考えられうるだろうか?

この判断は、読者に任せると、述べている。


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