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オススメの一冊なんて無いよ、という話

仕事やプライベートで出会ったばかりの人と世間話をしていると、会話の流れで「趣味は何ですか」と聞かれる事がある。
「料理と読書です」と正直に答えると、2回に1回くらいの割合で「オススメの一冊はなんですか?」と聞かれることがある(今日、実際に聞かれた)。
これ、ものすごく困る質問だ。

だって、会ったばかりでよく知らない人に、何を薦めたらしっくりくるのだろう。
普段の読書習慣やテーマの好き嫌いもよくわからないし、心の状態によっては良かれと思って薦めたものが逆効果になる事だってある。誰が読んでもそこそこ「いい話だな」と思える無難な本を挙げるのが良いのだろうけど「この程度か」と思われるのも癪だ。

ちなみにこれまでに一番イラッと来たのは「自分の人生を変えるような一冊を教えてください」という質問。相手はインターンで来た大学生だった。お前の人生になんて興味ねーよ、と言いたいのをグッと我慢し「戦争と平和」を勧めておいた。きっと彼は本を買ってもいないだろう。

「私は海外文学、特に南北のアメリカ文学が好きなんですけど、翻訳小説は読みますか?」と聞いたところ、外国人の名前が覚えられないので…と、今日のところは無難にやり過ごすことができた。まあ、お互いに大人だからね。

たかが本でしょ?と思うなかれ。私にとって読書というのは(料理と同じく)真剣勝負なのだ。胸を打つ一冊に出会えた時にはものすごく嬉しくなるし、中身の薄いものが持ち上げられているのを見て無性に腹が立つ時もある。

本を読んで感動したいのであれば、もっと言えば人生を変える一冊に出会いたいのであれば、とにかく真摯に本に向かうべきだ。人に聞いて済まそうなんて、コスパは良いかもしれないがハッキリ言ってズルい。

手当たり次第に目についた本を読んだり、図書館でじっくりと一つのテーマを深掘りするなり。方法はいくらでもある。

読書は何かを与えてくれるものではなく、掴み取りに行くもの。静かに座っているようで、心の中はメラメラと燃えている、そんな読書の時間が私は好きだ。

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