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読書の記憶〜内田百閒 件(くだん)

先週から謎のめまいと筋肉痛に襲われ、数日の静養を強いられた。熱や喉の痛みはないけれど、ついに我が家にも流行りのアレが来たか…。

目まいのせいで本が読めないがじっとしているのもまたツラい…という事で、手に取ったのが絵本。去年、本屋で見かけて「誰かに買われる前に」と急いで買い占めたこの3冊(未読だった)を枕元に置き、つらつらと眺めていた。

特に好きなのが内田百閒の「件(くだん)」。学生の時に国語のテストで見かけ、図書館で続きを探して読んだのが出会いだったと思う。

実は私には「見たい夢を見られる」という特技があって、子どもの頃は寝る前に読んだ本やテレビの続きをよく夢で見ていた。「それは熟睡できていない証拠」と指摘されてから特技とも言えなくなってしまったけれど。

内田百閒の作品の描く物語はそんな夢の世界。
件(くだん)は目覚めると頭は人間・体は獣に変身していた内田百閒が主人公。夢の中で目覚め、ぼんやりと美しい空を眺めていると自分の体が毛物になっている事に気づく。
困った困った…と言うわりにウロウロするだけで何もしない。むしろ周りを囲んでやいのやいの言う倅や友人の言葉に振り回され、仕舞いには殺されそうになるというダメっぷり。

夢の話なのだからいきなり「○○は〜」と主語から始まりそうなのにそうならない。この辺が日本っぽい。構成的には漢詩っぽいと言うべきか。夢の中で流されるだけ流されて、最後はこんなページで終わる。

終電なのに寝過ごして終点まで来ちゃったじゃないか、オイ。


頭と体は首で繋がっているはずなのだが、時々、頭だけ別の動きをされる。
いつもの自分とは違う何かになったはずなのに、夢から覚めると日常の延長線上にいる。そんな時は夢に戻ってやり直したくもなるけど、そうでない時も多々ある。

目が覚めて、あ〜夢で良かった、とこの惚けるオジサン(体は獣だけど)。
自分で行動して道を切り開くだけが生き方じゃないさ、と全身で語っているこの感じ。
どこまでも愛おしい百鬼センセイなのである。

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