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HLAB Conversation #28 不確実な時代におけるキャリアの歩み方

HLAB Conversation とは
HLABにまつわるゲストをお呼びして開催しているカジュアルに語り合う学びと出会いの場です。「自分の知らない新しい世界へ」の扉となるべく、毎回様々な分野からゲストをお招きしています。
HLABでは毎月 HLAB Conversation を行ってきましたが、COVID-19 の影響により、今月も引き続き オンラインでの開催となりました。

今回のHLAB Conversationのテーマは「不確実な時代におけるキャリアの歩み方」。世界的な感染症の蔓延により「不確実性」がより高まった時代。行く先の見えない中でこれから私たちはどのようなキャリアを歩んでいけばいいのか、転職や副業・子育てなど4人ゲストのみなさんのそれぞれのご経験を踏まえつつお話ししていただきました。
第一部のパネルディスカッションと第二部のグループディスカッションのうち、第一部のみの公開となります。

ゲスト紹介
市川純司さん

本田技研工業株式会社にて人事・人材開発・海外プロジェクト・国内外の採用を経験。その後、株式会社ベネッセホールディングスにて海外人事・幼児教育事業BPを経て、2017年1月パナソニック株式会社に入社。大学生向けキャリア支援プログラムを立ち上げ、1,000名以上の学生にワークショップを実施。現在、戦略人材採用の企画・チームリード含め、多くの部署を兼務。
若竹淳平さん
株式会社リクルートにて、営業、採用、コンサル、戦略立案のマネジャーやグループ会社の責任者などを経てパナソニック株式会社に入社。未来に向けた採用手法や育成、処遇などの企画・運用を担当。
林志洋さん
在学中の2011年にNPO法人Bizjapanを立ち上げ、東京大学公共政策大学院を卒業。A.T.カーニー、スタートアップ支援組織「EDGEof」の立ち上げを経て、2020年より長野県の人口1万人の自治体小布施町に移住し、総合政策推進専門官として持続可能な街づくりに取り組みながら、HLABの下北沢居住型教育施設のプログラム開発にも携わる。
河合道雄さん
2011年~ 2014年の HLAB 実行委員。新卒で入社した株式会社 LITALICO で発達が気になる親子向けポータルサイト「発達ナビ」の企業タイアップ案件の企画に従事。HLABでは下北沢居住型教育施設の広報を担当。学部時代にHLABの立ち上げ参加ののち、大学院在学中には米国 HarvardX にてオンライン教材制作や、「トビタテ!留学 JAPAN」の効果測定にも携わる。


感情や価値観の揺さぶりに従ってやりたいことをやることの大切さ

まず話題になったのは、キャリア構築の考え方でした。パナソニック株式会社に中途で入社し、現在は採用・人事だけでなく「モビリティソリューション部門」での事業開発も担当されている若竹さんは、自身のことを「長期的なキャリア設計をするタイプではない」と話します。

若竹:期待の答えではないかもしれませんが、大きな目標を立ててそれに向かって積み上げる「キャリアアンカー」というタイプではないんです。どちらかというと「キャリアドラフト」といわれる、目の前のことを一生懸命やるタイプなんですよね。一つ一つ、目の前のことに一生懸命に取り組むと1年〜1年半のスパンで飽きてくる。飽きがくるたびに、その期間で何ができるようになったのか確認し、次のステップへと進む、というキャリアの進め方をしてきましたね。

同じく中途でパナソニックに入社し、前職から一貫して人事を担当していらっしゃった市川さんは、

市川:不確実な時代においては、大きな山を成し遂げる、という歩み方ではなく、大きなフィールドの中で自分を浮遊点と捉え、自分が興味があるものに対してその場その場で取り組んでいくことが重要になると思います。

として、「自分が興味があるものに対して感じることと価値観の揺さぶりに従ってやりたいことを見つけ、とりあえずやってみる」という点に同意しつつ、自らの新卒入社や転職における意思決定の経験を語りました。

またチャレンジすることの大切さを、HLABと株式会社LITALICOの「二足のわらじ」で働く河合さんは、「留学によって成長する学生と成長しない学生の差」という観点から説明します。

河合:修士論文のために実施した留学の成果についてのインタビューから見えてきたこととして、留学先でカルチャーショックを経験したのちに、その後に自分の関心のあるテーマで新しい取り組みをしているかどうかで「留学を通して成長した」と感じているかが左右されている事例を多く見ました。このことから、留学においても自分のテーマを持ちチャレンジすることの重要さが示唆されます。加えて、チャレンジをたくさんしている人は、チャレンジのハードルが低くなると思われがちですが、新しい環境に適応する難しさは誰にとっても共通であり、回数を重ねるごとに変わるものでもありません。そこで困難な状況であっても、そこから抜けられることをわかっている、「挑戦慣れしているか」が非常に大きな違いを生むのではないでしょうか。ですので、新しい環境にとびこむことの不安は誰しも共通ですので、思い切って挑戦することで、うまくいくこともあるし、たとえうまくいかなくても挑戦慣れにつながるので、どんどん挑戦するのが良いのではないでしょうか。でそこでのチャレンジに耐え抜けるかどうかが判断の基準になるのではないでしょうか。

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「心のコンパス」を磨くには

とはいえ、実践するのは簡単ではありません。どうすれば実際に決断・行動することができるのだろうか、という問いに。河合さんからは「感性を研ぎ澄ますことの大切さ」という話がありました。


河合:論理的に考えて「やるべきこと」だと思っても、心からやりたいことかかどうかは別です。実際にやってみないとわからないので、少しずつでもやりたいことをやってみることが大切だと思います。そして、その判断をしているのは「感性」の部分。旅行にいく、何もしない日を作る、心揺さぶられる経験をする、などを日頃から心がけることで、その感覚を研ぎ澄ませることが大事だと考えています。


同様に、HLABスタッフとして下北沢居住型教育施設のプログラム開発も行いつつ、長野県小布施町に今春移住し、総合政策推進専門官として働いている林さんも「自分の心のコンパスの精度を上げておくのが大事」と語ります。

もともと地域に移住する予定はなく、3ヶ月くらいコロナの自粛で自宅にこもっていた時に、小布施に来ないかと誘われたのをきっかけに思い切って移住を決断した林さん。行政や地域創生の仕事は、林さんがこれまで取り組んでいたスタートアップ支援との共通点が限定的だと思っていましたが、実際は「組織のレイヤーの少なさ」、「すぐに意思決定できる機動力」「限られた資源の中で、キラリと光るものを見つけて磨くこと」など共通項が多くあることから、今までの仕事の延長線上にあり、これまでの経験を存分に活かせる、と感じることも多いと言います。

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VUCAの時代において自分を「何者」か定義するということ

イベント終盤、「VUCA」(Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をとった語)と呼ばれるような先の見えない時代において、どのようなスタンスで生きていけばよいか、という話題について、市川さんは以下のようにアドバイスをくれました。

市川:VUCAとか言われていますが、つまり「未来をこうだと言える人はいない」ということです。「大学も会社も何かを約束することはできない」ときに、「やってみること」で能力を広げていき、何かが起こることを予期しながら楽観的に柔軟にやり方を変えていくスタンスが、ここにいる皆さんに共通していることだと思います。

続けて林さんは全く環境が異なる仕事に飛び込む上で、「自分は何者であるかという定義付け」の大切さを強調します。

:結局、大事なのは「私はこんな人間である」と言えることです。それは、これまでやってきたことや、その中で見つけてきた自分のやりたいこと、やってみて学んだことから形成されるので、正解がない中で場数を踏むことが大切です。私がHLABで開発しているプログラムも「アクションに起こす」ことを実際にやってもらうことであり、下北沢でも小布施やっている「街づくり」は最高に適した環境だと思っています。

その上で、市川さんも自己認識の大切さについて説明します。

市川:激動する時代に、「唯一生き残ることができるものは、変化するものである」と言われますが、自分のことがわかっていないと変化もできません。客観性をもって自己を認識することが必要です。変わる前の自分を認識するのが大切ですね。

人事や教育、スタートアップ支援や地方創生といった、全く異なる分野でそれぞれ活躍される4名のゲストでしたが、それぞれの人生の意思決定における信念や基準に共通項があるということが、非常に興味深かったです。主体的な進路選択においては、戦略やスキルセットも重要ではありますが、常に自分の直観を研ぎ澄まし、心がワクワクする方に飛び込む勇気を持てるようにしておくこと、そして変化する環境に合わせて柔軟に自分自身が変わり続けることが大切だということが伝わってくるConversationでした。参加してくださった学生・社会人の方々からも、様々な質問が飛び交う、熱気に満ちあふれる会となり、感謝しています。ご登壇・ご参加、どうもありがとうございました!

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