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ボール奪取ではFC東京が優位、しかし。:いまさらレビュー 川崎フロンターレ対FC東京(10月2日)

 昨日に続いて今日も「いまさらマッチレビュー」。これも1ヶ月以上すぎてしまった多摩川クラシコ。

 試合を振り返ると、結果は1-0でフロンターレが勝利。ACL敗退後の「勝負の5連戦」の最後の試合を勝ちきった。ただ、決定機は非常に数少なく、ワンチャンスをダミアンが決めた形。一方、FC東京はいくつも決定機を作りながらも、最後はフロンターレのディフェンスが踏ん張っての1-0だ。


ボール奪取ではFC東京がはっきりと優位

 ではこの試合をボール奪取マップで見てみよう。

 まずはフロンターレの全体。

 ここでいうボール奪取は、文字通り相手からのボールを奪うこと。ただし、そのままタッチに蹴り出したり、アバウトなクリアは対象とはしない。キーパーがペナルティエリア内でボールを処理した場合も含まない。青字はボール奪取がシュートにつながったもの。その下にカッコ付で表示されている数字はシュートまでのパスの数。赤字は得点に至ったボール奪取。

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 合計55。フロンターレの平均は70弱だから。かなり少ない。ただしうち敵陣は27で割合にすると49.1%。平均は40%程度だから、敵陣ボール奪取率は高い。ただしシュートにつながったものはわずかに3(5.5%)。これは今年の中で一番低い数字だ。このあたりから、この試合での苦戦が読み取れる。

 ではFC東京はどうか。

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 合計62でフロンターレをはっきりと上回った。ただしうち敵陣ボール奪取は18(29.0%)で少なめ。一方シュートにつながったボール奪取は8。割合に直すと12.9%でかなり高くなる。この試合に限って言えばフロンターレを大幅に上回る数字だ。

 ここからこの試合のFC東京のゲームプランがはっきりする。構えながらしっかりとした4-4-2のブロックを敷き、攻撃を止める。止めたら闇雲にクリアするのではなくて、前線につないでカウンターにする、と言う形だ。FC東京の基本的な戦い方そのもの、と言うことでもある。

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後半押し込まれたフロンターレ

 フロンターレのボール奪取を前半と後半に分けてみよう。

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 前半と後半を分けてみると、後半の方がボール奪取位置が下がっているのがわかる。特に自陣ペナルティエリア付近の右サイドでのボール奪取が多い。つまりそこまで攻め込まれていたと言うことだ。

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 この試合の「マン・オブ・ザ・マッチ」と言うべき「あんたが大賞」はジェジエウ。ジェジエウを含む最終ラインの4人のボール奪取位置だけを抜き出してみるとこうなる。

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 面白いのは、ハーフラインやや敵陣よりと、ペナルティエリア直前、ちょうどFC東京がアタッキングサードに入るあたりのボール奪取が多いことだ。敵陣でのボール奪取は、攻め込んでいるときのボールの回収をきちんと最終ラインでもできていることを表す。

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 自陣ペナルティエリア付近でのボール奪取は、カウンターへの対処によるものだろう。このあたりからも、この試合のFC東京とフロンターレの戦い方をはっきり読み取ることができる。

ジェジエウ大活躍

最後に、個人別ボール奪取。

 ジェジエウ:11
 橘田:9
 車屋:7
 山根:5
 脇坂:4
 山村:3
 登里:3
 ダミアン:3
 旗手:2
 家長:2
 マルシーニョ:2
 谷口:1
 知念:1
 ソンリョン:1
 小林:1

この試合大活躍したジェジエウが納得の1位。

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また、進境著しい橘田が2位。

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 あとは興味深いのはダミアンの3だろうか。谷口がわずかに1なのは途中出場だから。

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 この試合、ボール奪取関係のデータを見ると明らかにFC東京が優位にあった。

 それでもフロンターレが勝てたのは、ダミアンのストライカーとしての力と、再三の決定的なピンチを防ぎ続けたディフェンス。特にセンターバックのジェジエウと車屋紳太郎の力。

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 こういう試合でもきちんと勝ち切れたことが、優勝につながったわけだし、こういう試合を勝ちきれる力をフロンターレがいつの間にか身につけていたと言うことでもある。「気がついたら」と言うことではあるのだが。

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 もちろん、ルヴァンカップのレッズ戦、11月3日のレッズ戦のように、それでも終盤に追いつかれることもある。そのあたりがサッカーの面白さだ。

 最後にこのショット。この日、幾度となくバチバチとやり合ったジェジエウと永井謙佑。ほんのちょっとの合間にお互いをねぎらう2人。スポーツのこういうところっていいよな。

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