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緊急事態宣言下のスポーツ観戦

 1月8日に再発出された緊急事態宣言。そこで示された基本的対処方針の中で、イベントは、「最大5000人かつ収容率50%以下」とするとされました。

 タイミング的に、Jリーグは既に2020年度の全日程を終了しており、現段階では短期的には影響はありません。大きな影響を受けることになったのは、1月11日に大学選手権決勝、16日にトップリーグ開幕が予定され、既にチケットが発売されているラグビーです。

有観客で実施するラグビー

 ファンも固唾をのんで見守る中、既発売分のチケットは有効という形で、5000人以上の観客を入れて実施することになりました。

 ただこの判断には賛否両論あるようです。

 ツイッターみてもNote見てもいろいろ悩んでいる方もいらっしゃるようです。私も、大学選手権決勝、トップリーグ開幕戦の東芝対NTTコム、第2節のサントリー対クボタとNTTコム対サニックスの切符を持っているので、ここで自分なりの考え方を整理しておきたいと思います。長文になってしまいましたが大事なことだと思うので。

私はためらわずに行きます

 結論から言うと、私は、日本ラグビーフットボール協会の判断は100%正しいと思っています。そして、観戦に行くことに何のためらいもありません。

 理由は、Jリーグ有観客試合再開後、J1とJ2合わせて実施された700試合あまり、さらに大学ラグビーのうち有観客で行われた30試合弱(関西の状況は詳しくないので関東協会管轄下および大学選手権のみカウントしてます)においてクラスターが発生したことがないことです。実際、「声を出さない」ことを守るのであれば、秩父宮でも、国立競技場でも、満員電車よりもさらに他者との「密」の度合いは低いです。

 「不要不急」というのがキーワードになっていますが、この「不要不急」という言葉だけを一人歩きさせるべきではないと思っています。そもそも「不急」ではあっても「不要」であるものってほとんどありません。

リスクマネジメントを主体的に考える

 考えるべきことは、それぞれの行動の必要性と感染リスクとを天秤にかけることです。例えば、日々の食料品の買い物であれば、それがなければ生活できませんから、一定の感染リスクは許容されます。文字通り「不要ではない」行動ということです。

 しかし命に関わらないアクションの場合、感染リスクとのバランスは厳しく評価される必要があります。「不要ではない」としても、「命を賭けてまで必要ですか?」と問われなければならないということです。あるいは、「命がかかるようなリスクではない」と判断するに足るエビデンスがあるかということです。

 その意味で言えば、700試合以上のサンプルがあるにもかかわらずクラスター発生が「ゼロ」であるスタジアム観戦は、ほぼゼロリスクと考えられます。移動経路上での感染リスクはもちろんゼロではありませんが、それは通勤でも同じこと。適切に時間と経路を選択するならばリスクを局限することはできます。

リスクの比較

 リスクマネジメントの点から言うと、AKB48との比較から興味深い違いを見つけられます。AKB48は、緊急事態宣言に先立って秋葉原での劇場公演の中止を決め、また1月22-24日に東京ドームシティで予定していたコンサートも中止しました。

 実は22日のコンサートのチケットは持っていました。しかし、昨年2-3月に実際にライブハウスや演劇でクラスターが発生していたことを踏まえれば、コンサートやライブのリスクはスタジアムの比ではないほどに高いと考えられ、これもリスク管理の点から正しい判断だと思っています。おそらく予定通り実施されたとしても私は行かなかったでしょう。

 私にとっては、スポーツ観戦もAKB48も「不要」ではありません。けれど、「命を賭ける」ほどのことでもないのも明らかです。ここで必要なのはリスクと照らし合わせた判断。

 スポーツ観戦のリスクは低いから行くけれど、ライブやコンサートのリスクは高いので行かない方がいい、ということです。

 余談ですが、私は、去年の2月11日にAKB48の劇場公演を見に行っています。この段階で既に「新型肺炎」のリスクが認識され始めており、劇場では観客にマスクが配布されていました。そしてその2週間後の2月26日にAKB48はすべての劇場公演・コンサートの中止を決定します。ライブハウスでのクラスター発生はその後のことですから、これらの中止は正しいタイミングで行われた判断だと評価しています。(この一連の判断は、NGT騒動で下手を打ったのと同じ組織とは思えません)

飲みには行かない。最もリスクが高いのは飲みに行くことだから。

 緊急事態宣言発出に伴う先日の記者会見で、「経路不明の感染の原因の多くは飲食が原因」との発言がありました。私が昨年、医療機関に勤めている知人から、「収容患者の80%が飲食店での感染」という話を耳にしました。「飲食店」というと今ひとつわかりにくいですが、要は飲み会です。飲み会に行くということこそがハイリスク行動だということです。

 スタジアムに行こうが仕事に行こうが、その後で飲みに行けば感染リスクは高まる。逆に飲みに行くのを我慢すれば感染リスクは局限できる。そういうことです。

 一方、12月28日にAKB劇場の公演を見に行った後、車で新橋や浜松町近辺を移動していたら、夜10時近くにもかかわらず、多くの人が酔っ払って歩道を歩いているのに気づきました。新宿もそうです。それを見て、「当たり前が当たり前に戻る日はまだ遠いな」と思って以下の記事を書きました。

 結局、飲み会に行く人が減っていない以上は感染者数も増えていくということでしょうし、だからこそ今回の緊急事態宣言では飲食店を中心にすることにしたと言うことでしょう。

 「7時前ならいい」とか「8時前ならいい」とか「4人以下ならいい」とか「5人以上ならだめ」と言うことではありません。政府が何を言おうが、メディアが何を言おうが、感染したら困るのは自分自身であって政府やメディアではありません。なので、どのような行動が感染リスクが高いのか、主体的に判断して行動したいと思っています。

 そして、少なくとも現状での実証的なデータを見る限り、一般人の日常的な行動の中で最もリスクが高いのは飲みに行くことと考えられます。その判断をベースに、自分の行動原則を決めています。

 私は去年の有観客試合再開以来、私はサッカーを19試合、ラグビーを8回見に行ってます。1試合の例外を除いて、私はスタジアムに行っても飲食店には基本寄りませんでした(優勝を決めたガンバ戦の後だけは武蔵小杉のドイツビール屋さんで飲みましたが。そのとき客は私含めて2組だけでした)。鹿島スタジアムは車で行って車で帰りましたし、鳥栖に行ったときも食事はラーメン屋でした(ラーメン屋とか牛丼屋では客の会話ってほとんどありませんからね)。

ファンの規律が問われるとき

 こういったことを考えた上で、これまでの27回のスタジアム観戦と同じ原則を守りながら、私は緊急事態宣言下のラグビーの試合を見に行くことにしています。

 その原則とは、
  試合中に叫ばない。
  試合中に飲まない。
  試合後に飲みに行かない。

 実証データを見る限り、この3つの原則を守れば、感染リスクは局限できるはずです。

 ただ気になるのは、ラグビーファンの規律の低さ。サッカーでも横浜FCや浦和レッズのように、サポーターの行動が問題になったケースがありますが、全般的には「声を出さない」という原則は守られていました。少なくとも等々力では厳しく守られていました。

 しかしラグビー場ではそれが守られないケースが頻繁に見られます。再開当初にあったようなヤジはほとんどなくなりましたが、グループで来た人たちが大声で会話しながら見ているケースは今でもあります。歓声も上がってしまいます。

 サッカーファンは、クラスターを一切発生させずに1シーズン乗り切ることに成功しました。今度はラグビーファンが、スタジアムは感染リスクの高い場所ではないということを証明する番です。

 そのために必要なのは規律です。ラグビーで試合に勝つためには、規律は重要。いまは、ファン自身が自分たちの規律を守れるかが問われているのです。

 そのことを肝に銘じながら、私はスタジアムに行きます。


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