ボール奪取はコンサドーレ優勢。しかしシュートにつなげたのは?:川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌戦(5月16日)<2>
一ヶ月前になってしまったが、5月16日の川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌戦のレビュー2回目。
前回は、フロンターレのボール奪取マップから、コンサドーレがシミッチの周りのスペースを狙っていたことを示した。
縦横無尽にボール奪取したシミッチ
今回はコンサドーレのボール奪取マップを見たいが、その前にフロンターレのマップをもう少し見てみよう。
繰り返すが、ボール奪取最多はシミッチ。そこで中盤3人のボール奪取を。
シミッチが縦横無尽にボールを刈り取っているのがわかる。守備に不安、というのはどういう意味なのだ??ただ、「シミッチの周りのスペース」と言うだけでなく、「シミッチを動かして空いたスペース」を使った攻撃も見られたことは付記しておく。また、旗手も広い範囲でボールを奪っている。
最終ライン4人を再掲。中盤3人で奪えなかった場合は、自陣ペナルティエリアで谷口が奪っているように見える。
最後に前線3人。少ないのはいつものこと。自陣深くでのダミアンのボール奪取はコーナーキックの時。
コンサドーレのボール奪取がフロンターレを上回った
次にコンサドーレのマップを見てみよう。
合計ボール奪取71。フロンターレが70だから、わずか1とは言えフロンターレを上回った。今年数えた試合の中で初めてのことだ。
しかも敵陣で27だから、24だったフロンターレをこちらも上回っている。ただしシュートにつながったボール奪取は6。フロンターレは10だから、この点ではフロンターレが上回っている。
ざっと見ると、3つくらいのエリアにわずかながら偏りが見られる。
1つは右サイド高い位置。これは三笘へのパスを抑えようとしたためだろう。もうひとつは自陣中盤左サイドでのボール奪取。宮沢を中心としてこの位置でよくボールを奪っている。あとは敵陣でのボール奪取だ。
ただ、前後半に分けるともう少しはっきりと特徴が出てくる。
まず前半。ボール奪取数36。うち敵陣15。
中盤左サイド、と言うかセンターサークルの左手前でのボール奪取が多い。このあたりでフロンターレのパスを寸断していたことがわかる。あと右サイドの高い位置も多い。
これは要約すれば、三笘へのパスと、右サイドへの展開が抑えられていたと言うことだから、フロンターレの前半の試合運びがさえなかった理由がよくわかる。
次に後半。ボール奪取数35、うち敵陣14。フロンターレ同様、前後半の偏りはない。ただ、フロンターレは敵陣でのボール奪取数が前半は少なかったのに対し、コンサドーレはほぼ同数だ。
細かく見ると、前半多かった中盤左サイドでのボール奪取が大きく減っている。これは田中碧が入った効果だろう。一方、敵陣の特に高い位置でのボール奪取が増えている。これは先制されたあとで前掛かりになったことを反映しているものだろう。
両チームの違いはトランジションからのシュート
最後に、いつものようにボール奪取からのシュートを。
まずはフロンターレ
15分:シミッチから7本
19分:三笘から17本
22分:小塚から2本
48分:田中から4本(ゴール)
53分:旗手から3本
75分:山根が奪ってすぐシュート
81分:長谷川から4本
82分:谷口から2本
82分:ダミアンから2本
93分:シミッチから3本(ゴール)
19分は、三笘が敵陣ペナルティエリア付近でボール奪取してからだが、17本のパスと言う多さ。つまり攻撃をやり直してからのシュート。それ以外はほとんどが4本以下で、少ない手数でシュートに持ち込めている。
スタッツ上のシュート数が13本。ボール奪取からのシュートは10本だから、なんとシュートの77%がボール奪取からのシュートと言うことになる。
ではコンサドーレはどうか。
16分:1本
26分:1本
29分:16本
36分:3本
43分:16本
73分:10本
少ない手数でシュートに持ち込めたのが3本、10本以上のパスを経てシュートに持ち込んだものが3本。意外にカウンターではなく、ポゼッションしながら攻撃していたと言うことでもある。スタッツ上のシュート数はフロンターレと同じく13だから、こちらは半分をわずかに下回る数字と言うことになる。
まとめ:攻撃の性質の違い
このあたりに、フロンターレとコンサドーレの攻撃の性質の違いが出ている。両軍ともボール奪取数はほぼ同じにもかかわらず、ボール奪取からシュートに持ち込んだ数はフロンターレがコンサドーレの倍になる。4本以下のパスでと言うことになると、フロンターレ8対コンサドーレ3になる。
マンマークで臨んだコンサドーレだが、ボールを奪った時、フロンターレの攻撃を阻止することにはなっても、トランジションでの素早い攻撃にはあまり結びつけられていなかったと言うことだ。
一方フロンターレは、ボールを奪ったら少ない手数でシュートまで持ち込むことがうまくできている。ボール奪取数70対71、トランジションが頻繁に起こるエキサイティングな試合だったが、最終的なスコアが2-0となったのはこのあたりにも原因があると考えていいだろう。
一ヶ月前の試合にそんなに時間をかけてもいられないのだが、次回はいつものように、三笘のプレーについて分析してみよう。
(続く)