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2点差の陥穽:速報マッチレビュー 川崎フロンターレ対浦和レッズ(9月5日)

 今日はルヴァンカップ準々決勝、川崎フロンターレ対浦和レッズのセカンドレグを見に等々力へ。

 本当はパラリンピックの車いすバスケットボールの決勝のチケットが当たっていたからダブルヘッダーの予定だったのだが。


 あの壮絶な試合、見たかったなあ。


3-3の引き分け。しかし敗退

 さて、サッカー。

 レッズのホームで行われたファーストレグは1-1の引き分け。怪我人が続出し、センターバック2人を交代させざるを得なかったフロンターレとしてはアウェイゴールを得ての引き分けということで悪くはない結果だった。

 だからといって有利になったと言えるものではなく、セカンドレグでは勝った方が突破。0-0だったらフロンターレが抜けるが、1-1だったら延長、2-2だったらレッズ。なので勝ちに行かなければならない試合。

 注目の最終ラインは左から登里、田邉、山村、橘田。車屋紳太郎、谷口彰悟はベンチ外だが、ジェジエウはサブに入った。スタメンでダミアンと小林悠を併用。家長昭博をインサイドハーフでの起用という形で、今シーズンの基本型とは大きく違う形のスタメンとなった。

 なお今年ダミアンと小林の2人をスタメンで併用するのは3/21のレッズ戦以来。ちなみにこのレッズ戦ではフロンターレは5-0で勝利している。

 結果は3-3の引き分け。二試合続けて引き分けとなったが、レッズの方がアウェイゴールが多いため、規定によりフロンターレの敗退が決まった。試合には負けてないのだが。

 一言で言うと、戦術面でもプレーの強度やトランジションの速さを見ても、非常にレベルの高い面白い試合だった。ここまで面白いと思ったのは、今年の試合では、開幕戦のマリノス戦以来だ。

監督同士の戦い

 実に面白かったのは、両監督のフォーメーションの駆け引きだった。

 試合前半のレッズの狙い所はフロンターレの右サイド。右サイドバックは本業ではない橘田。右ウイングも本業ではない小林悠。そこで、対面の左サイトバックの明本が高いポジションを取ったり、汰木がサイドに張ったりしてボールを待ち、縦に崩して行った。

 時に最終ラインが3バックになり、明本だけが高いポジションを取ることもあった。そこから再三ピンチを作られ、ディフェンスが右に寄ったところを左に振られ、レッズが先制する。

 この試合はイサカ・ゼインを入れていないので右サイドバックを交代させることもできない(入れても問題の解決になるとは限らない)。しかし右サイドの問題をどうにかしないと間違いなくこの試合を失う。どうするのだろう?と思っていたら、30分過ぎに鬼木監督が小林悠に指示を出していた。内容は聞き取れなかったが、「中に寄れ」という意味のことを言っていたように思えた。

 そのあとでフロンターレのフォーメーションが変わる。基本形の4-1-2-3から4-4-2へ。左インサイドハーフに入っていた家長が右サイドハーフに入り、脇坂とシミッチがセントラルMF、宮城が左サイドハーフ、ダミアンと小林が2トップになった。

このフォーメーションチェンジで、驚くほどフロンターレの守備が安定した。家長と橘田が近い距離に立つことで、右サイドが崩されることがなくなった。というより、レッズの明本が立っていた高いポジションを消した。

 そしてビルドアップ時には、2トップでレッズのセンターバックにプレスをかける。

 その結果、前半の残りの時間はフロンターレが攻勢を掛ける。1点取るのも時間の問題と思われたところ、やはり前半のうちにダミアンが決めて1-1の同点となった。

 後半になるとレッズはフォーメーションを変える。4-2-3-1から江坂任を1トップにした4-1-4-1に。その結果バイタルに立つプレイヤーが増えた。また、小泉が低めのポジションを取ってボールをさばく。さらにユンカー投入にともない4-2-3-1に。

 フロンターレは守備時4-4-2、攻撃時には(家長ではなく)ダミアンがトップ下に入る4-2-3-1。普段の4-1-2-3と違ってハーフスペースに必ずしも人がいない。それを埋めるために家長が左サイドに移動。そこから取ったCKでフロンターレは勝ち越しに成功する。

 この一連のフォーメーションチェンジの駆け引きは実に見応えがあった。願わくば代表戦でもこれくらいの戦略性を見たいものだが・・・・。


小泉が効いていた 

 レッズのなかで目を引いたのは小泉だった。

 銀髪で目立つと言うこともあるが。自分がレッズサポだったら小泉を中心に撮るだろう、と思うくらいフォトジェニックなプレーぶりだ。

 立ち位置、ボールさばき、デュエルの強さなどすべてが出色だった。レッズの二点目の起点も小泉。フロンターレが攻めきれなかったところからボールを確保。

フロンターレのプレスをかいくぐって西にパス。

西からのクロスをキーパーのチョンソンリョンがパンチングではじくが、そのボールがユンカーの正面へ。ユンカーはそれを確実に決めた。

 結果的に言えば、この2点目が勝負の重要なポイントだった。


勝負のアヤとなった2点差

 2-0は「最も危険な点差」と言われる。実はこの試合の3-1になった瞬間は、それに近い状況だったように思える。

 この試合はレッズが先制した以上、フロンターレは1点を取り戻して1-1だったら延長。逆転して2-1だったらフロンターレが突破だが追いつかれて2-2だったらレッズが突破。

 なので2-1の時点では、1点取られれば敗退ということでまだ張り詰めるような緊張感があった。しかしシミッチのヘッドで3点目を取って、少し雰囲気が緩んだ。

 点差は2点。1点取られても勝ち抜けだ。緩んだのは自分もだ。自分はこの時にカメラの1台を片付け始めた。

 しかし、このタイミングでレッズが一か八かの大攻勢にである。それは当然だ。3-1になった時点で残り時間はわずか7分。リスクを取って攻める以外に方法はないからだ。フロンターレがちょうど緩んだタイミングと、レッズがギャンブルに出たタイミングが重なったのが、この試合のアヤだった。フロンターレは押し込まれ、結果、2点を失って敗退が決まる。

 次の二枚は、失点の直接の原因となった遠野のボールの「持ちすぎ」。ここでも小泉がきちんとプレスバックしている。


「勝負事の怖さ」が薄れていたかも・・・・

 試合があまりに素晴らしかったからか、あるいは負けてないからか、今日は試合が終わってからも後を引いていない。悔しいのは悔しいのだが、爽やかさも残っている。監督も選手も、お互いにやるべきことをやり尽くしたからだろう。その意味で勝敗(というか引き分け)は結果でしかないように思うからだ。

 けれど、悔しさを悔しさとして感じることも大事だ。川崎フロンターレというチームは、ほんの1分、ほんの勝ち点1で悔しい思いを重ねてきたチームだ。それが今の川崎フロンターレというチームを形作っているが、特に去年から独走を続けているうちに、勝負事の怖さを忘れつつあったのかもしれない。

 その意味では、今日の引き分けによる敗退は、いつかは来るものだったのだろうし、これを機に、1分の大事さ、1点の大きさを改めて心に焼き付けておきたい。

 

 最後に余談。まず試合前に、スタジアムの外のイベントに参加。フットダーツという、巨大なダーツの的にボールを当てる(マジックテープでくっつく)というアトラクションがあるのだが、娘がそこでど真ん中にヒット。脇坂泰斗の直筆サインをもらった。
   サッカースクールに入った成果がこんな風に出るのもうれしいもの。入ってからずっと、自主練でインステップキックの練習していたから。試合に勝てたら最高だったのにな。