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観客にとって「快適な」ビデオ判定とは?

 先日の川崎フロンターレ対サンフレッチェ戦では、ビデオ判定がちょっとした勝負のアヤになった。

レビューしたい試合もたまっているのだけれど、今日はビデオ判定について書きたいと思う。

VARとTMO

 ビデオ判定、サッカーではVideo Assistant Refereeと言い、ラグビーではTelevision Match Officialと言う(昔は「ビデオレフ」と呼んでいた記憶があるが、通称だったかもしれない)。サッカーの場合、video assisted refereeだったら「ビデオに支援されたレフェリー」となるが、video assistant refereeと言うことは、「ビデオを見るアシスタントレフェリー」という位置づけで、あくまで判定は主審が下すものであり、主審を助けるレフェリー以上のものではないと言う意味で選ばれている言葉だろう。

ラグビーのTMO

 ビデオ判定は、ラグビーではかなり前から導入されている。ハッキリといつ頃か記憶がないのだが、1999年に最初の試みがなされたようだ。

 元々ラグビーは、サッカーに比べてプレーが切れる時間が長い。なのでそのタイミングでビデオ判定を行えば良い。また、アドバンテージも、反則をしなかった側がチャンスを生かし切れなかった場合、反則をした場所まで戻る。なので、遡ったプレーでの反則が見つかっても、プレーを戻すことに違和感はない。

サッカーのVAR

 サッカーでは、特に2002年ワールドカップで頻発した誤審からビデオ判定の必要が強く指摘されるようになったが、採用は進まなかった。

 「ミスはつきもの、それを含めてサッカー」という主張も1つの理由だが、実際上の大きな論点は、「何を見るのか」「どこまで戻すのか」だった。

 様々な議論が積み重ねられた結果、(1)「得点かどうか」(2)「PKかどうか」(3)「退場かどうか」(4)「警告・退場の人間違い」の4つが挙げられ、これらのなかで「はっきりとした明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」があった場合にVARの介入が入ることとなった。

観客にとって「快適な」ビデオ判定とは?:4月18日川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島戦の場合

 さて、今日書いておきたいのは、ビデオ判定そのものの是非とかではなく、観客にとって「快適な」ビデオ判定とは何かだ。そんなことを考えたのも、4月18日の川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島戦でVARのオンフィールドレビューを始めるまで3分あまりかかると言うようなことがあったからだ。

 最初三笘のゴールに喜んだあと、VARの介入に気づいた。

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 状況的にはオフサイドの判定でのレビューと推測できる。けれどオフサイドだったらファクトだからオンリーレビューのはずだしそんなに時間がかからないはず。けれどすぐに判定が出ない。

 ちょうど登里のドリブル突破から連写していたので、手元でチェック。

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 この↑のショットを見たあたりで、「あ、ダミアンがオフサイドかも」と気づいた。

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 で、この4枚を見て、「ありゃ。これはオフサイドだ」と確認。

 そうなると、次の問題は、「ダミアンがプレーに関わったかどうか」と言うことになる。これはオンフィールドレビューマターのはずだから、オンフィールドレビューやるんだろうな、と思っていたけれどそこからまだしばらく時間がかかった。

 選手たちも敵味方入り交じって談笑中(笑)。

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 そして主審が四角のポーズをして走ってきた。

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 「やっぱりオンフィールドレビューか・・・・」実は自分の観戦した試合でのオンフィールドレビューは初めて。等々力の試合は今年レイソル戦を見逃しているが、等々力でのオンフィールドレビューは初めてではなかろうか。

 Jリーグの場合、オンフィールドレビュー中の映像はモニターに流れる。そこで改めて「ありゃ。こりゃ駄目だ」。そして程なく判定、ノーゴール。

 この判定には何も異存はないのだが、DAZNのジャッジリプレイでも話題になっていたとおり、オンフィールドレビューまでの時間が長すぎたと思う。

 長いだけならまだしも、何をレビューしているのかわからないところが観客にとってはつらい。ラグビーのTMOの場合、場内アナウンスで何を検証しているかが説明される。今回のダミアンのオフサイドの場合は、自分は手元にカメラがあるから良かったが、そうでない場合だと、何が論点なのかがわからない。

 ただ、オンフィールドレビューが場内モニターで流れるのは良い。海外のサッカーだと、モニターでは流さないそうで、Jリーグで流すことにしたのは2019年のラグビーワールドカップの影響を受けてとのこと。これについて批判もあるようだが、観客の立場からすると、「何が判定されているのか」と言うことを知るために絶対に必要だ。

観客にとって「快適な」ビデオ判定とは?:4月3日サントリーサンゴリアス対クボタスピアーズの場合

 もう一つはラグビーのケース。4月3日のサントリーサンゴリアス対クボタスピアーズから。これは正確には「ビデオ判定をしなかったケース」なのだけれど。

 この試合、前半30分過ぎにクボタのスタンドオフ、バーナード・フォーリーが「危険なプレー」でイエローカードの対象となり、10分間退場した(ラグビーの場合はイエローカードは「シンビン」として10分間の退場)。その間にサントリーが加点したため、結構大きなイエローカードとなった。

その対象となったプレーがこれ。ボーデン・バレットのショートパントに対し、バーナード・フォーリーがチャージに行った場面だ。

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 レフェリーは、キックを蹴った選手に、蹴ったあとにタックルに行く「レイトチャージ」という反則を取り、しかもイエローカードを適用した。

 ただ、現地で見ていて、タックルに行ったバーナード・フォーリーはジャンプしたあと、避けようもない態勢でバレットにぶつかっている。膝を立てているわけでもないし、腕で突き飛ばしているわけでもないので、レイトチャージを適用し、しかもイエローカードを出すのは厳しすぎるのではないか?と言う印象を受けた。

 正直ミスジャッジだと思ったし、少なくともTMOで確認すべきだと考えていた。ビデオ判定の制度があっても使わなければ意味がないなあ、と。

 その考えを変えたのが、ツイッターでのやりとり。

 秩父宮ラグビー場では、ミニFM局の放送がある。秩父宮だけをカバーしているだけの出力の弱いFM局だが、2つチャンネルがある。

 1つが、テレビ放送と同様にトークしながら試合を解説する番組。もう1つが、レフェリーに取り付けたマイクの音声がそのまま入ってくるものだ。自分もいつもレフェリーの音声を聞きながら観戦しているのだが、この日はうっかり充電し忘れていて聞けない状態(涙)。

 それを聞いていた人から、「ジャンプのタイミングがチャージには遅すぎる」とレフェリーが言っていたと教えてもらった。

 その情報を頭に入れた上で上記の写真を見直すと確かにその通りだ。フォーリーは、バレットが蹴ったボールがほぼ頭の上に行ってからチャージするためのジャンプをし、バレットに身体ごとぶつかっている。これは確かにイエローカードで罰すべきプレーだ。

 このように、レフェリーが何を考えていたかがわかるかわからないかで観客の印象は変わってしまう。

「ビデオ判定」はいいが、ラジオなどで観客をフォローしてほしい

 そこで今日のまとめ。ビデオ判定は、確かに観客にとってもいいシステムだと思うが、やはりラグビーのTMOのように、「何をビデオで見ているのか」については情報が欲しいし、オンフィールドレビューを行う場合には映像をちゃんと見たい。

 また、レフェリーが何を選手と話しているのか、どのように判定を説明しているのかも、観客にとっても重要な情報だ。

 なので、ラグビーでは秩父宮以外のラグビー場にもミニFM局を拡大してほしいし、サッカーでも取り入れてほしい。「目の前で何が起こっているかをきちんと知ることができる」ことが、やはり観客にとっては最も快適なことだから。

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