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誰もいない歴史的瞬間:東京五輪日記 7.26

 東京五輪の競技は7月21日のソフトボールで幕を開けた。22日からは4連休だったから、今日は競技6日目にして2日目の平日。今のワタシは在宅勤務がメインだが、今日は出勤する日。つまり、五輪が見られない・・・・(笑)。これが地元開催の五輪のマイナスポイント。時差があれば頑張って起きていれば見られるのだが、時差がない地元だと仕事と重なってしまうとみることができない。

 実際、1998年の長野五輪の時は、荻原健司最後の試合となったノルディック複合団体と、船木が金、原田が銅を取ったジャンプラージヒル個人は土日だったので現地観戦したものの、火曜日だったジャンプの団体は見損なった。見損なったというのは、現地で見られなかっただけではなく、仕事で完全に見逃した。

 とはいえ今はネット配信という強い味方がある(笑)。仕事の合間にテキスト速報やらをみて、見逃したものは仕事が終わってから配信を見れば良い。

ラグビーセブンス:フィジーには善戦したが

 今日見たのはまずは、ラグビーセブンス。時差出勤しているのでジャパン対フィジー戦はライブで見ることができた。というか、この試合、ツアーでチケットを抑えていたので行くつもりだった。

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 15人制であれば現在のフィジーとはジャパンの方がやや優位だが、セブンスではフィジーとの間には力の差がある。

 けれどこの試合では優勝候補のフィジー相手に大健闘。19-24の惜敗だった。ただ、試合の最終盤で得たペナルティ。これをタッチに蹴り出したのだがラインアウトでの痛恨のキャッチミス。そこから切り返されてのノーサイド。このラインアウトからトライを取れていたら同点ないし逆転(コンバージョンが決まれば)だった。

 ただ、このペナルティからのタッチキックの判断には疑問がある。特にこの時はフィジーがシンビンで1人少なくなっていた。もしスクラムを選んでいたら、セブンスのスクラムは3人だからフィールドプレイヤーは4人対3人。ランニング勝負でトライを狙えたはず。

 特にセブンスは、15人制と違って裏に出たあとの二線防御が薄い(人数が少ないので)からビッグゲインが期待できる。この場では、ラインアウトによる陣地稼ぎよりも、裏に出て走りきることを狙い、スクラムで攻めるべきではなかったか。

 夕方のイギリス戦も配信で見た。ラグビーやサッカーで「イギリス」と呼ぶのには違和感があるが・・・・。

 この試合は完敗。0-34。ほとんど攻めることさえできなかった。この試合で感じたのは戦術における大きな差。セブンスの戦術はよくわからないのだが、防御時のポジショニング、ボール奪取後のトランジション、タックルを受けたりラックになったときのサポートプレイヤーの走る角度やスピード。このあたりのツメが日本とイギリスでは段違いだった。

 イギリスのディフェンスやアタックは、即興に頼ったものではなく、明らかに再現性の高い形で展開されていた。例えば、3つ目か4つ目の被トライは、松井千士がタックルに捕まり、苦し紛れに後ろにオフロードパスを放ったときに、まさに真後ろにイギリスのプレイヤーが走りこんできてインターセプトされたもの。あのインターセプトは狙った形だ。タックルに入るのプレイヤーと、オフロードパスを狙うプレイヤーのポジショニングは明らかにデザインされたものだった。

 ただあの場でオフロードではなくラックを作っていれば、後ろに回っていたプレイヤーはオフサイドになっていた。おそらくラックになればディフェンスラインにすぐ戻ったのだろう。このあたりの判断はセブンス独特のものなのかもしれないが。


ソフトボール:本番は明日

 ソフトボールは消化試合だったこともあり、テキスト速報で済ませてしまった。1-2xでアメリカがサヨナラ勝ち。この試合、日本にとっては上野由岐子と後藤希友を休ませることができたのが大きい。

 上野は今は実際にはストレートを見せ球とした変化球投手。特に上下の変化が大きい。それは肘や肩よりも指先への負担が大きい。

 実際、同点に追いつかれたメキシコ戦では、かろうじて切り抜けたがピンチになった6回から既に変化球のキレが著しく落ちていて、ボール半分ないし一個甘いボールが行くようになっていた。指先への負担がそれだけ大きいと言うことなのだろう。なのでこの中一日は大きい。

 後藤は上下と言うより横への変化が鋭い。カナダ戦では、野球で「バックドア」と呼ばれる、外角へのボールのコースから内側に切り込んで来て外角のストライクゾーンに決まるボールなどもあった(キャッチャーの態度を見るとコントロールミスだった可能性もあるが)。あまり見ない変化なので、決勝戦より前にアメリカには見せたくなかった。そう考えると、きちんとゲームを作った今日の先発、藤田は非常にいい仕事をしたと言える。

 明日は上野で5イニング、後藤で2イニングプラス延長戦と言うところだろうか。奪三振率の高い後藤はタイブレイクで大きな武器になる。

 日本とアメリカは言わずと知れたソフトボールの宿敵同士。シドニー五輪でサヨナラ負けし、上野由岐子の前のエースの高山樹里が肩を落としていた場面は今でも覚えている。もちろん北京五輪で、解説の宇津木妙子が最後のアウトの瞬間にもう涙声になっていたことも忘れない。勝て。もう一度勝て。

0.1点に泣いた体操男子団体

 テレビ観戦は夜から。まずは体操男子団体。

 フィギュアスケートはけっこう見るので基礎点や加点・減点もよくわかるのだが(毎年変わるので毎年覚え直さなければならないのだが)、体操はよくわからないのが正直なところ。特に点数の相場観がよくわからないことは告白しておく。

 最終結果は、わずか0.1点の差でロシアに及ばず銀メダル。着地の足の揺らぎなど、本当に紙一重の差のようだ。

 しかしロシア、日本、中国と言えば体操のトップ国。この参加国のトップアスリートが挑み、大きなミスはどのチームにもなく、最後の結果はわずか0.1点の差。ただただ拍手を送りたい。

 けれど思うのだ。もし観客を入れていたら。日本のアスリートに送られる日本の拍手は、その0.1点を埋めてあまりある効果を持ったのではないかと。

卓球:観客不在の歴史的瞬間

 最後は卓球混合ダブルス。体操が終わってからチャンネルを変えたら既に第5ゲームが終わったところで3-2で日本の水谷・伊藤ペアがリードしていたところ。第6ゲームを落として追いつかれ、第7ゲームを大きく先行して勝ちきるまでを見ることができた。

 ここでは日本が勝利で金メダル。

 言うまでもなく、卓球では中国が絶対王者。多くの国は、中国の卓球選手を帰化させることで五輪に臨んでいる。自国で育てた選手を中心に臨んでいる日本は例外的だ。当然中国との力の差は大きい。現実的なライバルとして認識できるようになったのは今回で3大会目くらいだろうか。

 それでも五輪のたびに中国の厚い壁には跳ね返されてきた。なかなか他の競技で例えるのが難しいくらいに中国は厚い壁だった。この日の金メダルは、その中国を初めて破って獲得した歴史的なものだ。水谷・伊藤ペアに拍手を。

 そしてここでも思う。観客を入れていたら。会場的に上限5000人だったと思うが、その5000人は歴史の目撃者になれたんだ。一生自慢できる、本当の歴史的瞬間に立ち会うことができたはずなんだ。


今からでも有観客を

 あまり意識されないことだが、多くのスポーツは五輪以外では観客はほとんど入らない。なので無観客で関係者しかスタンドに座ってない風景も、「普通の大会」ならば当たり前の景色だ。

 けれど、五輪では観客がたくさん入る。

 やはり思うのだ。そういう、マイナー競技のアスリートこそ、観衆の前でプレーして欲しかったと。

 例えばソフトボール。横浜だと上限10000人。観客入れていたら10000人いっぱい入っただろう。ソフトボールでそれだけの集客ができる国は日本しかない。アメリカでも無理だ。

 それだけの観客の前で、上野由岐子とオスターマン、宿敵同士の戦いを演じて欲しかった。体操だって、観客の後押しがあれば0.1点以上の上積みができたかもしれない。卓球の歴史的瞬間だって、5000人の瞳に焼き付けることができたはずだ。

 なので今でも思う。やっぱり観客を入れて欲しい。小規模会場だけでもいい。普段ではあり得ない数の観客の前でプレーさせてあげて欲しい。