見出し画像

勝負におけるエアポケット:速報レビュー 横浜Fマリノス対川崎フロンターレ(2022年2月23日)

 今日は横浜の日産スタジアムで横浜Fマリノス対川崎フロンターレ戦を観戦。普段マリノス戦は俯瞰で見るのだが、今回はあまり深く考えずにミックス席の1階を取ってしまった。4列目だったが、最も前の3列は柵で見切れるため空席なので、実質最前列。

 去年の開幕カードで、お互い質の高いサッカーで優勝を争った両チームが今年は開幕2節目の対戦。開幕戦はフロンターレはFC東京相手に1-0の辛勝。Fマリノスはセレッソ大阪相手に2-2の引き分けでのスタートだった。

膠着状態の前半

 最終スコアは4-2(前半0-1)でFマリノスの勝利。前半は全般的に膠着状態だったがフロンターレが1点を先制。後半はFマリノスが3点を立て続けにとって逆転、フロンターレも追いすがるもダメ押しの4点目を取られ、チャンスはつかむも及ばず、と言う試合展開だった。

 フロンターレは4-1-2-3、Fマリノスは4-2-3-1のいつものフォーメーション。そしてフロンターレとFマリノスの対決、前半が膠着状態になるのもいつものこと。
 この試合では、両者ともボールを失ったときのトランジションが素早く、特に無理もせずにリトリートして直ちにブロックを組んだ。それに対して最終ラインもボール回しに参加して崩しに行くが隙ができず、お互いに攻めあぐむ時間が長かった。

 この時のフロンターレとFマリノスの違いはキーパーの役割。フロンターレのキーパーのチョン・ソンリョンはビルドアップを含めパス回しにはあまり参加しない。一方Fマリノスの高丘はパス回しに入ってくる。

 なのでFマリノスは4バックではなく実質的に5バックでボールを回しているような形になった。しかしフロンターレもリトリート気味でしっかりブロックを作っているので、Fマリノスはなかなか攻め込めない。

脇坂と橘田のコンビネーション

 特にフロンターレでは、インサイドハーフの脇坂泰斗とアンカーの橘田健人の関係性が良かった。脇坂が上手く橘田の周りのスペースをカバーして、「アンカー周辺のスペース」という4-1-2-3フォーメーションの泣き所をFマリノスに使わせなかった。

 もう一つ、フロンターレは、相手のサイドバックが低めのポジションを取ってのビルドアップしてくるのを苦手としている。インサイドハーフがサイドバックに食いついてしまって、その背後のスペースを使われてしまうケースが多いのだ。
 ただこの試合、特に脇坂は食いつくのを我慢して、内側のスペースを潰してきた。そのためにFマリノスは中にボールを入れることができず、外でボールを回すことしかできなかった。

 フロンターレも同じ。Fマリノスが素早くブロックを作るのでなかなか攻めきれない。両者とも、ビルドアップでは同じサイドでショートパスを繰り返し、相手が寄ってきたところで逆サイドに大きく展開、と言う攻め方も仕掛けてみたが、やはりそれでも攻めきれなかった。

 しかしフロンターレの先制点はブロックをこじ開けてのもの。起点はカウンター。トランジションが素早いといっても、トランジションの瞬間にはマークがずれていたりスペースが空いていたりする。
 自陣でボールを奪取し、前線のダミアンへ。ダミアンは左サイドに駆け上がってくる宮城にパスすると見せながら、少し遅れて駆け上がってきた右サイドのフリーの家長へ。家長は急がずに時間を作る。もちろん時間が作られればFマリノスはブロックを作るが、その背後を突くパスでディフェンスを崩し、フロンターレが先制した。

後半のエアポケット

 後半、立ち上がりは前半と同じような展開。お互いが作るブロックをなかなか崩せない時間が続く。動きがあったのはアクシデントから。
 フロンターレが敵陣でボールを失い、再奪取しようとしたチャナティップが相手と衝突。チャナティップのファールとなったがこの時にチャナティップは頭を打って倒れてしまう。ラグビーではHIAが入る状況でしばらく中断した。チャナティップは幸い立ち上がったが、一度ピッチの外へ。
 リスタートのフリーキックからFマリノスは左サイド(フロンターレの右サイド)に展開、反対サイド(フロンターレの左サイド)にふわっとしたクロスをアーリー気味で放り込む。それをヘディングで押し込んで同点となった。
 それまで、フロンターレのブロック攻略にFマリノスは苦労していたし、それまで、ブロックに対してあのタイミングでクロスを放り込んでくることはなかったのだが、ちょうど左サイドのインサイドハーフのチャナティップが不在だったこともあり、完全にフリーでのシュートを許してしまった。
 さらにキックオフからの再開後、すぐにボールを失い、ミドルカウンターの形で攻撃を受け、最終ラインの裏を突かれて2点目を失点。

 この連続失点の時間、フロンターレはなんとも言えないエアポケットに陥ったとしかいいようがない。
 それまでの時間はブロックがしっかり機能していて、決定機さえほとんど与えていなかったのに、チャナティップが倒れて中断した時間の後でふっとプレスの強度が落ち、不用意なスペースができた。2点目は気持ちが前がかりになってしまって、ボールをロストした瞬間の後ろのスペースのケアが甘くなったことが原因だ。このレベルでやり合っていると、本当にほんの少しの精神的な揺らぎでさえも結果に跳ね返ってくると言うことなのだろう。


 この後は大島僚太などを投入してフロンターレが攻勢を強める。その結果全体的にオープンな打ち合いになった。



 1つの原因は、脇坂が大島に変わったことで、Fマリノスのビルドアップに対して「我慢してスペースを潰す」ことができなくなったこと。特に大島は相手のボールに食いついてしまうことが多く、後ろのスペースにボールを運ばれる局面が増えた。 ただこれは仕方のないリスク。 2点ビハインドである以上はリスクを負って前掛かりになるのは当然のこと。その中から1点を取り返し、ファウルで無効となったがコーナーキックからゴールネットを揺らすことができている。

この敗戦をどう評価する?

 さて、フロンターレの目から見れば2-4の大敗。ただし自分はそれほど悲観的ではない。1点目と2点目はエアポケットの時間。3点目は左サイドを完全に崩された形だったが、4点目はどうしようもないスーパーゴール。
 サッカーにはこういうこともある。むしろ富士フイルムスーパーカップと開幕戦の2試合の間安定しなかったアンカー周辺の守備が、橘田の復帰と脇坂との高度な連携によって安定したことにこの試合の意義を見いだしたい。その真価が問われるのが次のアントラーズ戦と言うことになる。

 カシマスタジアムは好きだから行きたかったのだけれど、娘の学校の用事が入ってしまったこともあって行けないのだけれど(しかも熊谷ではラグビーのワイルドナイツ対サンゴリアス戦があるのでどっちに行くか真剣に悩んでいたのだが)。