どちらが攻めてても4-2-1-3対4-4-2。だとすれば。:川崎フロンターレ対鹿島アントラーズ(9月22日)<1>
一週間過ぎてしまったが、今日は9月22日の川崎フロンターレ対鹿島アントラーズのレビューを。
まずはスタメン。
双方ともに4-2-3-1。
両チームともさすがのコンパクトな陣形。
ただ、この試合について言えば、フォーメーションの数字の表記にはほとんど意味がない。どちらも攻撃時と守備時とで立ち位置を変えていたからだ。普段はかみ合わせの図も作るが、今回はかみ合わせは意味がないので作らなかった。
両方とも攻撃時には1列目の両サイドの選手がウイングポジションを取り、3トップ、つまり4-2-1-3となる。守備時には、その2人が下がってサイドハーフのポジションにつき、4-4-2となる。なので、どちらが攻めていようとも4-2-1-3対4-4-2という図式になっていた。
橘田と旗手の動きで可変するフロンターレ
ただ、見極めが難しかったのがフロンターレのフォーメーション。最初はスタメンを見て4-1-2-3だと思い、速報レビューにもそう書いたが、試合中には4-2-3-1の時間が多かった。
ポイントは橘田と旗手の位置取り。
橘田は、状況を見ながら上下に動く。ビルドアップの時はシミッチと並んでダブルボランチのような形になることが多いが、橘田がいなくてもビルドアップできそうなときは2列目に入る。
旗手は、橘田が降りているときは、インサイドハーフのように左右どちらかによるのではなく、ダミアンの真後ろ、つまりトップ下に立ち、橘田が2列目に入る時は旗手が逆サイドに移動して、インサイドハーフ二枚の形、つまり4-1-2-3になる。
シミッチに対するマークの厳しさを見ながら、どちらにするか決めていたようだ。考えてみれば、こうした動きは田中碧もよく見せていた。
ただ、橘田が降りてしまうと、前線は4人になり、ある程度はビルドアップはできても崩していくのが難しくなる。アントラーズがシミッチを自由にさせないよう、前線からハードなディフェンスをしてきたので、変な形でボールを失うよりは安全を重視したと言うことだろう。
これから何枚かフィールド写真を見て、この陣形の変化を観察してみる。
これが橘田が二列目に入っているときだ。ゴールキックの時だが、最終ラインの前はシミッチだけ。橘田は右インサイドハーフのポジションを取っている。
これは橘田が降りているとき。シミッチが2人にマークされている。ただ、山根が高いポジションを取れるよう工夫したポジショニングをしている。なお、この時、フロンターレの二列目は旗手1人。よって、4-2-3-1ではなく、4-2-1-3になっていることがわかる。アントラーズはこれに対して4-4-2で守っている。
これも似たような形。シミッチが2人でマークされているが、橘田が最終ラインに落ちて山根を高くしている。田中碧がいたときもこの形は頻繁に見られた。
これはシミッチが降りていくスペースを橘田が埋めるために動いている。アントラーズの二列目よりも後ろに橘田がいるから、4-2-1-3と見るべきだろう。
これも橘田が降りているとき。ここでもマルシーニョと家長が最前線に立って3トップになり、4-2-1-3になっているのがわかる。
これは橘田とシミッチが縦関係になっている。橘田が二列目から降りて行っているから、4-2-1-3への変形の途中だ。
ポイントは、3トップの形を崩さないこと。自軍ゴール側から見て、中盤をシミッチを頂点とする逆三角形にするか(4-1-2-3)、旗手を頂点とする順三角形(4-2-1-3)にするかという中盤の配置のオプションがあり、それを橘田のポジショニングで変形させる。さらに、守備時には4-4-2になるから、ビルドアップ時の2つのオプションに加え、守備時の4-4-2と3つのフォーメーションを使い分けていたことになる。
アントラーズも攻撃時は4-2-1-3、守備時は4-4-2
アントラーズも攻撃時は4-2-1-3。これはフロンターレの4-4-2に対し、アントラーズの4-2-1-3が攻めかかっている状況。二列目はピトゥカが入ることもあるが原則は荒木。
なので、どちらが攻めていようとも、4-2-1-3対4-4-2の形になっていることになる。フォーメーションが違うのでミラーゲームとは言わないのだが、同じ陣形が180度違うかたちで描かれるのはある意味面白い。
上田綺世の非凡さ
今回取ったフィールド写真で一番気に入っているのがこのショット。
ボールを持っているのはトップ下の荒木。それをフロンターレはシミッチと橘田で挟む。
一方、上田綺世が降りていてゼロトップ的なポジション。フロンターレの最終ライン4人が中央に集められていて、しかも誰もマークしてない。左右のスペースに和泉とファン・アラーノが立っているが、2人ともフリー。上田もフリー。上田の動きで、最終ラインが遊んでいるような形にさせられてしまっている。
こうなると、フロンターレとしては荒木からボールを取りきるしかない。2人が外されたらほぼ自動的に決定機になるのが確定的な状況だ。この一枚で両チームの「時間を止める」ことで、そういった駆け引きを読み取ることができる。
下の写真は似たようなパターンで、今度は上田が裏抜けを狙っている。
やはり上田は、守る側としては非常にやりにくいフォワードだ。
攻守で変形するとは言え、攻める方はいずれも同じ形、守る方もいずれも同じ形、と言うことになるとフォーメーション上の優劣はないことになる。あるとすれば、そこに入る選手とフォーメーションの相性だったり、マッチアップの相手との力関係。ここについては、ボール奪取マップを見てみるとよくわかる。
ただし今日は2000字を超えてしまったので、それについては次回にしたい。レビューしたい試合もたまっているので本当は一回で終わらせたかったのだけれど。
(続く)