大学教員になりたい人へ Vol.2 ー日本学術振興会特別研究員に採用されると有利になる?ー
今回は大学教員になりたい人への第2弾になります。第1弾についてはこちらから確認してください。
さて、今回は大学教員になりたい人は日本学術振興会特別研究員になることを目指すべきかどうかという話です。ご存じの方には日本学術振興会特別研究員という長い名称よりも学振という略称の方が馴染みが深いと思います。
よく院生に聞かれるのは「学振になった方が就職に有利なのでしょうか?」という問いです。過去に私も学振だったことがあるので色々と聞かれることも多いのでしょう。今回はこの問いに対する私の見解を述べていきます。
日本学術振興会特別研究員って何?
日本学術振興会特別研究員とは日本学術振興会の「特別研究員制度」のことです。
日本学術振興会のホームページから特別研究員制度について見ていきましょう。ここでは大学院博士課程在学者が対象のもののみ取り上げます。
ほかにも博士の学位取得者が対象となっている特別研究員-PDなどがありますがこちらに応募を検討する方は制度のことを十分に知っておられると思いますのでここでは割愛します。
要点だけまとめると日本の優秀な若手研究者に大学院博士課程在学中の2〜3年の間に月に20万円の研究奨励金をあげるよという制度です。
2023年度はDC1の採用率17.3%、DC2の採用率18.5%がとなっています。毎年の傾向をみていると応募者の5人に1人が採用される感じです。学振に応募していない大学院生も多数いるので大学院生全体の%はもっと下がります。
ほかに「特別研究員奨励費」と名がついた研究費がもらえたり、多くの大学院では学費が免除になったり、学費相当の奨学金がもらえたりします。
研究に専念できる環境が用意されるわけです。
大学院に進学せずに就職したらもっと稼げるのではないか?という話もあるのですが、仮に就職すれば自分の研究に基本的には専念できないわけですし、その点では比較できないでしょう。
学振を取りにいくべきか?
博士号取得を希望する修士課程在学者や博士課程在学者は絶対に取りにいくべきです。もちろん、大学院によっては月に20万円程度の研究奨励金等を別途用意している場合もありますが、大学教員になりたいなら学振を取れるなら絶対に取りにいくべきだと私は考えています。
大学教員になりたい人が学振を取りにいくべき理由
学振の採択者でなくても十分に大学教員になれます。採択されようが採択されてなかろうがそれで人生が決まるわけではありません。しかし、頑張って応募するか応募しないかではその後の人生は大きく変わってくると思います。だからこそ、絶対に取りにいくべきなのです。
取りにいくべき理由としては
①自分の業績を客観的に見ることができる
②自分の研究の客観的な評価を見ることができる
③科研費を取りにいく練習ができる
が大きなものだと私は考えています。
他人と同じ土俵で競い合うことによって今の自分に何が足りないのかも分かります。これから大学教員を目指すことということは公募も含めて競い合う日々です。
競い合う力をつけなければ、どこかの大学から教員のポストをいただく(一本釣り)以外に道はありません。
大学教員になるための最初の関門なので絶対に挑むべきなのです。
採用されようがされまいが、その努力は必ずあなたが大学教員を目指す上で役立つものです。
私の戦績
じゃあ、小辻はどうだったんだと思う人もいると思います。
修士2回生(特別研究員-DC1の挑戦機会)→学振など知らずにDC1に応募せず。
博士1回生(特別研究員-DC2の1回目の挑戦機会)→学振のことを初めて知るも不採用。
博士2回生(特別研究員-DC2の2回目の挑戦機会)→悔しさから学振の採用傾向を分析しDC2に採用。
このように私は2回目の応募で採択となったわけです。正直に言ってDC2の1回目の不採用は凹みました。あとから考えてみれば、2回目の私からみても1回目の私は不採用だと思います。研究の業績が明らかに足りませんでした。
凹んだ後は同年代の他の研究者がもらっているであろうと考えると悔しくて自分に何が足りないのだろうか考える機会になりました。
そして2回目に向けて過去に採択された先輩院生等の学振申請書や科研費ノウハウ本(私の頃学振ノウハウ本はなかった)などをひたすら読んだほか、私の評価点を徹底的に分析しました。
本来、院生ならその徹底的な分析は研究の方に向けるべきなのですが、学振に採用されることによって進められる研究(訪問調査や資料収集のための資金)を比較した場合、明らかに学振に採用されることが最優先となりました。
自分の研究の業績を増やすこと、そして研究内容を他者に伝える力を高めることに力を注ぎました。
採用されるか否かについては運もあるとは思いますがどれだけ学振のために時間を使うかによって、採用の可能性を高めることができると信じています。
学振採用は経歴として有利にはたらくのか
これについては正直、よくわかりません。日本学術振興会によると特別研究員-DCは、5年経過後調査では68.4%が「常勤の研究職」、10年経過後調査では78.2%が「常勤の研究職」に就いているそうです。私もその一人になります。
とはいえ、教員を採用する上で学振だったことをすごく評価されたなどという話はあまり聞いたことがありません。私の仮説にはなりますが学振の間に研究奨励金(給料)および科研費(特別研究員奨励費)をもらうことができるので研究を進めやすい環境に身を置くことができるがゆえに採用されやすい業績や実績を残すことができるのではないでしょうか。
学振に採用されても不採用でもそれであなたの輝かしい研究者人生が約束されるわけでもされないわけでもありません。
あくまでもスタートですし、応募する経験こそが研究者人生において有意義なものになることを願っています。
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