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どのような人がフェイクニュースを拡散してしまうのか?(論文紹介)

この情報が正しいかどうかを見極めることは、現代社会においてますます困難になっています。特に、インターネットとソーシャルメディアの普及により、私たちは多くの情報に触れ、真実と嘘を見分けることがますます難しくなっておりフェイクニュースが社会問題の1つとなっているのです。このようなフェイクニュースの拡散はどのような人たちによって行われているのでしょうか?Scientific Reportsに採択された"Ability of detecting and willingness to share fake news"では、イギリスとドイツにおけるアンケート調査によってどのような個人レベルの特性がフェイクニュースの拡散を引き起こすのかについて調査を行っています。

彼らは、イギリスとドイツの2カ国で18歳以上の2379人 (イギリス: 1156人、ドイツ: 1223人)に対してアンケート調査を行いました。アンケート調査ではどちらの国でも拡散された10個のニュースのヘッドライン(そのうち5つは正しいニュースで5つはフェイクニュース)を提示し、いくつかの質問を行いました。
・そのニュースは正しいニュースか?
・次のニュースをオンライン(例えば、FacebookやTwitter)で共有することを検討するか?
などです。この質問を通じて、ユーザのフェイクニュースを検出する能力とフェイクニュースを拡散する行為、さらには、その拡散がフェイクニュースと知らずに行うものなのか?(偶発的)、もしくは、フェイクニュースと知って(意図的)に行うものなのか?を調査しました。

彼らは、これらのアンケート調査とアンケートを行った被験者の特性のデータをもとに回帰分析によって、どのような特性がフェイクニュースを検出・拡散する傾向にあるのか分析しました。

論文のTable 3より。このような回帰係数の結果からどのような特性が目的変数を説明できるかについて推定できる。

フェイクニュースの検出能力、つまり与えられたニュースがフェイクかどうかを判断できる能力については、高所得者や年齢が高い人はその能力が高い一方で、女性や中道派はその能力が得意ではないことがわかりました。この傾向はイギリス、ドイツどちらにも見られた結果です。2つの国で異なる傾向が見られた特性は学歴で、ドイツでは高等教育を受けている人の方がフェイクニュースを見抜く能力が高いが、イギリスでは学歴に依存しないという傾向が見られました。

次に、フェイクニュースの共有する傾向ですが、これに関してはどちらの国においても年齢が若い人や政治的に右寄りの人がフェイクニュースを共有する可能性が高まっている傾向がありました。

では、彼らはフェイクニュースを意図的に?もしくは偶発的に共有しているのでしょうか?アンケート調査の結果をもとにこの点についても彼らは調査しました。

論文のFigure 1より

その結果、フェイクニュースの共有は意図的な共有よりも偶発的な共有が多く、意図的な共有に関してはイギリスで若い人たちに高い傾向が見られるというものでした。ドイツでこのような結果が見られなかったのは、ドイツでソーシャルメディアにおけるヘイトスピーチに対してより厳しい取り組みが行われいることが1つの要因となっているのかもしれません。偶発的な共有を行う傾向としては、右寄りの人や若い人達によって比較的に多く行われていることがわかりました。

彼らの分析は、フェイクニュースの検出・共有の傾向について明らかにするもので、個人の特性の観点から様々な点を明らかにしました。フェイクニュースの共有の大部分は偶然であり、意図的なものはごく一部であることなどは面白い発見です。フェイクニュースの拡散に関与する要因を明らかにし、私たちが今後どのように対処すべきかを考える上で重要な示唆を与えています。

Peren Arin, K., Deni Mazrekaj, and Marcel Thum. "Ability of detecting and willingness to share fake news." Scientific Reports 13.1 (2023): 7298.
https://www.nature.com/articles/s41598-023-34402-6


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