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J2リーグ第3節 レノファ山口FC vs アルビレックス新潟 感想

2021年シーズンのレノファ山口の3試合目、アルビレックス新潟との試合は1-2で敗戦となりました。今回はその試合の感想です。


今年の新潟の強さを感じた試合の入り

2試合連続で1-2での敗戦となりましたが、そんなに悲観する内容ではなかったと思います。なぜなら、新潟の戦いぶりが見事だったからです。特に前半は、1人1人の技術力とチームとして洗練された狙いとが組み合わさり、山口としてはなかなかボールを奪うことができませんでした。

2点目のシーンは、まさにそれが体現された形でした。約2分ほどボールを保持し続け、最終的には山口の前線を引っ張り出し、阿部のキックでひっくり返しスピードアップというパターンでした。

この辺りは、チームとしての完成度に差があり、仕方がない部分も大いにあると思います。やはり今年の新潟は素晴らしいチームです。


修正の糸口を見つけた前半の残り15分

とはいえ、そんな新潟に対して無抵抗なまま前半を過ごした訳ではありませんでした。琉球戦は修正を図るまで45分かかってしまいましたが、この試合では前半の30分ぐらいから少しずつ打開の糸口を見つけていたように感じました。

まず、試合後のコメントでうまくハマらなかったという総括があったこの試合の狙いに関して振り返ってみましょう。

特徴的だったのは、ボール保持時のポジションでした。今シーズン初めて先発起用された岸田が中盤に下りてきてボールを引き出す役目を担っていました。場所としては新潟の右CHの高の周辺です(高と呼ぶのが変な感じがするので、以降はヤンと呼びますね)。

2CBが開いて佐藤健太郎がアンカーの位置、池上が右IH、岸田が左IHのような形になっていました。そして大外(基本的にはSB)と3トップといった配置だったと思います。

この配置はこれまでの2試合とは異なるもので、vs新潟を意識したものだったのでしょう。新潟の守り方に対して、内側にビルドアップの出口を作りつつ大外で時間を作りたいという狙いだったのかもしれません。

ただ、この形はあまりうまくいきませんでした。大外へのパスコースは相手のSHに消され、内側の池上や岸田にはパスを入れることすらままなりませんでした。

これが飲水タイムまでの流れでした。ボール保持は上記のような状況、非保持ではボールを奪えず、自陣でのミスから失点という厳しい展開となっていました。

しかし、飲水タイム以降の前半30分過ぎから少しずつ光が見えてきました。きっかけはビルドアップでの配置の変更です。アンカーの位置にいた佐藤健太郎がディフェンスラインに下り、最終ラインを3枚としました。

これで高木善朗に掴まれていた佐藤健太郎をいくぶん開放することができたと思います。

そして、新潟の使われたくないSHとSBの間のスペースでボールが持てるようになっていきます。ここの攻防がおもしろかったです。

新潟のSHは基本的には外切りでプレスをかけてきます。そして、内側にパスを誘導しヤンと島田で奪い切る形を狙ってきます。

そこで、まんまと奪われていたのが飲水タイムまでだったのですが、30分以降からは、少しずつ2トップの脇でボールを持つCBから、内側に下りてくるSHや中盤の選手に縦パス、そのパスをワンタッチで大外で待つサイドバックへ届けるという形でプレスを回避するプレーが出てきました。

例えば、31分42秒からの右サイドでの作りは惜しい場面でした。

後ろが3枚となり池上がアンカーという立ち位置からスタートします。佐藤健太郎から楠本へボールが渡り、その楠本から内側の高木大輔へパスが通ります(この時、星は外切りプレス)。そして、高木からワンタッチでフリーの澤井へボールが出て新潟のファーストラインを超えられたというシーンでした。

このシーンは、澤井から内側の池上へ出したパスまでは良かったのですが、池上のトラップが乱れ、ヤンにボールを奪われてしまいました。とはいえ、作りとしては見事だったと思います。
そして、渡邉監督の試合後コメントにもあった前半アディショナルタイム(46分台)の左サイドでの作りも良いシーンでした。46分台には計2回、新潟のSHの背後でフリーになるシーンを作り出しました。特に最後の高井に通ればというシーンはお見事な運びでした。

おそらく、これらのシーンがヒントとなり後半に臨んだのでしょう。後半は1度内側を使ってから大外という形が増え、交代で入った梅木も岸田より深い位置でボールを引き出してパスを受けることに成功していました。そして、田中陸も最終ラインに下りるところからアンカーの位置でボールを引き出すなど、絶えずボールを受けられるポジションを取り、ビルドアップの助けになっていました。

これまで2試合のように後半に修正を施し挽回するだけではなく、前半のうちに糸口を見つけられた点は1歩前進だと思います。


試合の中で見せる修正を勝点につなげるために

ただ、2試合連続で勝点0という事実から目を背けるわけにはいきません。新潟戦で見えた課題は2つあると思います。

試合の入りから自分たちの流れで試合を進めることができなかった
流れを引き戻した後半もアディショナルタイムまで得点を奪えなかった

①については、もう少し時間がかかるかもしれないと見ています。というのも、新体制になって3試合目であり、公式戦になってみないと選手たちが、実際の試合でどのように振る舞うのかを完全には掴めないと考えられるからです。練習で見せるプレーと試合で披露されるプレーにどれだけギャップが生まれるかは、試合でないと分からないことだと思います。そうした部分は、人間なので少なからずあることだと思いますし、あるとするならば、アジャストをしていく必要があります。

今節で3試合、選手の組み合わせの最適解も含め、そろそろ選手起用について掴めてきたところではないかと思います。個人的には、選手のチョイスや組み合わせは、もっと良くなる余白があると思っているので、これからに期待したいと感じています。

加えて、琉球は開幕戦と異なる振る舞いを見せて山口へ挑んできましたし、新潟戦ではこれまでと異なる戦い方をvs新潟用に準備したというエクスキューズもあります。そこは心配せずに見ていきたいです。

②については、この試合に限っては2つのポイントがあったと思います。1つは渡邉監督が新潟戦の試合前にコメントしていた技術の要素です。チームとして形を作っても最終的には点を奪うところは選手個人の質になってくるという話です。

新潟戦では、上記でも取り上げた31分の池上のボールが止まらなかったシーンや、後半、チャンスになりかけたシーンでのパスミスがありました。クロスの質含め、そういった技術の部分は必要になってきますので、向上を期待したいと思います。


新潟の守備を支える中盤の2人

そして、もう1点は新潟が良かったという話です。後半は山口にボールを持たれるシーンが多くなり、自分たちで試合をコントロールできていなかったかもしれません。それでも、山口に決定的なシーンを作らせなかった守備は素晴らしかったと思います。

特に中盤の2人、島田とヤンの存在は大きなものでした。島田は左足のキックがあり攻撃的な仕事も見事なのですが、ボールを奪いに行く時の強度が素晴らしかったです。いわゆる「潰しに行く」というプレーでしょうか、自分のマークマンにちゃんとアタックでき、ボールを奪い切る力を見せつけていました。

そして、ヤンです。彼の機動力とボールにアタックする時の強度は脅威的でした。山口がうまくファーストラインを突破して前の選手に時間とスペースを与えられたと思っても、ヤンが物凄い速さでカバーにきて、フリーになりきれないというシーンが何度もありました。

1つ挙げると31分のシーンです。先ほど挙げた池上のトラップが大きくミスになってしまったというシーンになります。既に述べた通り、池上のトラップが大きくなったというのは確かにそうなのですが、このシーンでボールを奪われたもう1つの要因に、右CHのヤンが凄いスピードでカバーにきていたことがあります。

このカバーがあったからこそ、あれぐらいのトラップミスでボールを奪われることになってしまいました。

新潟のSHが外切りのプレスで相手を内側に誘導しているのはこの2人でボールを奪えるという確かな自信があるからだと思います。そして、その期待に応えボールを奪取し続けるこの2人は攻守に置いて重要な選手であると言えます。


次の試合に向けて

新体制の山口から見れば、今節戦った新潟とはチームとしての完成度に確かな差がありました。新潟の2点目は昨年から積み上げてきたものがぎっしり詰まった、ある意味どうしようもない失点だったと思います。

とはいえ、やられっぱなしで終わる試合にはしませんでした。これは必ず次につながるものですし、新潟との2試合目はもっとやり合えるのではないかという期待も持たせてくれました。

方向性は間違っていないと思います。それを証明するためにもまず1勝、次もホームですから、やってくれると信じたいと思います。



*文中敬称略

*この試合のハイライトはこちらです。


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