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ロンドン大学 演劇学部 1年生3学期

30歳を目前にしてスタートした大学生活の1年目が、無事に終わりました。人生のターニングポイントって、こんな感じで来るんだなって思いながら過ごしてます。このコロナの時期に、ヨーロッパで一番新しい演劇を教えて貰えて、毎日英語で暮らして、20歳くらいの子たちと話してます。これが後2年も続けられるのかと思うと、目眩がするほど幸せです。トップの写真は、イギリスで一番古い書店 ハッチャーズの店内の階段です。

今学期の必修授業

今期の必修は、「グループワーク」の一つだけでした。6、7人のグループに分かれて、それぞれが担当を決めて、2ヶ月で10分程度の作品を2つ作ります。1つ目と2つ目で、担当を変えなければならず、僕は、1つ目に舞台美術、2つ目に照明を選びましました。作品のテーマは「ブルース」で、舞台作品に限らず、何を作ってもいいです。ルーツである黒人差別の歴史にフォーカスした野外劇があったり、映画「ブルース・ブラザース」のようなテイストで、ブラックカルチャーへのオマージュをしている映像作品もありました。こんな感じ。

授業の進み方

今学期は、かなり自由度が高かったです。定期的に講師が進み具合を確認するミーティングがありましたが、時間割は無く、実質的には試験日である本番に向けて、稽古、舞台美術や衣装の制作、リハーサルのスケジュールなど、全てを話し合って決めます。僕らのグループは、平和な子達がたまたま揃ったので何も問題は起きなかったんですけど、他のグループでは、細々と様々な問題が起きていたらしいです。そんな時も講師達は必要以上のケアはせず、基本的には放っといてました。こりゃ現場での失敗を擬似体験させているんだな、と思っていました。時間割がなかったので、今までのように1週目、2週目、と整理して書く事ができません。そこで今回は、この2ヶ月を通して感じた事や書き残しておきたい事を纏めました。ちなみに、1学期目と2学期目の記事はこちらでご覧いただけます。

1作目

1作目は舞台作品でした。セサミストリートみたいな感じで、パーソナリティーの隣に座ったパペットに、昔話を読み聞かせている構成です。昔話の内容は、「ある村に、不思議な色の蛇がやってきた。子供たちは、その蛇と仲良く遊んでいた。しかし、ある日を境に、次々と子供たちが居なくなる。村人は、あの蛇が食べたに違いない、と騒ぐ。そこにやってきた騎士が蛇を退治して、めでたしめでたし。ただ、誰か一人でも、あの蛇が犯人だという証拠を持っているのでしょうか?」という内容。つまり、蛇は黒人の比喩、騎士は白人の比喩です。そして、パペットは、男で肌が黒色。パーソナリティー役は、白人の女の子でした。この辺は、日本じゃ使わないバランス感覚です。

僕が考えた舞台美術は、まず、スタジオ一杯にぬいぐるみや風船を敷き詰めて、そこに、段ボールで作った大きなテレビフレームを置きました。そのフレームの中でテレビ番組が進んでいって、昔話のシーンは、テレビフレームの外枠を使って影絵で表現しました。下は、影絵の仕掛けを作っている様子です。

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舞台っぽいじゃーん!と一通りはしゃいだ後、ちゃんとした写真を撮り直そうとしたのがこちらです。

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イマイチ乗り切れてない小林をお楽しみください。

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その後、

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こうなって、

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こうなりました。上手にできました。ちなみにこれは、動きの確認用に撮った動画のスクショです。美術の全体像も撮っときゃ良かったんですけど、無いです。グループ全体の写真も無いです。ただ一枚、スタッフのチームワークを褒められて盛り上がってカッコ付けて撮った写真だけは、大事に大事に保存してあります。変わりばんこで、みんなが真ん中になって撮りました。スタッフチームの4人です。嬉しかったんで見てやってください。

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ト、モ・・・ダチ。となってる小林の顔面です。微笑ましいですね。

2作目

2作目は、映像作品。物語は、「ホームレスの男が、物乞いして集めたお金でサックスフォンを買う。それを演奏してお金を稼ごうとするが、結局、凍え死んでしまう。その後、男が使っていたサックスフォンを、ある女が買う。すると、彼女の身に奇妙な事が起こり始める。それは、男の霊の仕業だった。ついに、女と霊が対峙する。しかし霊は、サックスフォンが演奏したいだけだった。満足げに演奏した後、男の霊は姿を消す。」という内容です。いくつか照明が大変だったシーンを紹介させてください。

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これは、ホームレスの男が死ぬシーンです。学生寮の壁の電灯を段ボールで囲ってスポットライト風にしました。なにせ予算が2作品合わせて一万円分くらいしか無いので、工夫工夫の連続です。

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これは、パソコン画面を見ているシーン。彼女だけを照らす為に、周りを布で囲って、パソコンの前にスマホの懐中電灯を置きました。

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幽霊と対峙する前のシーンでは、「ブルース」の語源である「ブルーな感情」にちなんで、灯りを青くしました。

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こちらは、奮闘している小林です。ついでにご覧ください。授業の話はそんな所です。今回が初めての作品作りなんて子も珍しく無かったので、そのフレッシュなエネルギーに感化されていました。初心尊い。この他に印象的だったことを、2つ3つ書いてみます。

若者言葉に追い付けない

若者、しゃべるの、メッチャ速い。体感では2倍速で聞いてるくらいです。普通のスピードでも必死なのに。これは、日本の子でも一緒なんでしょうか。でも確かに、僕も20歳くらいの時は、もう少し話すのが早かった気がする。それから、スラングは辞書に載ってないので調べるのが大変です。盛り上がってくると全く付いていけません。「www」「マジで草!」「大草原w」とか言ってる時に、僕一人だけ「ん。アウトドアは気持ちが良いわな。」ってなってるくらいの感覚です。同じく悩まされたのが、あるあるネタや、懐かしの〇〇が分からない事です。例えば、学生時代を日本で暮らしていれば、「修学旅行に携帯をこっそり持って来た。」という一文だけで、これは中学か高校あたりの話かな、京都・奈良・東京?、ダミーの携帯を担任に渡したのかな、自由時間で友達と待ち合わせに使う、恋人とも待ち合わせちゃったりなんかして、バレて没収されてる奴いたな〜、なんて、かなりの情報量を得て、その上で、この裏にある甘酸っぱい青春のニュアンスを汲み取ることができます。でもこれは、留学生からすると、難易度が高過ぎます。ただ、こういう空気感の共有が作品作りには大切なので、お互い根気よく擦り合わせました。その中で、知らなかった事を知れたり、こっちのあるあるネタも日本と変わらないんだなって笑えて楽しかったです。

講師 VS 生徒

発端は、3学期目の初日、4月中旬に行われたオリエンテーション当日にまで遡ります。先ほども書きましたが、今回のグループワークのテーマは「ブルース」でした。ご存知の通り、ブルースが成立した背景には、アメリカでの黒人差別があります。しかし、今回のテーマを説明する際に、講師たちが『ブルースの背景にある黒人差別』に触れなかった事に、生徒側がとっても怒りまして、これについての論争が、この学期中ずっと続きました。講師たちは「ブルースが関係してさえいれば、どんな作品でも評価する。必ずしも人種差別に基づいた作品である必要はない。」という立場。対する生徒たち、「意図は分かるが、ブルースの背景にある黒人差別に目を向ける必要があった。それを認めるべき。話はそれからだ!」という立場で、一貫して対立。結局、決着は付かず、学期中に起きた他の懸念とも合わさって対立は深まり、遂には第三者が立ち会ってのオープンミーティングを開催する事態にまで発展。最終的には、これを踏まえて来年以降の授業の内容を見て、必要であれば改めて、という事で軟着陸。こういう話題は、日本じゃ何となく避けられる事が多いと思います。その問題について、大学に入ったばかりの若者たちによって、積極的に提示されていたことが刺激的でした。

最近のロンドン

大学生活の話はこの辺にして、最近のロンドンについてです。先月から、美術館がオープンしました。観光客が一人もいない美術館を満喫しています。イギリスの美術館はどこも無料なので、休みの日は、朝起きて、気が向いたらお散歩がてら美術館に行って、好きなエリアだけ観て、館内のカフェで軽く昼ご飯を食べるっていう、贅沢すぎて夢?って使い方をしてます。

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コロナ事情について。イギリスは、まだまだ新規感染者数が多いです。今日の数字が、全国で5966人でした。日本の2245人と比べると、約2.5倍です。しかし、街は収束ムード。特に屋外ではマスクをしない人がずいぶん増えました。一年以上に渡る厳しいロックダウンの、計画的な解除中ということですから、気持ちは分かりますが不安です。

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ちょっと前まで外には誰もいなかったのに、今ではレストランもお店も通常通り営業してます。この夏に人が動いて、秋くらいにもう一回くらいバコンと数が増えんじゃねえかと心配しています。

まとめ

そんなこんなです。
お陰様で、無事に1年目が終わりました。体調を崩す事もなく、学校ではお弁当を隠される事もなく、パシリにされる事もなく、ときどき飲み会に誘ってくれるくらいには受け入れてくれたので、安心しています。9月に、自分の劇団で公演があります。新作と、過去作品の再演の2本立てです。2年ぶりの劇場公演です。7月頭には稽古が始まるので、それに合わせて帰国します。最後の学期が終わったばかりで、何だか体に力が入らず、頭がボケーっとする日が続いています。しかし、そこは大人ですから、バシィンッと切り替えて頑張ります。

楽しい夏にするぞ!エイ!エイ!オー!

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