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9月の日記

9月が終わった。
というか最早、10月も終わろうかという今日である。
手慰みとして始めたこのnoteに、雑多な文章をいくつか書き連ねた後、気付けばいつの間にか一ヶ月の空白が生まれていた。先月の私は、「自身は堂に入った三日坊主であるから、来月・再来月と継続していけるかは不明である」と述べていたが、正にその通りになってしまったという訳だな。それでもギリギリ10月の内に間に合ったので良しとしよう。

ずぼら此処に極まりという形だが、気が向いた時に、ふらと立ち寄るくらいが丁度良いのだろう。今月も、そんなゆるさを楽しんで頂ければ幸いです。




・はじめに 秋の始まり


季節の移ろいを感じる今日この頃。
つまりどういうことかというと、秋である。

日差しの鋭さが小ましになったかと思えば、朝晩の寒暖差に身を震わせる時期になっていた。今年の夏は特に長く、噂によると9月の暑さ (平均気温とかいうやつ)は過去最高だったらしい。いつまでも続くのではと錯覚するようなそれが和らいだのは、いつからだったのか。

これを書いている今、私は薄手のブランケットをひざに乗せている。傍らには温いほうじ茶の入ったマグカップ。汗ばむ陽気は失せ、どんよりとした曇天がこちらを睨めつけているよう。七分丈のシャツから覗く腕は、宵の冷たさに泡立って、あんなに疎ましかった夏が、途端に恋しくなるような錯覚を覚えるのだ。嗚呼、夏が去ってしまった。

物悲しさの向こう側、蜃気楼のような日々を思い返して私は日記を書こうと思う。以下はその記録である。
よろしくね、私より。



・9/3(日) ネイルに行った


前回から大体一ヶ月が経過したので、ネイルサロンに行ってきた。艶々の赤色は今も美しいままだったが、伸びた根元の部分がちょとばかし不格好だったので。というか普通に予約の日になったので行ってきた形である。

ちなみに今回のオーダーは「来週法事があるのでシンプルにすべきだが、他愛もないワンカラーでは飽きが来ると思うので何となく一捻りあるようなものにして欲しい。でも法事があるので派手なのは嫌だ」とか言う、我が儘放題ガールズモード・難易度ナイトメアだった。担当は前回同様ピンクの髪が大変キュートなお姉さんである。依頼しておいてなんだが、多分その内に出禁にされちゃうんじゃないかと思うなどした。(多分そんなことはないだろうが)

潔く諦めて無難なナチュラルワンカラーネイルで妥協しておけよ、と言ったのは内なる善性の声である。ぶっちゃけそれはそう。でも諦めたくない。地味さと清楚さと可愛さと大人っぽさと意外性を兼ね備えてほしい。馬鹿たれがよ。

そして出来上がったのが「透明感のあるミルキーベージュ、繊細ラメと仄かな偏光グリーンを添えて」である。一見地味な肌なじみ〇ワンカラーなのだが、シャンパンのきらめきを思わせるラメのちらちらとした美しさと、角度によって見え隠れするベースに施された控えめなエメラルドグリーンの艶めきが最高だった。地味さと清楚さと可愛さと大人っぽさと意外性を兼ね備えた最強(×さいきょう、〇さいつよ)ネイル。お姉さん大好き。絶対来月もお願いする。私はすぐさま予約をすると、クレジットを切った。最高。永遠に爪見ちゃうもんな、へへへ。



・9/10(日) 祖父の七回忌


法事、母方の祖父の七回忌があった。
よくよく晴れた、朝方のことである。

扇風機だけが回るお寺で、私たち家族は並んで座していた。おっさん(私の地元ではお坊さんのことをおっさんと呼ぶ。オッサンとはイントネーションの違いで判別する)の延々としたお経と、線香の匂いだけを感じ取りながら、私は戒名とかいうこまっしゃくれた名前で呼ばれる祖父との思い出を思い返そうとして、どうにもその声が思い出せないことを悲しく思っていた。笑った声、怒った声、悲しそうな声、私を呼ぶ貴方の声。貴方はどんな声色をしていただろう。機嫌が良い時は、よく歌を口遊んでいた。もう思い出すことも出来ないそれが、私はきっと好きだったのに。

私は所謂、おじいちゃん子だった。それは私が、母方の祖父母と、母の妹である叔母に育てられたということが大いに関係すると思う。母親はいたが、父親はいなかった。だがそのことに不自由を感じたことは一度もなかった。私は一人娘の初孫で、それはそれは可愛がられてきた。その中で、誰より私を甘やかしてくれたのが、祖父だった。

祖父は私にたくさんのことを教えてくれた。たくさんのことを知っていて(今思えば、祖父は趣味人であったので、自身の興味のあることに詳しかったという方が正しいのかもしれない)それを惜しみなく私に与えてくれた。沢山の経験を積ませてくれた。誰かと比較したりしなくても、幼少期のことを思い返す度、そこには決まって祖父がいた。背が高く、すらっとしていて、いつも身綺麗で格好良い人。きちんと整えられた髭と、整髪料のにおいがする、そんな人。お酒と甘いものが好きで、禁煙はぴたっと成功させられたのに、糖尿病が怖いからと控えるように言われていたあんぱんはこっそり食べちゃうような、そんな人。時代にそぐわないような古臭い考えの中に、それでも私を心配してくれているとわかる確かな優しさがあった。

私が覚えている一番古い祖父との記憶は、幼稚園に通っていた時分のことだ。と言っても、細部まで詳細に覚えているわけではない。白い靄がかかったように朧げな記憶の中で、所々が街灯に照らされているように鮮明になっているようなイメージ。祖父はドライブが好きで、水族館や、牧場や、市場や、海、花見など、ありとあらゆる所に私を連れて行ってくれた。

自転車の練習も、祖父とだった。上手く乗れるようになった頃、少し遠くの海の、堤防の一番端まで出かけたことがあって、帰宅するなり祖父は、祖父以外の家族に大層叱られていた。まだ小さい子に無茶をさせて、と。けれども私はとても嬉しかった。いっぱしの大丈夫になれたような、誇らしく、また清々しい気持ちだった。潮風のべたつき、暮れていく夕日。スマホなんてなかった。それでも唯々、幸せだった。

人間の記憶の中で、一番最初に失われるのは「声」だという話を聞いたことがある。こんなにたくさんを覚えているのに、それでも私は彼の人の音が思い出せない。ならばいつか、その全てを忘れてしまう日が来るのだろうか。米神から流れた汗が、頬を伝う。私はあと何度、祖父を偲ぶことが出来るだろう。願わくば永遠を思いながら。



・9/11(月) ごはん会 in ホルモン


不平不満というやつは、どこにだって現れる。

あんな所やそんな所、貴方の傍にだって現れるのだから、私の傍にだって現れるに決まっている。文句ばかり吐いていては人間の質が下がっちまうと言うけれど、だからといって溜め込みすぎるのも身体に良くないはずだった。適度なガス抜きというのは、万物において有効だから。気心知れた友人と管をまくか、或いは当たり障りのない距離感の同僚と薄らぼんやりとした噂話程度の愚痴で盛り上がるか。今日の予定は、後者だった。

二度目の開催となった「ごはん会」は、私と、かつて私の直属の上司だった他部署に移動済みの女性と、業務的には完全に関わらないが美味しいものが好きという点で意気投合した他部署の先輩という女三人からなる会である。美味しいものを食べ、話半分くらいの愚痴と噂話に花を咲かせる、そんな会。私以外の二人はTVドラマがお好きらしく度々話題に上がってくるのだが、特に気を使って「次回の話題作りのために拝見せねば!」などとする必要のないくらい、ルーズな集まりだった。気楽だし、普通に楽しい。初回は二ヶ月ほど前に開催されて、その時も各々微妙にたくさんの不平不満を抱えていたから、ストレスの溜まり具合がスパンの目安なのだろうなと思っている。他の二人は違うことを考えているかもしれないけれど。

そして今日は、ホルモン焼きだった。
初めてのお店ではあったが、時間ギリギリまで残業をしていたから、現地集合と相成った。扉をくぐるとカウンターが少しと、テーブルが3席ほど。店の一番奥、壁際に案内されると骨付きカルビの張り紙がしてあるのが目についた。「私あれ食べたいです」席に着くなりそう言ったのは、なによりお肉が好きだと豪語する先輩だ。お米は要らないのでその分たらふくお肉が食べたい。めちゃくちゃ分かる。私は隣に座った彼女に向けて深く頷き、メニューを広げた。メインを飾るのはホルモン焼き。色々な部位がごちゃ混ぜになっていて、それにしっかりと味付けがされているタイプ。辛いのと辛くないのを注文することにして、その他もいくらか選んでいく。どれもこれもが美味しくて、気付けば黙々と食べ進めていた。ふと息を吐いて、お茶を飲む。脂っこさを烏龍茶が洗い流していくような感覚。

「黒烏龍茶飲んでるから、何食べてもチャラだと思いませんか」「そうかもしれませんね~」

適当な話を続ける私たちを見て、上司がぼんやりとした笑みを浮かべる。馬鹿な子たちだなあと思っているのだろうな。構わない。ほっと気が抜けたような時間があるというのが、大切なことだと思うので。

次回「お昼休みに西インドカレー食べに行こうという話になって、会社から5分の所にあるから余裕で間に合うだろうと高をくくっていた所、予約時間を1時間間違えていてチキチキ15分以内に本場スパイシーラムカレー~ライスとチャパティ、その他諸々を添えて~を食べ切らねば間に合わぬ事態になってしまった、大変申し訳ない……!!」

お楽しみに!!



・9/15(金) 友人と焼き肉


高校時代からの友人と、焼き肉に行ってきた。
お礼を兼ねて。ちなみにこれは定期イベントである。

先日もその類の記事を載せたところではあるが、私は趣味で二次創作の小説を書いている。そしてある程度の周期(年に数回)でそれらを本にしては頒布しているのだ。つまり、自身ではない第三者に有難くも有償で作品を見て頂いているという形。二次創作の特性上、利益を上げるなどという真似はしていないが、それでもお見せするならきちんとしたものを見て頂きたいという気持ちにはなる。そこで登場するのが彼女である。

彼女は、いわば私の校正担当なのだ。
私以外で一番初めに私の作品を読んでくれるのが彼女で、誤字脱字や、文言の不統一(P.22で「唐揚げ」と書いているのに、P.56では「から揚げ」になっている)のチェックをしてくれている。ド平日の夜中3時に「02.pdf」とだけ書かれた得体のしれないファイルだけを無言で送りつけてくるようなやばい人間にも優しくしてくれる、よくできたお嬢さんこそが彼女なのだ。

はじめは己の妄言に塗れた怪文書じみた何かを見てもらうのがひどく恥ずかしく、また忍びなかったのだが、社会人にとって時間とは極めて有限だ。見通しの甘さや、不慮の事故(職場で仕事を山のように押し付けられたのが締め切り1週間前だったりとか)のせいで、私はいつも切羽詰まっていた。つまり、恥も何もかなぐり捨てて、唯々頭を下げる他ないという話。何なら今回は他人の作品まで預かったP.200越えのアンソロジーを企画していたので、もう本当にほんとうにご迷惑をおかけした。読み慣れていない作風の校正というのはどれだけ大変だったことだろう。文句の一つも言わずに手を貸してくれた彼女には、感謝の意が絶えない。いつも本当にありがとう。転職が上手くいくことを祈っています。春になったら旅行に行こうね。私より



・9/16(土) 幼馴染と温泉


幼稚園からの付き合いがある幼馴染と、温泉に行ってきた。
社会人になってからは年一くらいで会っている友人である。

祖父同士が知り合いだったところからの付き合いで、幼稚園も小学校も中学校も高校すら同じだったし、なんなら塾だって同じだった。彼女はいつも正しいを為す人なので、時折意見の相違(私という人間がとてもだらしのない質をしている為)はあったが概ね仲は良好。趣味が似ていることもあり、ゆるやかな友人関係が築けていると思う。ので、温泉に行ってきた。

ちなみに、私に小説の書き方を教えてくれたのは彼女である。今はもう筆をとることをしていないとは言っていたが、幼い日の素敵な思い出の一つとして忘れることはないと思う。

次回はどこに行こうかな。



・9/29(金) ごはん会 in インドカレー


次回予告の通りなので割愛。

「お昼休みに西インドカレー食べに行こうという話になって、会社から5分の所にあるから余裕で間に合うだろうと高をくくっていた所、予約時間を1時間間違えていてチキチキ15分以内に本場スパイシーラムカレー~ライスとチャパティ、その他諸々を添えて~を食べ切らねば間に合わぬ事態になってしまった、大変申し訳ない……!!」

強いて言うなら、10分少々で、熱々スパイシーなマトンカレーをかっこむのは無理があった。滅茶苦茶美味しいのに死ぬほどせわしないし、刺激物が怒涛の勢いで胃にぶつかるからお腹が吃驚していた。私も吃驚した。次回からはこんなことのないように気を付けたいと思います。懺悔。


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