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紙ものあれこれ1:人生で初めて作ったZINEのはなし

今日はくらしの学校や、私個人で作っているZINEや紙ものについて、なかなか書ききれないあれこれを書いてみたいと思います。

本や紙ものが大好きで、気に入った紙ものを集めに集め、集まったお気に入りのフライヤーやDMファイルの厚みが60cmを越えてもなお、ぎっしり詰まった未整理の箱がある、そんな具合の人が作った紙ものあれこれの話です。

くらしの学校とは? についてはぜひこちらをご覧ください!

人生で初めて作ったZINE

大学時代に展示用や自分用の本を作ったことは何度かあり、
美篶堂さんの本やデザインのひきだしを読みふけって独学で手製本を学んでいたました。

名古屋から東京までわざわざ印刷博物館の「世界で最も美しい本コンクール」を見に行って、
製本やあれやこれやのメモでノートをいっぱいにしたり、
4年次に棚ぼたのように来てくれたブックデザインの教授の元で、
卒論も卒制も製本中心の内容だった、の、ですが

なんででしょう、販売用の本はなかなか作れずにいたんですよね。
そんな重い腰を上げて初めて作ったのが、こちらの本です。

Le Corbusier “UNE PETITE MAISON"

人生で初めて作ったZINE

建築家の久米岬さんと作った、ポストカードサイズの小さな小さなZINEです。
2022年9月のコミティアに合わせて作りました。

ル・コルビュジエが両親のために設計した「母の家」について、
「こんなに面白くって魅力的な家なんですよ!」という思いをぎゅぎゅぎゅっと詰め込みました。

本文の文章を久米さんが、イラストと手書き文字、デザイン、編集を私が担当しています。

(なんで重い腰が上がったのか書きたかったんですが、私も久米さんもなぜか1年前のきっかけが思い出せません。記憶喪失……)

昔から絵本の見返しなんかが大好きで、どうしても表見返しに印刷をしたくて、コストとにらめっこしながら作りました。表紙はゆるチップ。表は白、裏はグレーという仕様が可愛くってお気に入りです。遊び紙には純白ロールを入れました。
見返しの図面は久米さんが描いてくれたものを、ちょっと古びた感じにハーフトーン加工しました。

そしてこちらが新装版! ありがたいことに初版が残り少なくなってしまったので、2023年3月の紙博に合わせて新装版を作りました。「老眼に厳しい」というご意見をいただいていたりもしたので、ひとまわり大きなB6サイズです。

実は初版のゆるチップ×オンデマンドがどうしても光沢が出てしまうのが気になって、うーんうーんと悩みに悩んで紙や印刷なども色々と仕様変更しました。

新装版の一番のお気に入りポイントはタイトルの活版印刷! 中野活版印刷店さんがとってもとっても恰好良く印刷してくださいました。実は最初リソで印刷する予定だったのですが、ボール紙はどうにも難しい、ということになり、予算を再計算。あれやこれやと悩んで落ち着いた形ですが、最終的に一番のお気に入りポイントになりました。中野さんには新装版の印刷を考えるにあたって本当に色々相談に乗っていただき、感謝の嵐です……。

初版、新装版どちらも表紙の厚紙に幅広の帯を巻いて、本文と一緒に糸綴じしています。フランス装のような折り返しにしたくて、帯も厚めの紙に。グラフィーCoC ホワイトを使用しています。初版は革細工用の糸をそのまま使っていたのですが、新装版を作る際にもう少ししっかりした糸にしたいな、と思いロウ引きのリネン糸に変更しました。

ツヤツヤしてとっても綺麗!

お値段なんと3巻+送料で5,000円という人生で出会った中でいちばん高級な糸でしたが、1冊辺りのコストにするとそこまで大きくないのと、やっぱり質感が一番良さそうだったので、思い切って。ぴゃーっと変な声を出しながら購入しました。ロウ引き糸の世界ってもっともっと高い糸もあるそうで、こ、こわい……。でも届いたらやっぱりとってもいい質感と色でよかったな、と思っています。ZINEをお持ちの方は、ぜひ糸にもご注目ください。

新装版の見返し(遊び紙)

新装版では、表紙をグレーのボール紙にしたので中の見返しに色をつけました! こちらはディープマット にリソグラフの白インクで、初版の表見返しに印刷していた図面を印刷しています。とっても深みのある赤がお気に入り。

本文には初版・新装版ともにざらざらとした柔らかい風合いのアドニスラフを使用しています。
日焼けしやすい紙で、時間が経つにつれて味わいが出るのも嬉しい(上が新装版で、下が約半年前に作った初版)。

新装版を作った際に、紙1枚分、4ページだけ中身を増やしています。こちらが増やした序文。短いですが、ふたりで随分唸って生まれた一文です。

初版は巻末に奥付を載せていましたが、私の大好物の古い海外の本を真似て、新装版では表紙裏に移動。

基本はタイトルと序文、奥付のページのみグレー1色、内容のページはワイン1色の印刷なのですが、
新装版では最後に水彩フルカラーの絵を2色に分版して印刷したページも増やしました。
ズレも含めてとても良い感じに出てくれました〜!

その他、A規格からB規格への変更するにあたってレイアウトを再調整&小さな絵を足したり、一部のイラストを描き直したり。実は全く手直ししていないページの方が少ないです。

こちらはまるっと描き直した1枚
実は表紙も描き直したんですが、帯にはめてみたらなんだかしっくりこず、元々あった絵に戻しました。愛犬のお散歩をするコルビュジエ、絵としてはとってもお気に入りなので、また別の何かが作れたらいいなと思っています。

ノンブルも、小口側に配していたものを、目立たず、内容の邪魔にならないノド側へ。

初版のノンブルは小口側中央に配していました。これはこれで好き。

ちなみに印刷所から各素材が届いた後の作業(新装版)はこんな感じです


  1. 表紙、帯、見返しをそれぞれ半分に折る
    (表紙は背割れがないようにスジ入れしてから)

  2. ホチキス中綴じされた状態で届いた本文に、糸綴じ用の穴を追加で空ける

  3. 本文を留めているホチキスを外す

  4. 表紙、帯、見返しを重ねてセットして、本文と同じ位置に穴を開ける

  5. 全て揃えて糸で綴じる

  6. 帯を表紙に合わせて折り返す



て、手間!!!!

なんでそんな七面倒くさいことを……!!

とお思いの方、いや、全くその通りです。

でも、だって、せっかく作るなら自分たちがグッとくるものにしたい!!

ということで、紙好き、凝った製本好きとして恥ずかしくないときめき仕様を考えてこの形に落ち着きました。ひたすら手のかかる製本に巻き込んだ久米さんには申し訳ないと思っています。ごめんね。

でもおかげで、何度手に取っても「かわいい〜!!いい本!!」とふたりで自画自賛できる大満足の一冊になりました。

ちなみに新装版を作るにあたって色々手直ししてはいるのですが、初版もまた別の良さがあって、どちらも気に入っています。

さて、たった20P足らずの1冊(2冊?)のZINEについてだけしか書いていないのに、このnote、3,000文字以上あります。大学のレポートか……? ごめんなさい。でも最後にこれだけ。

新装版を作ることができたのは、初版のこの小さな小さな本を、想像以上の方々が手に取ってくださったおかげです!

初出のコミティアで、呑気に構えて20冊くらいしか製本できておらず(いや単純に間に合わなかっただけというのもあるんですが)「残りはイベント中に製本しよう〜」なんて言っていたら、イベント自体初参加なのに本当にたくさんの方がブースに来てくださって、コミティア開催中ひたすらライブ製本することになるくらいたくさんの方が私たちの小さな本を迎えてくれて、本当に本当に嬉しかったです。

朝一番にめがけて来てくださった方や、わざわざご友人にお使いを頼んでくださった方までいて夢かと思いました。本当にありがとうございます!

この名建築ZINEシリーズはYouTubeのくらしの学校の動画と連動(?)しているので、今後また続刊も作っていく予定です。紙博の際にはまた七面倒くさい製本の新しいZINEも作ったりしたので、そんな話もまた。お付き合いいただきありがとうございました!

大元になったYouTubeも本当にびっくりするくらいたくさんの方にご覧いただいています。ありがとうございます……!!(ちゃんとこっちの続編も作ります!)

ちなみにこちらのZINE、期間限定でオンラインストアにてお求めいただけます。よかったらぜひご覧くださいね。


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