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晴れた日のヒラヒラ (中編)

さて、【私のパンツ】救出作戦。
図にもあるように、この路地は普段使いはしていないことから、歩く音などが聞こえると、泥棒と間違えられてもおかしくはない。昭和風味が残る長屋であり、時代は変わったとはいえ、勝手知ったる他人の家。どこのお宅の誰がどの部屋で過ごしているのかは、周知の事実。
私がパッと路地から現われた場合、のんびりするお隣とは目が合うであろう距離である。「洗濯物を落としたんです、おほほ。」と言えれば済む話ではあるのだけれど。

パンツがヒラヒラしているのは、空中に見えないラインを引くとするならば、お隣の敷地の範囲。ちなみにお隣は60代後半御夫婦と、30代前半の息子さんの3人暮らし。インターフォンを鳴らして男衆が出てきたとしたら、それ以降は想像ができない。かといって、奥さんは愛想がすこぶる悪いときた。
落とした洗濯物をとってきてもらうことも、家に入れてもらうこともできそうにないのである。それが【私のパンツ】だなんて。まして、それがお宅の給湯器にふたをしようとしているだなんて、とても言えない。

ちなみにこの路地は、何かあった場合の逃げ道として使うらしく、どのお宅にも裏戸がある。我が家はリフォームのときに潰してしまったので、それががない。あるのはの腰の高さから始まる100センチの窓で、出入りするには十分だけど、一旦、路地におりると窓の高さが私の顔ほどになり、行きはよいよい帰りは怖い状態になってしまうのである。ちなみに隣のお宅は裏戸ではなく、出入りを兼ねた大きな窓。ばれる恐れがあると考えるとミッションは少々高め。

手袋をし、窓のサッシがそのままでは痛いのでバスマットを敷いてカバーする。路地に折り畳み椅子を開いたまま下に落とす。音が響いてビビる。そして私はバトミントンのラケットを背負っておりていく。折り畳み椅子の使い方と、高さがちょうどよくてテンションが上がるが、それも路地におりた一瞬でかき消される。雑草が足に当たり、虫が飛んで気持ち悪い。そりゃそうか。
【つづく】位置関係は上の図を参照。


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