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晴れた日のヒラヒラ (前編)

すがすがしいお天気の初夏、洗濯物を干していた、ある朝のこと。
2階のベランダから眺めた風景に動くものが目に入った。我が家から右斜め裏に位置するそのお宅は、空き家になってから随分と長くボロボロになりつつある。本当なら壁と平行に設置されていたであろう雨どいが、ずいぶんと傾いてこっち側に寄っていた。寄っていたことは知っていたのだが、その先にヒラヒラするものが目にとまったのである。

「はーん、隣のおばちゃん、洗濯物を落としな。」と思いつつ、干す作業を続けているうちに、そのことはすっかりと忘れてしまっていた。
干し終えて家の中に入ろうとしたとき「ちょっと待てよ、あれはもしかしたら下着じゃないか?」と思い出した。
もう一度、よく見る。それっぽい。いや、遠くてよくわからない。隣のおばちゃんったら、こんなのを落として恥ずかし-。いや、待てよ、うちからでも、風であそこまでは飛んでいく可能性はある。何ならそのヒラヒラしているお宅の、さらに右隣のベランダからも飛んでくる恐れがある。じゃあ、あれは一体誰の!?と一瞬で頭の中をぐるぐるした。


よし、だんまりを決め込もう!


いや、待てよ。結局のところ、その雨どいは右隣のお宅に直角に傾いているわけである。傾いた雨どいの角に引っかかるようにして舞うヒラヒラ、そしてその先にはお隣の給湯器。そのヒラヒラがまた風で飛んだとする。お隣の給湯器の排気口を塞ぐ。不完全燃焼が起こる。火事になる。それは大変!また一瞬で頭の中でぐるぐるとした。
そして警察が来たとして、排気口を塞いでいたのが下着だとわかる。これ誰の?お隣のお奥さん(私)の。えっ!?ちなみにこの段階で、すでに【私のパンツ】となっていた。

【つづく】 ※ 位置関係は上の図を参照。

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