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002. ピアスを失くした。

お気に入りのピアスを失くした。

今年の5月、僕がまだ就活生の時のことだった。

企業の二次面接直前、原宿駅のトイレで着けっぱなしにしていたことに気づき、急いで外した。スーツのポケットに入れたつもりが、落としたか、置いてきてしまったらしかった。

気づいたのは面接が終わってから半日後。人の行き交いが激しい都内で、豆粒大の落とし物がそう簡単に見つかるはずがなかった。

高校卒業の3日後に初めてピアスを開けた時に、ファーストピアスとして選んだものだった。銀のフープに、金色で彫刻されたアラベスク(唐草)の模様が気に入って、amazonで即買い。以来5年間、ずっと同じものを着けていた。

面接内容は体感的に微妙。ピアスの紛失も相まって、内心少なからず動揺していた。

ところが、その後二次選考を通過した僕は、三次選考、最終選考と順調に駒を進め、結果的に無事、内定獲得に至ることができた。

第一志望かつ、唯一獲得できた就職先だった。

風呂と寝る時以外は四六時中着用し、大学生活のほとんどを共に過ごしてきた初代のピアス。もちろん、失くした瞬間はショックだった。

でも今となっては「まあ、いいか」と思っている。

あのピアスが身代わりになって、今まで自分を守ってくれていた気がしたから。



アラベスクに「永遠」「繁栄」という意味合い、転じて「お守り」の効果があることを知るのは、もう少し後の話。


002. ピアスを失くした。

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