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小説「或る日の北斎」

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文政12年秋、浮世絵師・葛飾北斎は版元・西村屋与八から依頼された錦絵揃物「富嶽三十六景」の創作に悩み苦しんでいた。読本の挿絵、北斎漫画で絵手本のそれぞれ新境地を切り開いたが、細工…
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#西与

小説「或る日の北斎」その4

 北斎は弥太郎に背を向けた。また庭先に視線を転じると、あの赤蜻蛉は既に姿を消している。彼…

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小説「或る日の北斎」その5

 その古書の題箋には百富士と墨書きされている。  中身は見なくても推察できる。今の北斎に…

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小説「或る日の北斎」その6

 西村屋与八、通称・西与が店主の永寿堂は、日本橋大伝馬町3丁目、鱗形屋三左衛門の林鶴堂、…

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小説「或る日の北斎」8

「富嶽よ」 「富嶽?富嶽なら錦絵や挿絵にこれまで何度も描いてきたでしょう。先生程の腕をお…

小説「或る日の北斎」最終その9

 陽光が西に傾き、座敷の奥まで射し混んでいる。近くの社の木立から、百舌のけたたましい鳴き…