翻訳を個人の感覚に頼る危険性

翻訳学校に通っていた頃、「ら抜き言葉」の話になった。

翻訳では基本的にら抜き言葉は使わないほうがいいと習った。

僕は広島出身だけど、広島弁ではら抜き言葉をよく使う。むしろ「ら」が多用されていると "うるさい感じ" がする。だから、翻訳で「ら」を使うと違和感がある。

方言が分かりやすい例だが、方言でなくても個人の言語感覚というものはある。世代によっても違うし、バックグラウンドによっても変わってくる。

翻訳学校で「ら抜き言葉は NG」と習わなかったら、僕は翻訳でら抜き言葉を多用していたかもしれない。

翻訳は個人の言語感覚を頼りに言葉選びをしていると、受け手が違和感を感じる場合がある。となると、翻訳者は言語に対して総合的な知識が必要になるが、そこまでできる翻訳者は少数派だろう。

翻訳はそういったジレンマがある。どこまで頑張っても正解はない。モヤモヤが残ることが多い。僕が翻訳の世界から距離を置くようになったのも、そういう要素が原因だと思う。


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