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なにものでもない自分

最近読んでる本が本当に面白い。

最初に題名を紹介すると、小説家の西加奈子さんが書かれているエッセイ集「まにまに」だ。

東京旅行記でもちらっと載せた。読み終わるのが勿体なくて他の本と並行してゆっくり読んでる。

失礼な事だけれど、西加奈子さんの小説はまだ読んだことがない。この本との出会いは、私の好きな女優、高山都さんのInstagramのストーリーだった。

いわゆる推しが読んでる本はチェックしてしまう私。

気になっていても立っても居られなくなり古本屋で探し出したのだ。近くのBOOKOFFは私の味方。
お金がかかるので何でもかんでも新書で買うのはやめたけど、紙の本が恋しくて仕方がない時は古本屋に行くのが常だ。話が逸れた。

今日はその中で出てきたフレーズについて書き残したい。
94ページ、「旅行中のヤー」という題名のエッセイの最後の部分。

やはり旅行はいい。自分がなにものでもないことが、分かるのがいい。
「まにまに」西加奈子

西加奈子さんの文章は軽快で分かりやすく、ユーモアがたくさん盛り込まれているのでけらけらと笑ってしまう。だけど、その合間合間に突然すとんと本音が置かれる。ドキッとする。

私はどの分野においても有名人になったことがない。だから、普段大きな役割を抱えている人が自由になれる感覚、を示してるのだとしたらおこがましい事だけど、その文章に「わかる」、そう思った。多分同じように感じた人は多いだろう。

ものすごく大きくて、自分じゃどうしようもできない事象や人に触れると、ちっぽけな自分が浮き彫りになる、あの感覚。
恥ずかしさと悔しさと少しの安堵感でぐるぐるする。

昨今はSNSの発達で、すごい経歴を持つ人達の生活が垣間見れる。無数の価値観もそこかしこに転がってる。自分にもチャンスがあるのだと思えたり、必死に自分に合う価値観を拾い集めたりもする。

自分が何者であるかを考える時間が、多い。

自己理解系の話が流行っているのもこの流れのうちなんじゃないかなと思ったり。
世界全体の動きとかは正直分からないけれど、みんながみんな自分について知りたがっているから、旅行に出て何者でもないことを知ると安心するのだろうなと思った。

ひょっとして私だけかもしれないけれど、客観的に見たありのままの自分を素直に受け止められるから、安心するのだ。

等身大の自分を理解できることに安堵する。
もっともっと色んなところに行きたい。その度に新しい文化や価値観に触れて、その域には絶対に辿り着けんと思える人にに出会って、その度に安堵したい。

そこから、前に進む勇気が貰える。文章も絵も、もっと素直に、たくさんの人に見て貰えるように頑張りたい。

そして何より西加奈子さんの文才が羨ましい。ああ、ユーモアが欲しい!

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