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補助金の上手な活用法~ビジネスを次のレベルへ~


(1)はじめに

今回のトピックは、「補助金」

起業や経営に伴う事業拡大にあたり、資金調達は避けて通れない重要な課題ですが、その多くは自己資金や金融機関からの借入、あるいは投資家からの資金調達により行われます。

しかし、そうした手段だけでなく、国や地方公共団体が提供する「補助金」を活用することで、新たなビジネスチャンスを切り開くことも可能です。

補助金の存在は知っているものの、どのように活用すればいいのか、どのような効果が期待できるのかを具体的に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか?

本記事では、補助金の基本的な知識を解説します。
また、事例形式で補助金活用のメリットを知っていただくための数値シミュレーションを行い、その効果を具体的に可視化します。

この記事を通じて、補助金をうまく活用し、あなたのビジネスを次のレベルに引き上げるためのヒントを得ていただければ幸いです。

(2)補助金とは?補助金と助成金の違いは?

・「補助金」は、主に経済産業省または地方自治体が管轄で、特定の事業を推進するための経費の一部を補助するために支給されるものであり、税金が財源となる。
・「助成金」は、厚生労働省の管轄で、 「雇用促進や改善」などの活動を支援するために支給されるものであり、雇用保険料が財源となる。

(3)補助金活用のメリット

補助金活用のメリットは様々ですが、以下の3つを紹介したいと思います。

1. 将来投資

企業は一般的に、「導入⇒成長⇒成熟⇒衰退」という企業のライフサイクルを辿ります。特に現代の変化の激しいの経済環境では、企業が「成長期」や「成熟期」にある時こそ、次のステージへの投資が求められ、補助金はその際の大きな支援となり得ます。
その結果、例えば、成長期における将来投資により成長期フェーズを伸長ことができますし、成熟期における投資により第二創業を実現することもできます。

2. 信頼性の向上

補助金の獲得は企業の信頼性や信用性の向上にも寄与します。
公的な資金援助を受けていることは、外部ステークホルダーに対して強い信頼性と信用性を示す証となります。

3. 事業計画の可視化/精緻化

補助金を受けるためには通常は審査が行われ、審査における提出書類として詳細な事業計画書の作成が求められます。
事業計画の作成及び精緻化のプロセスは、経営者の頭の中にあるビジョンを具体的な形で表現し、その上で様々なステークホルダーに対してその計画を共有し、フィードバックを得る絶好の機会となります。
さらに、事業計画書の作成は、収益性や財務状況、市場環境などの各要素を詳細に検討し、その実現可能性を確認する重要なステップともなります。
このようなステップを辿ることで、経営者の考える新事業が市場ニーズがあるものなのか、より事業の成功可能性を高めるために何をすべきなのかなどがより具体化されます。

(4)代表的な国の補助金制度

代表的な国の補助金として、以下が挙げられます。

●小規模事業者持続化補助金
●IT導入補助金
●ものづくり補助金
●事業再構築補助金

1. 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組み(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。

詳細は、以下をご参照ください。

2. IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。

詳細は、以下をご参照ください。

3. ものづくり補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。

詳細は、以下をご参照ください。

4. 事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症や物価高騰による影響を受け依然として業況が厳しい事業者への支援や、成長分野への事業再構築を支援する制度で、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り拓くための取組を重点的に支援しているものです。

詳細は、以下をご参照ください。

(5)補助金活用時の留意事項

補助金活用時の留意事項を以下3点紹介したいと思います。

1. 後払いの性質

大多数の補助金は、後払い制となっています。例えば、総額300万円の事業で2/3の補助がある場合は、まず自社資金(自己資金や借入など)で300万円を支出する必要があり、200万円は事業期間終了後の受給となります。
よって、補助金受給前に事業資金を全て用意しなければならない点に留意が必要です。

2. 課税対象

通常、事業主が法人の場合は法人税、個人事業主の場合は所得税の課税対象となります。

3. 適切な事務処理

事業実施期間終了後、一定期間内に実施報告書や支払関連証憑等を提出する必要がありますが、マニュアルに沿った提出書類が不十分の場合、支払が拒否されることがあるため留意が必要です。
よって、定められた事業実施期間以外に支出した経費や、十分な証憑が揃っていない支出については補助金対象の経費として認められないため、留意が必要です。

(6)補助金シミュレーション

一年間の事業活動で手許に残る現預金は、想定よりも少ないものです。
なぜならば、売上を得るためには、仕入代金、人件費や賃料などの様々な経費が必要となり、得られた利益の一部は税金として支払われるからです。
この仕組みを知ることは、補助金の重要性を理解するための一つの視点となります。

それでは、具体的な補助金活用による効果を可視化したシミュレーション事例をご覧ください。今回は、ものづくり補助金を例に取ります。
※数値はあくまで情報をシンプルに分かりやすくした上での参考値であり、正確性を期すものではない点はご理解ください

中小企業白書(2021年)に記載のある、平均的な財務数値をもとにすると、小規模企業の平均売上高は約6,800万円です。そのうち、人件費や原材料費などに約6,600万円、そして、会社の税引前利益に対して法人税等が課され、手元に残る額は約100万円となります。

一方、第13回申請時までのものづくり補助金の平均受給額は約800万円となっています。

すなわち、平均的な金額でものづくり補助金を受給(約800万円)することで、8年分の事業で得られる資金(100万円×8年)を獲得することができるのです。

この事実は、事業を通じて利益を獲得し適切に納税を行っている事業者だからこそ理解できる価値でもあり、特に成長期や事業拡大期にある企業にとっては、補助金の活用は大きな強みとなることでしょう。

(7)おわりに

補助金を活用することで、企業の成長や新たな事業展開、技術革新、雇用創出などにつながり、それがまた新たな経済活動や社会の発展に寄与します。その意味でも、補助金は経済社会の健全なサイクルを維持するための重要なツールと言えます。

その一方で、公的資金である補助金の活用には適切な理解と誠実な対応が求められます。税金を原資とした補助金を、"無料でもらえた資金"と捉えることなく、"事業拡大や新規事業開始の原資"と捉えることが重要です。

また、「補助金ありき」の考え方を避け、補助金がなくても実現可能な魅力的な事業案を持つことが重要であり、成功している企業の多くは、この視点を持っています補助金はあくまで「転ばぬ先の杖」であり、補助金に頼り切ることなく、自力で事業を成立させられる強靱な経営力を持つことが求められます

最後になりますが、補助金はあくまで事業支援の一環であり、それが事業成功の保証にはなりません。しかし、補助金を適切に活用することで、最適な意思決定のタイミングを逃すことなく、持続可能な事業を構築できる可能性が高まります

ぜひ、皆様の起業のご参考にされてください。

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◉「補助金」に関する記事は以下をご確認ください。


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