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一人起業と社会保険(医療保険?年金保険?)



(1)はじめに

社会保険は、病気や失業など日常生活上のリスクに備えるための公的な保障制度です。医療保険、年金保険、労働保険、介護保険などで構成され、法律上の加入条件に該当すると、加入が必須となります。

会社員時代は、会社が手続きなどを代行してくれていた社会保険については、特に、一人でスモールで独立・起業する場合、基本的に自分で行う必要があります

私が独立相談を受ける際、多くの人が社会保険の取扱いについて疑問点を持ち、不安を感じていることが分かります。
起業時に、最低限の社会保険の仕組みなどについては理解しておくをお勧めします。

また、従業員を雇用する場合など、社会保険の手続きは時に複雑で、専門的な知識が必要となります。
本記事では、あくまで従業員を雇わない場合の個人事業主や一人会社社長の社会保険に関する一般的な概要をお示しさせていただき、手続きなど個別事案の詳細については、労務分野の専門家である社会保険労務士へ相談し、的確なアドバイスを受けましょう

ぜひ、独立・起業する際は、社会保険についての最低限の知識を身につけつつ、専門家の力も借りながら、万全の準備を整えましょう。

(2)社会保険とは?

社会保険は、医療保険、年金保険、介護保険、労働保険などの総称です。

社会保険の定義

それぞれの、社会保険内容を以下で説明します。

①医療保険とは?

  • 「医療保険」は、病気やケガ等で医療機関からの診察を受けた際に必要な給付が行われる保険

  • 会社などに勤めている人が加入する「健康保険」、フリーランスや非正規雇用者、会社を退職した人などが加入する「国民健康保険」などで構成

医療保険制度のまとめ

②年金保険とは?

  • 「年金保険(公的年金)」は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」で構成

  • 「国民年金」は日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務有(国民皆保険制度

  • 「厚生年金」は、会社などに勤務している人が国民年金に上乗せで加入するもの

  • 「国民年金」は階段の1階建部分、そして「厚生年金」は2階建部分に例えられる

年金制度の階層

③介護保険とは?

  • 「介護保険」は、要介護状態や要支援状態になった場合に必要な給付が行われる保険

  • 40歳から加入義務が生じ、40歳以上の医療保険加入者は、介護保険料を納付

④労働保険とは?

  • 「労働保険」は、「労災保険」と「雇用保険」で構成

  • 業務上の労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に際して必要な給付が行われるのが、「労災保険」

  • 失業して所得がなくなった場合に、生活の安定や再就職促進を図るために必要な給付が行われるのが、「雇用保険」

(3)一般的な社会保険加入パターン(個人事業主のケース)

①医療保険

会社を退職すると、健康保険資格を喪失するため、原則として、国民健康保険に加入する義務があります。ただし、例えば、以下の方法を選択することもできます。

  • 「任意継続被保険者制度」を利用
    起業前に会社員だった方、勤務先の会社で加入していた「健康保険」に引き続き加入する

  • 配偶者の扶養へ入る
    配偶者が別の会社で厚生年金保険に加入している場合に、配偶者の扶養へ入る

【参考(任意継続被保険者制度とは?)】
・退職する会社で加入していた健康保険を、最長2年間、任意で継続することが可能
・資格喪失日から20日以内に申請行う必要がある
・任意継続被保険者制度の場合、保険料は全額自己負担(在職中は、会社が保険料を折半)となる

【参考(どちらが有利? 国民健康保険 or 任意継続)】
・国民健康保険は、前年の所得で算出される
・一方、任意継続の場合は、会社退職時の標準報酬月額と上限の標準月額のいずれか低い額に保険料率を乗じて算出される
・よって、いずれを選択するかで有利不利が異なる
・まずは、ネット上のシミュレーションサイトなども活用し、試算・比較するとよい

②年金保険

原則、「国民年金保険」(第1号被保険者)に加入しますが、以下の方法を選択することもできます。

  • 配偶者の扶養へ入る
    配偶者が別の会社で厚生年金保険に加入している場合に、配偶者の扶養へ入る

③介護保険

医療保険加入者は、40歳以上になると、自動的に介護保険が適用されます。

④労災保険(労働保険の一部)

個人事業主への労働保険の適用はありません
ただし、一定の条件のもとで、特別に任意で加入できる制度があります。

⑤雇用保険(労働保険の一部)

雇用保険の適用はありません

(4)一般的な社会保険加入パターン(法人のケース)

ここでは、一人会社(株式会社や合同会社)を設立し、その一人会社で社長自身の社会保険をカバーするパターンを想定します。

①医療保険

通常、「健康保険」(協会けんぽ)に加入します。
ただし、役員報酬ゼロの場合は加入できないため、この場合は、前述の個人事業主と同様のパターンとなります。

②年金保険

「厚生年金」に加入します。
ただし、役員報酬ゼロの場合は加入できないため、この場合は、前述の個人事業主と同様のパターンとなります。

③介護保険

医療保険加入者は、40歳以上になると、自動的に介護保険が適用されます。

④労災保険(労働保険の一部)

一人会社の代表者は、通常は適用対象外です(役員は一般的に労働保険の適用対象外のため)。
ただし、一定の条件のもとで、特別に任意で加入できる制度があります。

⑤雇用保険(労働保険の一部)

雇用保険の適用はありません

(5)まとめ(原則的なパターン)

①個人事業主のケース

  • 医療保険:国民健康保険

  • 年金保険:国民年金(1階部分)

  • 介護保険:40歳~加入義務

  • 労災保険:原則、なし

  • 雇用保険:なし

②法人(マイクロ法人)のケース

  • 医療保険:健康保険(協会けんぽ)

  • 年金保険:国民年金(1階部分)、厚生年金(2階部分)

  • 介護保険:40歳~加入義務

  • 労災保険:原則、なし

  • 雇用保険:なし

社会保険適用早見表

(6)おわりに

本記事では、独立・起業する際の社会保険の取扱いについて解説しました。
特に、個人事業主と一人会社(法人)で加入する保険の種類や手続などが異なるため、自身の状況に合わせて適切な対応が必要です。

また、従業員を雇用するケースでは、社会保険の手続きは複雑で、専門的な知識が求められます。

起業時に社会保険について学ぶことは重要ですが、詳細な手続きなどについては、社会保険労務士へ相談するのが賢明でしょう。

独立・起業は、自由な働き方を実現する一方で、社会保険の課題が付きまといます。必要な知識を身につけ、専門家の力を借りながら、万全の準備を整えて、新しいビジネスに挑戦していきましょう。

ぜひ、みなさまの、起業のご参考にされてください。

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