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公衆電話が怖くてしょうがなかった

東映のES課題。

【設問】電話ボックスから始まるショートストーリー(600文字)

最初「犬鳴村」のこと?
え、ホラー書けってこと?とパニックになり、結局思い出とウソを半々にした謎のお話を書いた思い出。
後から聞くにはフィクションを書いた人が多かったんですね。正解まじで分からん。このESは通ったけど、録画面接で落ちました。


10円で伝えられること、伝わらないこと

私の住む地域では、高校受験の結果発表を、受験した生徒全員で見に行くことになっていた。9人の受験生は他校の生徒と一緒に列を作って結果発表を待っていた。
列の先には一人一人に封筒が用意されており、合格なら建物の中に入り資料を受け取ることになっていた。

結局受かっていたのは、私を含めた3人だけだった。腕いっぱいに資料を抱えた3人を手持ち無沙汰な6人が待っていた。

私たちは結果を受け取ったことを中学に連絡することになっていた。
事前に決めた連絡係は女子バスケ部の部長さんで、彼女は不合格だった。
私たちは彼女が電話ボックスに入っていく姿を見つめることしか出来なかった。
大人はなんて残酷なことをさせるんだろう。私はどうすればよかったのだろう。
電話を代わっても代わらなくても彼女を傷つけるだろう。「ありがとう」それすら嫌味に聞こえないか迷った。

帰り道はだれも口を開かなかった。彼女は普段通りの人気者の彼女に見えた。

長い坂を上って中学に着き、教室に入った瞬間、彼女は先生に向かって泣き崩れた。

私は電話ボックスから電話をかける時、何かに追い立てられているような気がして怖い。入れた10円分で相手に伝えるために、要点だけ話せ、余計なお前の気持ちなんていらないと拒絶される気がして怖いのだ。
彼女も何かに追い立てられるような気がしていただろうか。
先生に何を言えて、何を言えなかったんだろうか。

あれ以来、あの冷たい箱がずっと苦手だ。

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