ミッドサマーを楽しめた人にドラマ『ハンニバル』をオススメしたい
ミッドサマーを観たあと、僕がふと連想したのがこのドラマだ。
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先日公開されたアメリカのホラー映画『ミッドサマー』と、2013年から同じくアメリカで放映されたサイコスリラードラマ『ハンニバル』。
メディアもジャンルも違うが、
猟奇と美しさが混じり合っている作品という点では同じだ。
乱暴なこじつけだが、僕はこのドラマが大のお気に入りなのでオススメしていきたいと思う。
ブルーを基調とした美しい映像と大胆なカメラワークで描かれる、常軌を逸した猟奇事件。
そのアイデアには「何でこんなこと思い付くの?正気?」と唖然とすること請け合いだ。
気味が悪いと思いつつも目が離せない、そんなゾワゾワ感が好きな方は読み進めてもらいたい。
あと、マッツ・ミケルセンが最高。彼が演じるレクター博士は、ダンディズムとインテリジェンス、エロティシズムの化身だ。
ハンニバル・レクター博士を演じる
"北欧の至宝"ことマッツ・ミケルセン。
『007 カジノ・ロワイヤル』の悪役ル・シッフルや、PS4のゲーム『デス・ストランディング』のクリフ役なども演じた。
画像出典:https://www.caitogame-inception.work/entry/madsmikkelsen
ただ、「グロいのは絶対に無理!」という人には残念ながらオススメできない。
このドラマでは、人間の体が現代アートみたいになるので。
そういう意味での「ミッドサマーが楽しめた人」だ。気持ちのしぶとさが大事。
何はともあれ、あらすじ。
あらすじ
FBIアカデミーの講師ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)は、自閉症スペクトラムの一種として、あらゆる犯人に共感し、その動機や犯行当時の感情を再現できるという異常なまでの共感能力を有していた。
FBI行動分析課のボス、ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は、アメリカ各地で起こる事件の捜査協力者としてウィルの起用を提案する。
だが、FBIコンサルタントで心理学者のアラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)はウィルの精神的な負荷を懸念してそれに反対。
そこでジャックは起用の条件として、高名な精神科医ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)にウィルの精神鑑定を依頼した。
かくして、全米各地で起こる猟奇事件の捜査が始まるのだった。
ウィル・グレアム(ヒュー・ダンシー)
FBIアカデミーの講師。殺人現場を見ただけで、犯行の一部始終や動機などを読み取れるという特異な能力を持っている。ただし、その代償として異常殺人者たちの思考に精神を侵食されていく。とっても繊細。
画像出典:https://drama-kaigai.com/212
ジャック・クロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)
FBI行動分析課のボス。捜査官に憧れていたウィルを煽ったり、追い詰めたりして捜査に協力させるパワハラ上司。妻はレクター博士のカウンセリングを受けている。見たままのキャラ。
画像出典:
http://blog.livedoor.jp/ohmss007/archives/1749320.html
アラーナ・ブルーム(カロリン・ダヴァーナス)
FBIコンサルタントで心理学者。ジャックがウィルを追い詰めて働かせようとするのを諫めることが多いが、そんなアラーナ自身の態度がウィルを追い詰めるときもある。
https://bibi-star.jp/posts/1945
ハンニバル・レクター博士(マッツ・ミケルセン)
卓越した技術と知識を持つ高名な精神科医。異常殺人者への「共感」によって蝕まれていくウィルのケアし、助言する。美食家で、自らが作った料理をウィルやジャックに振る舞うことも多い。
画像出典: https://kaigai-drama-board.com
メインの登場人物はこの4人だ。
『ハンニバル』というタイトルだが、主人公はあくまでも犯罪プロファイラーのウィル・グレアム。
捜査を進めたいジャックが超人的な能力を持ったウィルをこき使い、それを女性心理士のアラーナが気遣う。レクター博士は疲弊したウィルを慰め、捜査に協力する……つまり、
ジャック「やれ!お前の力を使うんだ」
ウィル「僕はもう……やりたくない」
アラーナ「彼がかわいそうだわ!」
レクター博士「ウィルには私の助けが必要だ」
基本的にはこんな感じ。
一話ごとにFBIが犯罪を捜査し、解決に導く。
これだけ聞くと、よくある海外ドラマのストーリーだと思うかもしれない。
だが、ハンニバル・レクターがどのような人物であるか、何となくでも知っている人ならイヤな予感がするだろう。
知らない人のために、Wikipediaから引用しよう。
ハンニバル・レクター(Hannibal Lecter)は、『羊たちの沈黙』等、作家トマス・ハリスの複数の作品に登場する架空の人物。著名な精神科医であり猟奇殺人犯。殺害した人間の臓器を食べる異常な行為から「人食いハンニバル」(Hannibal the Cannibal、ハンニバル・ザ・カニバル)と呼ばれる。
つまり、捜査チームをサポートするレクター博士こそがFBIの追っている殺人鬼なのである。
ネタバレしやがって!ばか!このやろう!
と思っただろうか。
大丈夫。
ハリー・ポッターは魔法を使うし、ドラえもんはひみつ道具を取り出す。そして同じように、レクター博士は人を殺して食う。
そういうキャラクターなのだ。
ハンニバル・レクターはこのドラマの前にも多くの作品に登場しており、特に映画「羊たちの沈黙」はアカデミー賞の主要5部門を独占。
また「アメリカ映画100年の悪役ベスト100」で堂々の1位を獲得している。
このドラマのハンニバルは彼の若き頃の姿という設定でストーリーが再構成されているので、映画を観てなくても楽しめる。僕が実際そうだ。
なので、このドラマは視聴者が「ハンニバル・レクターはヤバい奴」だと分かっている前提で作られている。
(知らなくても少し観ればすぐに気付くけど)
そういった、制作サイドと視聴者の奇妙な信頼関係が面白いところの一つだ。
犯人を隠す必要がなければ、構成はただのミステリーとは一味も二味も違ったものになる。
例えば、女性が逃げるシーンの直後に、男性がキッチンで何かの肉を調理するシーンが流れたとする。
これがミステリーでは王道の「フーダニット(Who done it = 誰が犯行を行ったか)」モノであれば、男が犯人であっても、そうでなくても、あからさま過ぎて興醒めだ。
ところが、男がハンニバル・レクターなら。
視聴者は「あ、こいつやったな……」と思うだろう。そうすると、誰がやったかではなく、ハウダニット(How done it = どうやって犯行を行ったか)」の方を、作品として楽しむことができる。
これがキャラクターのパワーだ。
レクター博士の料理シーンはとても優雅だ。
何の肉かはさておき。
画像出典:https://drama-kaigai.com/473
だが、作中のウィルやジャックにとっては、レクター博士は食人鬼ではなく、絶大な信頼を置く有能な精神科医である。
彼らはレクター博士の人心掌握術にハマり、「フーダニット(Who done it = 誰が犯行を行ったか)」の答えを探し続けるのだ。
ウィルやジャックは決して無能ではない。
特にウィルについては、持ち前の異常な共感力で真実にかなり近いところまで迫る時もある。
しかし、その度にレクター博士がウィルの判断の矛先をずらし、ストーリーを複雑にしていく。
「ウィルを殺してしまえばいいんじゃないか」とも思うだろうが、レクター博士は殺す相手を自分の厳格なルールに基づいて選ぶ。
その「異常の中にある秩序」が放つ不気味な美しさもこのドラマの魅力だ。
さて、ここまでつらつらと書いたが、やはり本当の魅力を伝えるには「その目で確かめてほしい」という使い古されたフレーズを使わざるを得ないだろう。これ以上書くのは野暮だ。
マッツ・ミケルセンが演じるレクター博士は完璧な紳士だ。
丁寧な言葉遣い、迸るインテリジェンス、卓越した精神医療技術に美しい所作。
そして何より、優雅な料理シーン。
レクター博士はよく料理をする。そしてそれを周りの人に振る舞うのだ。
素晴らしい食事を提供された彼ら、彼女らは大いに喜び、ほっぺたが落ちそうな顔で絶賛する。
だが視聴者は、
「おい!!それ何の肉だよ!!おい!!!」
と青ざめた顔で画面を凝視することになる。
ちなみに僕は10回くらい声に出した。
こんなことを笑顔で言う。
食べさせられる人たちは「ははは、面白いジョークだ!」といった感じで気にも留めない。
画像出典:https://drama-kaigai.com/473
僕はドラマをあまり観ない。
追いかけるのが億劫だし、少しでも展開がダレたりしてしまうと途中で観なくなってしまう。
だが、『ハンニバル』はあっという間に観た。
シーズン3までの全39話と話数も多くなく、息をつかせぬ展開には飽きがこない。
僕としては、マッツ・ミケルセンが好きだというのも大きかった。
このドラマのマッツ、格好良いんだよ本当……。
レンタルDVDや Blu-rayのほか、U-NEXTやHuluなどの動画配信サービスでも観られるようなので、ぜひ観てほしい。2話目まで観れたらきっと最後まで観れる。
ただ、むやみに他の人にオススメすると人格を疑われるのでご注意。
画像出典:https://drama-kaigai.com/473
観終えた僕は「レクター博士にならバラバラにされてもいいな」などと思いました。面白いです。
それではまた。
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自己投資します……!なんて書くと嘘っぽいので、正直に言うと好きなだけアポロチョコを買います!!食べさせてください!!