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 やっぱり私は生きづらい、に抗う。

 ビッグニュース。職場がザワザワする。どうやら有名人が結婚して職場が盛り上がっていたようだった。

 同僚が「いや〜びっくりしたね〜」なんて話しかけてきたけど、「う、うん。そうだね」とコミュ障のお手本のような回答しかできなかった。周りでは「まだ〇〇が残っているから大丈夫」「しばらくロス休暇取ります」と、どこかで聞いたことのあるやりとりを続けていた。

 私に向けられる結婚を驚く話題と周りの会話がなぜか鬱陶しく感じる。それと同時に世の中の話題を中心に楽しそうに会話できることが羨ましくもあった。

 やっぱり私は生きづらい。「これは驚いた方がいいのか。でも残念がっている人もいるな。どっちが正解なんだ。わからない。とりあえずツイッターだ。ツイッターの反応をみてみよう。」と私は頭の中をフル回転させる。
 周りは呼吸をするように自然に会話している。今、鼻から吸い込んでいるのは酸素なのか、窒素なのか、いや二酸化炭素なのかもしれない。考える必要のないことまで頭の中をグルグル探検させてしまう。

 やっぱり私は生きづらい。この話題にあなたも興味あるでしょ?とそれが社会の常識であるかのようだった。「正直どうでもいい」「興味ない」なんて言葉を発したら世界の片隅に追いやられる感じがした。

 だけど私だって、何も考えずに「びっくりしたよ〜」って言ってみたい。心の奥底では興味が薄くても、それを表に出さずに会話に混ざりたかった。

 世間が祝福モードに浸っているあいだ、私は自分の生きづらさの海に引きずり込まれていた。いつもだったら、その海で溺れて気がつくと全てを失ったかのような感覚になる。だけど、今日は違った。沖の方に引きづろうとする波に抗う。不器用に愛想笑いも交えながらとりあえず会話についていった。

 こうやって少しずつ生きづらさの海を上手に泳げるようになれたらと思う。




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