20年間空き家の雨漏りハウスが事務所になった話。
こんにちは
ひとのことの博揮です。
2021年夏、弊社クラウドナイン・エデュケーション ひとのことは、コミュニティ運営に尽力すべく博多区にあった事務所を引き払い、直方市に移転しました。
移転するに至った経緯はまたいずれ書くとして、今日は自分たちの手でなんとか住めるようにと手を加えてきた事務所の改装を記録に残しておきたいと思います。
それにしても、移転を決めた2021年の夏は、とにかく長雨(観測史上記録的なものだったらしい)で作業をするにも困ったり、止まらない雨漏りに気を揉んだりしました。いやはや、協力してくださった皆さん、応援してくださった皆さんありがとうございました!
ではいってみよう!
1.ドラキュラハウスと呼ばれた家を住み継ぐ
まさにドラキュラハウスの名にふさわしいこの外観。
伸び放題のツタ、生え放題のヤツデ、誰も住まなくなって20年弱のこの洋館は、人の進入こそ防げていたものの、ひどい雨漏りで壁や天井は腐り、小動物が入ったあとの糞、そして以前住んでいた方が使っていた家具やゴミが散乱し、とても住める状態ではなかった。
実は、そんな物件を探していた僕たち ひとのこと。
理由は、自分たちでDIYをしながら《住み継いでいく》ということがしたかったからだ。空き家問題が各地で浮上している昨今、自分たちの手で家を改修し、生活することができるということがわかれば、その活用に可能性や選択肢が広がる。そのモデルの1つになりたかった。
幸いにもオーナーさんもこのお家を壊そうとしていたようで、また住んでくださる方がいるならと、お互いの想いが一致した奇跡のようなマッチングだった。
9月初日から直方に住むと決め、博多の事務所も社宅も引き払う手筈は済んでいたものの、肝心の新しく住む物件が見つかっていなかった僕たちの7月後半はめちゃめちゃ焦っていた。
ローンを組んで家を買うのか、はたまた安いアパートを借りるのか。
なんか違う、なんか違う、とこだわり続けた先に地元の方の紹介で出会ったこの家、実際に足を運ぶ前に紹介された住所にグーグルアースで訪れ、一目でここだと思った。
たとえ、中がどんな状態でも。
2.では中に入ってみよう。
たくさんの物件、空き家を見てきたが、この瞬間が一番ドキドキする。果たして、中はどうなっているだろう。間取りは?臭いは?湿気は?状態は?いろんなことを感じる。
入ってすぐの玄関と、キッチン。
気持ちいいほど散らかっていた。
おまけに、屋上から滴った雨が、このキッチンまで浸透していたようで、床がべよべよになっている。
一階には、このキッチンのほかに3つの部屋があった。おばあちゃんの写真が置かれた居間。きっとここでご飯を食べていたのだろう。
和室もある。ボロボロの障子がいい感じにホラー感を醸し出している。
そのままにされた布団には、猫かイタチか、小動物の糞尿が染み込んでいた。人間が住んでいなかっただけで、住人はいたようだ。
(真ん中の波板は、オーナーさんが雨漏りを直そうと準備していたもの)
書斎であっただろ部屋。大きなクローゼットには当時の高そうなスーツが履いていたが、カビていた。使う人がいなければ、いくらものがよくてもどんどんダメになっていってしまうのは悲しいばかりだ。
この他にもトイレ、風呂、洗面所があった
どこもタイルが可愛い。
みるたびに惚れ惚れとはするが、果たして住めるのだろうか。現時点では全く想像ができない。
2階へ上がってみよう。
なんとも印象的な一枚。
そう。内側に枯れ葉が落ちている。
どこからかツタが進入しているようだ。
屋内とかなんとかはさておき、その枯れた赤色も壁に映ったまだらな影も抜群に美しい。まるで映画のワンシーンのよう、、、。
その演出を助けているのは、なんと言っても、写真の所々に写っているガラスや建具だろう。この1940年〜1960年ごろのミッドセンチュリーなデザインに築年数60年という時の流れが加わって、なんとも言えないかわいらしさと、異国の雰囲気を醸している。
この家に住みたい。。
そんな希望を胸に、階段を登り切り足元に目をやると、そこにはボッロボロになったカーペット、そして床。
現状はそんな夢心地からいとも簡単に現実の世界へと連れ戻した。
長年の雨漏りがいよいよ家を腐らせていたのだ。
廃墟はこうして長い時間をかけて地球に分解されるのだと知った。
どうにかしてその未来を変えたい。
反対から見るとこんな感じ。雨の日はこの壁の辺りから滝のように水が滴ってくる。そこら中に置いてある桶や収納ボックスはすべて雨受けだ。
修復のためにと準備してあった木材と、ゴミが混在している。
特にひどいのは天井と床だ。
「こんな素敵な家が蘇ったりなんかしたら、最高に嬉しいだろうな」という期待と、「冷静に考えてごらん?昨日も雨漏りしてたらしいよ?こんなとこ住めるわけなかろう」という現実的な自分がせめぎ合っていた。
いや。
心はなんて言ってるの?
「住む。」
3.住めるか住めないかではなく、住むか住まないか。
できるかできないかは、わからなかった。
雨漏りを止められるのか
床や天井をはれるのか
トイレが快適に使えるようになるのか
どれもやったことはなかった。
でも、”やってみたい”はあった。
先述したが、昨今、地方が抱えている社会課題の1つに”空き家”がある。
移住してみてわかったのだが、近所の人たちはこの家に僕らが住み始めたことをとても喜んでいた。人が増え、賑やかになるということもあるが、安全という面では、不審者がすみついたり、放火などのいたずらがあったりするという恐れがグッと減ることに安心しているようだった。
僕たちがしたいのは、持続可能な社会の実現。その1つがこの空き家対策のプロジェクトであり、家を建てるほどにお金をかけなくても、アイデアと人の協力があれば、また住居として蘇るということを実証したかった。
というわけで、始まった改装。
弊社が参画しているコミュニティの中で
・DIYをしてみたい
・空き家問題に関心がある
・まちづくりがしたい
という有志のメンバーが集まり、片付け、掃除、ゴミ出し、修繕、搬入、しつらえという、一連のリノベーションを行った。
2021年の暑い時期に、よく病人、けが人も出ずにやりきったなあと思う。
その一部始終を写真で紹介する。
まずは片付け!
果たしてゴミ処理場との間を何往復しただろうか。
段ボールを恵んでくださった近隣のお店屋さんありがとう。
分別、仕分け、積み込みの技術がみるみるうちにあがっていった。
ゴミ出しにもたくさんのドラマや気づきがあったが、今回は割愛。
さっそくDIYの話!
始まりはキッチンの床。
ここがベコベコでは通行のたびに緊張する。
とりあえず剥がしてみると、簡素な基礎が出てきた。
こんなので支えられていたのかと思うとちょっと笑える。
工務店さんが使わなくなり、廃材となっていたフローリング材をいただき、それらを下地に使って増し貼りした。
シンクの下から窓!緑色のタイル!惚れ惚れする!
床下が見えなくなった時にはマジで感激した。
貰い物のフローリングの数は不揃い。
デザインにもこだわりたかったので、種類の違うフローリングを組み合わせて、モザイクに。
めっちゃいい感じ
おばあちゃんの写真が置いてあった居間も増し貼り。
誰も床張りなんてしたことなかったけど、便利な時代になったもので、youtubeを見れば大体わかる!
1部屋終わる頃にはみんな職人のようになってたなあ。
材料も限られているので、2階の床は部分的に補修。
下地が出来次第こちらも貼っていく。
日当たりの良い2階のこの部屋はリビングになる予定。
床はりの必要がない部屋はとにかく磨く。
水道が生きてたのがほっとした。
ボロボロになった壁は、色を塗ったり、板を打ちつけたりして補修。
壁が変わると空気も雰囲気も変わるから不思議。
雨漏りでかびていたり、腐ってしまった部分は、取り除く。
何より大変だったのは、屋上。
全く機能していない防水シートを剥がすことからスタート。
どうであったら雨が防げるのか、、。
コンクリートでできた我が家は、とりあえずひび割れてしまったところを防げばなんとかなるのではないかと、コーキングをしてみたり、防水塗料を塗ったり、ひどいところには上からさらにコンクリートで舗装してみた。
これがびっくり、効果覿面。
むしろ瓦の屋根ではなくて、良かったのかもしれない。
真夏の屋上での作業は本当にしんどかったけど、雨漏りが直ったことでグッと生活の場になるという実感が湧いた。
ようやく雨が止まったということで、恐る恐る家具を搬入させたり、カーペットをしいたりしてみる。
止まったとはいえ、気付いたらまたポタポタしていることもよくあった。その都度屋上へ駆け上がって、原因となっていそうなひび割れを見つけ、塞ぐというのを何度も繰り返した。
物が入ったり、生活するための物作りは本当に楽しかった。
タイルカーペットも破棄する予定のものをいただいき、数をみながらモザイク調に。
はじめは初体験にウキウキしていた床張りも何部屋もやれば作業になる。二階のリビングを貼り終えたこの満身創痍は体が忘れない。
白く塗って気持ちが良い空気に変わった寝室。
押入れの中でポタポタ音がしてた時は焦った。
ビニール袋やシートは必須アイテムだった。
ベッドフレーム、扉、キッチンシンクも、余った木材を使ってお洒落にDIY。自分たちのしたい形になって、なお、お洒落なのは楽しい限り。
いよいよ物が入ったら住むんだなって気持ちになった。
朝起きて、どこかを修繕し、どこかを掃除し、ものを配置し、という生活が丸々1ヶ月続いただろうか。この写真のように、どこに何があるかもわからん、どこに置くかもその時期決めるというのは、本当に骨が折れた。最後の段ボールが家からなくなった瞬間は感動した。
やれば終わるということを知った。
4.完成した各部屋をご紹介
表面のベニアが取れ、みすぼらしくなっていた玄関扉。端材を貼り付け、印象的に。
葉書や郵便物でいっぱいだった玄関。
収納がなかったので、コンクリートブロックと木の板を組み合わせて簡単かわいい靴箱に!
べこべこだった床を直したキッチンは、棚を含めた壁一面全て白く塗ったところ、圧迫感がなくなり広々とした印象に!シンクの上のスペースは、植物や雑貨の飾り棚になりました。
かつて書斎だった部屋は、床、壁、天井の状態が良かったため、そのままセッションスペースに。旧事務所でも活躍していたソファが部屋の印象をエキゾチックに決めてます。
おばあちゃんの写真の置かれていた居間はアートアンドカフェギャラリーに(通称)。
美術館併設のカフェをイメージ。自分たちが制作したものや、見つけてきたお気に入りの作品などを飾っておく部屋になりました。
キッチンのすぐ横にあり、風もよく通るので、あたたかい季節は、この部屋で朝ごはんを食べることが多い。部屋から見える庭の景色が素敵です。
和室は客間に。
床の間の活用に困りましたが、本棚を作成。お気に入りの漫画をおきました。障子を張り替えただけで、一気にきちんとした印象に。旅館のようです。
こだわりのミシン洗面台!
ミシン台の骨組みを生かしながら、洗面台と組み合わせて、お洒落な洗面所に仕上げました。何よりもここに生きた水道が来ていたことが奇跡。
パイプに繋いだら、ちゃんと水が出ました。
ボットン便所は変わらずそのまま使用。
最初はひどい匂いがしていたこともあったけど、”臭突”なるものをつけた途端無臭に。快適です。
男子便所があったところは、便器を取り外し、タオルや下着を入れる棚に。ビスを打ち付けることができないコンクリート構造なので、ディアウォールを駆使!
いよいよ2階へ
絵を置いただけで、美術館のよう。
通称山田さんち。腐った天井は全て取り外し、代わりに大判の布をタッカーで打ち付けました。朝おきたら、素敵な模様が目に入り、見た目も楽しいです。いまのところ何も困ってない。
アトリエ。
汚れても良いように、床、壁、天井、全てそのまま(よく拭いた)。
作業を途中でやめても、片付けなくても良いのが何よりの魅力。
事務所(奥はアトリエ)。
タイルカーペットを敷いたら、そこはもうオフィス。
押入れをうまく活用しながら書類を整理しています。
そして一番のお気に入りスペースのリビング。
最も雨漏りが酷かったこの部屋。
天井は抜けたままだけれど、そんな見た目も、もはやインダストリアルという言葉の中に収まっている模様。
夜の雰囲気や、朝、福智山からのぼる朝日が入ってくるのが印象的。
よくこの部屋でご飯を食べたり、ワインを飲んだり、仕事をしたりしている。
5.まとめ
あんなに汚かった壁も階段も、塗ったり貼ったりするだけで見違える。
壊して新しいものを作る方が簡単かもしれないけれど、手を加えることでまだまだ使えるものたちが息を吹き返していくことは何よりも嬉しい。
そうやって使われなくなった空き家が1つ1つ蘇っていったら、まちはどんなふうに変わっていくだろう。
そんなふうに、あるものを生かす文化が人々に広がっていった先に、そんなコミュニティやイベントに魅力を感じた人が集まり、まちに関係人口や交流人口、そして移住しようとする人が増えていくのではないだろうか。
実験的ではあるが、始まった持続可能な社会への挑戦。
どのような未来へと繋がっていくのか楽しみです。
【ひとのことの詳しい情報】
ひとのことって?→https://note.com/hitonokoto/n/n9b243534c2ed
ひとのこと過去ブログまとめ→https://note.com/hitonokoto/n/n29247f441e31
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