見出し画像

たまごものがたり🥚第四話 〜茹だったたまごのお話〜

一匹のたまごが歩いていました。

そのたまごは、
自分がどこから来たのか
どこに向かうのか
知っているらしく
堂々と歩いていました。


たまご が歩いていると、
木が現れました。
その木の枝には、
一休みしている鳥がいます。


たまご は鳥に話しかけました。
「君は、どうして休んでるんだい?今日は恰好の狩り日和なのに。」


鳥は答えます。
「そうだね。狩りはしているよ。」


たまご は、不思議そうにその鳥を見上げていました。
〔ボクには狩りをしてるようには見えない。休んでるようにしか見えないのだが・・・〕


たまご が歩き続けていると、
川が現れました。
その川には、
一休みしている魚がいます。


たまご は魚に話しかけます。
「君は、どうして動かないんだい?もっと遠くまで泳いだ方が良い獲物が取れる。」


魚は答えます。
「獲物は捕らえたよ。」


たまご は、不思議そうにその魚を見下ろしました。
〔ボクには獲物を捕らえたようには見えないのだが・・・〕


今度は、道に蛇が寝転んでいました。


たまご は、蛇に話しかけます。
「君は、どうして寝ているんだ?」


「・・・。」
蛇は何も答えません。なぜなら寝ているからです。


更に歩き続けていくと、
蜘蛛が蜘蛛の巣を張って待ち構えていました。


たまご は蜘蛛に話しかけます。
「やっとだ。みんな狩りをサボってる中、君は仕事をしている。
 そうやって獲物を待ち伏せしているんだね。
 やっとまともな奴に出会えたよ。」


「・・・・。」
蜘蛛は黙っています。


「いやぁ。
 ここに来る前に、鳥と魚と蛇に出会ったんだ。
 鳥ときたら、こんな狩り日和だというのに枝で休んでいるし、
 魚ときたら、動こうともしない。
 蛇ときたら、寝る始末さ。
 まったく。
 どうして仕事をしないのかと問いてやったよ。
 そしたら皆んな、"仕事はしてる”みたいなことを言ってきた。
 ボクには、さっぱりだったんだがね。」


「・・・・。」
蜘蛛は、まだ黙っています。


「ボクなんて、毎日、毎秒、仕事してるのに。
 今だって、
 こうしてボクについて来れるだけの有能な仲間を探してるし、
 目標に向かって歩き続けているのさ。
 でも皆んなは休んでる。
 皆んな、ダメだね。
 ー
 そんな中、君は、良い仕事をしているね。
 ボクの仲間になった方が良い。
 それと、
 君は、もっと自分をアピールした方が良いね。」


蜘蛛は、しばらくの沈黙の後、こう答えました。
「・・・
  過去にも、君と同じような者がここを通った。

 そいつも、同じようなことを言っていた。
 皆んな休んでてダメだの、ボクは有能な仲間を探してるだの。
 ボクは目標があるから偉いんだ みたいなことも言ってたな。」

蜘蛛は続けます。
「でも、
 何が良くて何がダメなのかの指標は
 誰が作ったんだろう?
 そして、
 有能とはなんだろう?

 答えは、
 得られなかった。
 その時の彼は、分からなかったようだね。

 君には分かるのかい?」



「・・・・。」



たまご からの返事は返ってきませんでした。
もう遅かったのです。
たまご は、
茹で玉子になってしまったのです。

画像1


何が良くて何がダメなのか
その答えを、茹で玉子に聞くことは、
もうできないでしょう。

完熟に固まってしまった茹で玉子 ー 。

その答えが茹で玉子の中にあったとしても、
もう、聞くことはできないのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?