夢見るたまご

たまごものがたり🥚第五話 〜夢見るたまごのお話〜

一匹のたまごがいました。


その たまご の目は
キラキラと輝いていました。
たまご は
空を見上げながら走っています。

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ゴールの見えない
どこまでもどこまでも続く
長い道を
走っています。

たまごが走っていると、
ある動物に出会いました。
それは、鳥です。


たまご は立ち止まって話しかけます。
「こんにちは!」


鳥は、びっくりした様子で答えます。
「おや・・・?!」
「驚いた。
 誰かに話しかけられるのは、初めてだよ。
 こんにちは。」
 
「君は、何をしているの?」


たまご は答えます。
「ボクは走ってるんだ。夢に向かって。
 ボクの夢は、誰よりも大きなたまご になること。
 ボクは、立派なたまごになるんだ!」

それを聞いて、
鳥は心の中でこう思います。
(走ったら立派なたまごになれるのかな?
 飛んでる僕の方が速いのに。走っても追いつけないのにさ・・・)

たまご は、そんなことを思われているとは知らず、
自分の夢を聞いてもらえたことが嬉しくて、
キラキラの目をして走り続けました。


するとまた、ある動物が目に飛び込んできました。
魚です。


たまご は魚に話しかけます。
「こんにちは。」


魚は答えます。
「こんにちは。」
「君は、どうしてこんなところに居るんだい?」


たまご は、嬉しそうに答えます。
「ボクはね、夢に向かって走っているところなんだ!」
たまご は、また夢の話を聞いてもらえると思って、嬉しくてたまりません。
「ボクの夢は、誰よりも大きなたまご になること。
 ボクは、立派なたまごになりたいんだ!」


それを聞いて、
魚は心の中でこう思います。
(走れば夢が叶うものじゃない。
 そして、泳いでる僕の方が速い。彼はきっと僕には追いつけないだろうな・・・)

たまご は、そんなことを思われているとは知らず、
また嬉しそうに走り出すのでした。


今度は、蜘蛛を見かけます。
「こんにちは。」

蜘蛛は答えます。
「よう。」

たまご は、嬉しそうに話し始めます。
「ボクは今、夢に向かって走っているんだ!
 ボクの夢は、誰よりも大きなたまご になること。
 ボクは、立派なたまごになりたいんだ!」

蜘蛛は、「そう。立派なたまごねぇ・・・。」
と答え、しばらくしてからこう質問しました。

「その"立派なたまご”とやらは、
 この道の先にあるのかな?」


たまご は答えます。
「・・・え?」
「それは・・・。分からない。」


蜘蛛は、また質問します。
「じゃあ、なぜ君は走り続けているの?」


「・・・。」
たまご は、答えられませんでした。



たまごは、目の前が真っ暗になって、立ちすくんでしまいました。



ゴールの見えない
どこまでもどこまでも続く
長い道



この道の先に、自分の夢があると信じて走っていた たまご。
でも、蜘蛛の質問によって、こう思ってしまいます。
「ボクは夢に向かって走ってたんじゃない。
 夢を、見ていたんだ・・・。」


その日から、
たまごは走るのを辞めました。
もう、喋ることもなく、動くこともありません。​



数日経ったある日、
たまごにヒビが入りました。
中から出てきたものは・・・



小さなカエル でした。



この小さなカエルは、
ここが何処なのか、
自分は何なのか、
何も分かりません。

だけど、
まるで何かに引っ張られるかのように、
道の先へ進みはじめました。


どんどん進んで、
進むスピードもどんどん速くなりました。

そのうちに、
何も分からなかったカエルにひとつだけ、
自覚できるものがあらわれました。
それは「突き動かされる」という感覚。

カエルは、それからも「突き動かされ」、
無我夢中で道を進み続けます。


そんなカエルのことを見かける動物がいました。それは、鳥です。
「え、速い。なんて速いんだ。僕より速く飛ぶ動物なんて初めて見た・・・。」

魚も見かけます。
「なんというスピードだ。僕より速く泳ぐなんて・・・。」

蜘蛛も、見かけます。
「あのカエルは、どうしてあんなに速く走っているのだ・・・。」


カエルの「突き動かされる」という感覚は、
周りのみんなには見えないもの。
自分にしか分からないもの。
それは、たまごが見ていた夢と
同じようなものかもしれません。


カエルは夢を見ているのかもしれません。
周りのみんなには見えない夢を、見ているのかもしれない。
でも、
夢を見ているからこそ
夢を信じているからこそ
夢中になれるのかもしれません。


カエルの目は、
たまごと同じように、
キラキラと輝いていました。

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